【高齢者向け】身元保証人を頼める人がいない場合の対処法！老人ホーム入居や入院に備えましょう 

介護施設（老人ホーム）に入所するとき、病院に入院するとき、身元保証人をたてるよう施設側から要求される場合がほとんどです。

おひとりさま（身寄りのない人）の場合、身元保証人になってくれる人が見つからず困ってしまうかもしれません。

自分が元気で判断能力のある高齢者であっても、介護や入院を必要した場合に備え、身元保証人について検討しておいた方が良いでしょう。

そこで今回は身元保証人の役割、身元保証人を頼める人がいない高齢者の対処法、身元保証会社の有用性等について解説します。

読み終えた後は身元保証人が必要となっても、冷静に身元保証人となってくれる人の選定を進められるはずです。

身元保証人は、主にかかった介護費用や医療費の範囲内で保証する役割を担います。

ただし、法律で身元保証人の資格・役割は明記されておらず、どのような責任を追うのかは、各施設の契約内容を確認する必要があります。

こちらでは身元保証人の特徴について解説していきましょう。

身元保証人と似た役割を担う人は主に次の通りです。

• 身元引受人
• 連帯保証人
• 成年後見人

それぞれのどのような場合に選任されるのか、身元保証人との違いについて説明します。

身元引受人も身元保証人と同様、法律で明確に定義されてはいません。ただし、各施設では本人が施設利用の際に発生する事態へ対処し、その責任を担うため、契約時に身元引受人を要求するケースが多いです。

身元引受人の役割は、主に次のような手続き対応があげられます。

• 緊急連絡先
• 本人に何かあった場合の駆けつけ
• 本人死亡後の遺体の搬送・行政手続き
• 荷物を運び出す作業　等

基本的に身元保証人とは別の人をたてるのが一般的です。ただし、施設によっては身元保証人・身元引受人を厳密に分けておらず、身元保証人が身元引受人の役割の一部を担うというようなところもあります。

連帯保証人は身元保証人と異なり、法律で明記されている保証人です（民法第452条、453条、456条）。連帯保証人は本人が発生させた損害の賠償責任を負わなければいけません。

主に次のようなケースで賠償責任を負う必要があります。

• 本人が施設利用中、興奮状態になり施設や施設の備品を破損させた
• 施設職員や他の利用者を負傷させた　等

主にかかった介護費用や医療費が保証範囲内となる身元保証人よりも、非常に重い責任を負わなければいけません。

成年後見人とは本人の財産や法律手続きを支援する人です。成年後見制度を利用し、サポートしてくれる人を選任します。

成年後見人は本人に代わり介護施設・病院との契約手続き「身上監護」、預金等を管理する 「財産管理」が可能です。

成年後見人には親族の他、知人・友人や士業専門家等も就任できます。成年後見人の選任には2つの方法があります。いずれの方法も裁判所に申立て、手続きを進める必要があります。

• 法定後見制度：本人の判断能力が著しく低下したら、裁判所に申し立て後見人等を選ぶ方法
• 任意後見制度：本人の判断能力があるうち、後見人になってくれる人を選んで契約し、判断能力が著しく低下したら、裁判所へ任意後見監督人の選任申立てを行う方法

なお、成年後見人と身元保証人等の兼任はできません。なぜなら、成年後見人は本人に代わり法律行為を行う立場であり、身元保証人等のような本人の身元保証を行う立場ではないからです。(※参照：成年後見制度｜厚生労働省)

主に次のようなケースで身元保証人が必要となります。

• 本人が介護施設へ入所する際の契約時
• 本人が病院に入院する際の契約時

ただし、身元保証人がいなければ絶対に契約を締結できないわけではなく、施設側は代わりに成年後見人をたてるよう促したり、身元保証会社を紹介したりして、柔軟に対応してくれるところが多いです。

なお、本人が賃貸住宅に入居する際、契約時に必要なのは、一般的に身元保証人ではなく連帯保証人となります。

身元保証人は特別の資格を必要としないものの、施設側は概ね次のような条件を提示する場合が多いです。

• 一定の収入がある人
• 本人の親族であること
• 年齢が高すぎない人

身元保証人は、本人の介護費用やかかった医療費の範囲内で保証する責任があるので、一定の収入のある人が必要とされます。

そのため、契約のとき身元保証人の資産・収入に関する証明書類の提出を要求される場合があります。

また、基本的に親族の就任が望まれ、かつ年齢が高すぎず判断能力のある人であれば、問題なく身元保証人として認めてくれるはずです。

身元保証人の役割として明確な基準はないものの、主に介護施設の利用費用、病院でかかった医療費の範囲内が保証対象となります。本人のために費用面での役割を担う人といえます。

ただし、施設によっては緊急連絡先の役割、退院・転院時の対応等まで要求される場合があり、身元引受人の役割との区別が曖昧となっている可能性もあります。

そのため、本人が利用する施設の契約書等をよく確認し、役割や責任に関して不明確な点があれば必ず担当職員へ質問しましょう。

おひとりさま（身寄りのない人）が身元保証人をたてられない場合、主に次の手続きに支障が出る可能性もあります。

• 病院への入院時
• 老人ホームなど介護施設への入居時

身元保証人がいないと、それぞれどんな支障が出るのかについて説明しましょう。

本人が病院へ入院する場合は、入院費の他に手術費や入院時食事療養費等、様々な費用がかかります。

受けた医療サービスが保険診療ならば、公的医療保険が適用されます。自分が75歳以上ならば後期高齢者医療制度を利用でき、原則1割負担だけで済むはずです。

しかし、本人が生活に困窮していて1割負担を支払う能力もない、または認知症の進行で判断能力は著しく低下し自分でお金を支払うのが困難、というケースも想定されます。

そんなときに医療費の支払いを担保してくれるのが、身元保証人です。支払いを担保してくれる人がいなければ、病院に損失が出る可能性もあります。

そのため、身元保証人がいないと入院の手続きはスムーズに進まなくなるのです。

本人が介護施設へ入所する場合は、入居時費用や月額費用、健康管理サービス・生活サービス費用等がかかります。

入居先が介護保険施設ならば、もちろん要介護認定に応じ、介護保険給付で自己負担額の軽減が可能です。

しかし、病院の場合と同様に自己負担分を支払うのが経済的に難しい、または判断能力が著しく衰えお金の支払いも自分ではできない、というケースが想定されます。

そんなときに自己負担分の支払いを担保してくれるのが、身元保証人です。そのため、身元保証人がいなければ入所の手続きもスムーズに進まなくなります。

家族等がおらず身元保証人を頼める人もいないならば、次のような方法で対策がとれます。

• 身元保証人がいらない介護施設を探す
• 成年後見制度を利用する
• 身元保証会社を利用する

それぞれの特徴や注意点について解説しましょう。

介護施設や病院の中には、身元保証人がいらない施設も存在します。身元保証人を無理に探す必要もないので、身寄りのない高齢者は非常に助かります。

自分のニーズに合った介護施設・病院が見つかったら、身元保証人が必要か否かをまずチェックしましょう。

身元保証人不要の施設では、主に次のような措置をとっている場合が多いです。

• 本人に成年後見人がいれば身元保証人は不要
• 提携している身元保証会社を紹介し、契約してもらう　等

まずは入所（入院）手続きを進める際、条件を良く確認し、自分が合意できる内容かどうかについて判断しましょう。

本人に成年後見人がいれば身元保証人を不要としている施設も多いです。成年後見人は本人に代わり福祉サービスの手続きができる他、施設利用に関する費用の支払いも行えます。

ただし、成年後見制度を利用したい場合は裁判所に申立て、手続きを進める必要があります。2種類の成年後見制度（法定後見・任意後見）の流れをみていきましょう。

法定後見の場合、基本的に家庭裁判所が後見人等を選ぶので、本人の希望する人が後見人等に就任するとは限りません。

また、任意後見の場合は、本人に判断能力があるうちに任意後見人となってもらいたい人と、任意後見契約を締結します。

しかし、任意後見を開始したい場合は、任意後見監督人（任意後見人を監督する人）を選任してもらうよう、家庭裁判所に申し立てる必要があります。

複雑な手続きを経て法定後見人等または任意後見人による成年後見が開始されるので、まずは専門家（弁護士等）に質問をしたり手続きの説明を受けたりして、利用するか否かを検討しましょう。

身元保証会社とは、施設と契約する際の身元保証をはじめ、生活支援や死後事務のサポートも行ってくれるサービス提供会社です。

身元保証サービスを展開する事業者は増加傾向にあり、一般社団法人やNPO法人、株式会社等が続々と参入しています。

身元保証会社はそれぞれサービスの差別化も図っている事業者が多いので、自分のニーズに合ったサービスなのかをよく確認した後、利用申込を行いましょう。

身元保証会社は施設と契約する際の身元保証の他、様々なサポートをトータル的にお願いできる事業者なので、おひとりさまの高齢者にとって頼もしい存在といえるでしょう。

こちらでは身元保証会社のサポート内容、メリット・デメリットについて解説します。

身元保証会社では基本的に次のサポートを行ってくれます。

なお、身元保証会社の中には、エンディングノートの作成のアドバイス、遺言書の作成指南等をオプションとして設定できるところもあります。

身元保証会社を利用申込をすれば、様々なサポートを得られとても安心ですが、気を付けなければいけない点もあります。

身元保証会社の中にはいろいろなプラン・オプションを用意しているところがあり、自分のニーズに合わせてサービスを選べる点がメリットです。また、法人なので身元保証人が亡くなってしまい、別の人に依頼するという手間もありません。

ただし、預託金や手数料がかなり高額化する場合もあるので、担当者と費用についてしっかりと確認をとりましょう。

おひとりさまの場合、身元保証人となってくれる人が見つからず、選定に悩むかもしれませんが、いろいろ対処法があるのでよく確認してみましょう。

本記事でご紹介した身元保証人の必要性と、いない場合の対処法をまとめると、以下の通りです。

• 身元保証人がいないと介護施設へ入所するときや、病院へ入院するとき手続きがスムーズに進まない場合もある
• 身元保証人がいなければ成年後見人をたてたり、身元保証会社を利用したりして対処できる
• 身元保証会社を利用する場合、トータル的なサポートが期待できるものの、預託金（預けるお金）や手数料が重い負担となる可能性もある

身元保証人がいなくても介護施設や病院を利用する際、施設の方で柔軟に対応してくれる場合があります。無理に身元保証人になってくれる人を探すよりも、代替可能な方法を検討してはいかがでしょうか。