一人暮らしの高齢者がやるべき対策7つと独居老人向け支援サービス4つ

「一人暮らしの高齢者がやるべき対策は？」「どんな支援サービスがあるの？」と、一人暮らしの高齢者やそのご家族には、疑問や不安が多々あるでしょう。

日本が高齢化しているのは知っていると思いますが、実は、約半分『49.4%』の世帯に65歳以上の高齢者がいるのをご存知でしょうか。

さらに核家族化に伴い、2019年の調査では、高齢者だけの世帯はそのうち約6割を占め、内訳は「夫婦のみ 32.3%」「一人暮らし 28.8%」という結果でした。※出典：令和3年版高齢社会白書（内閣府）

一人暮らしの高齢者は『独居老人』とも呼ばれ、身体的にも精神的にも多くの問題と向き合わなければならず、回避しなければならない最大の課題は『孤独死』です。

そこで、本記事では一人暮らしの高齢者や、そのご家族が安心できるよう、やるべき対策と支援サービスについて、一挙ご紹介します。

「こんな便利な支援サービスがあるなんて知らなかった」「早く利用すればよかった」と後悔しないよう、ぜひ知識を学んで今すぐ活用しましょう。

ここで注目すべきなのは、『健康寿命』。健康寿命とは長期的な医療や介護に依存せず、自立した生活ができる年齢のことをいいます。

つまり、高齢者が一人暮らしをできる限界の年齢は、『男性72歳、女性75歳』ということです。

一方で、日本の総人口に占める高齢者の割合は29.1％と過去最高。高齢者の就業率は25.1％と前年同率なのに対して、65〜69歳では初めて50％を超えました。※出典：統計からみた我が国の高齢者－「敬老の日」にちなんで」（総務省統計局）

言い換えると、多くの人は定年後も働き続け、70代で健康寿命を迎えた後、『男性は約9年、女性は約12年』、医療や介護を頼って余命を全うします。

なお、高齢者の死因は『癌・心疾患・脳血管疾患・肺炎』という病死が目立ち、90代になると老衰が増える傾向にあります。※出典：死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率（厚生労働省）

一人暮らしのお年寄りでも、これらの病気の予防と早期発見ができれば、多くの人は長生きができるといえるでしょう。

高齢者の一人暮らしでは、トラブルを回避して安心して生活できるよう、やるべき7つの対策があるため、一般的に困りやすく問題視される順序でご紹介します。

1. 病気やケガによる介護問題
2. 認知症に気づきにくい
3. 食事や掃除などの生活全般
4. 住まいや入院
5. 孤独、話し相手がいない
6. お金の管理
7. 緊急時や死亡後の対応

一人暮らしの高齢者は周囲に頼る人がいないことで、万一の病気やケガでも介護や看病してもらえず、不自由な生活を強いられます。

寝たきりや認知症などで継続的な介護や介助が必要になった場合には、介護保険制度により要介護認定を受けることで支援を受けられます。※出典：介護保険とは（厚生労働省）

一方で、体力や身体的な問題で、風邪をこじらせて肺炎になったり、些細な転倒でも骨折をしてしまったりと、深刻な事態に陥るケースは少なくありません。

つまり、要介護認定者でない限り、介護や看病をしてもらうことは難しく、一人暮らしの高齢者は、通院や自宅療養による負担が大きいといえるでしょう。

認知症は気づかないまま進行してしまうと、口にしてはいけない物を食べたり、自宅に帰れなくなったりするリスクがあります。

同居する家族がいれば、「忘れているよ」「同じことを言ってるよ」といった指摘を受けられますが、一人暮らしでは認知症に気づきにくい傾向にあります。

たとえ親しい友人や知人がいても、痴呆症はナイーブな問題のため、相手を傷つけるかもしれない真実を伝えられるかどうかは分かりません。

そこで、一人暮らしの高齢者の方は、自分の行動や言動に注意して、以下のような認知症の自己判断を試してみるのがオススメです。※参考：自分でできる認知症の気づきチェックリスト（東京都福祉保険局）

また、離れて暮らす家族は認知症の早期発見を意識して、電話で話す時に日付や前日の食事メニューを確認するなど、物忘れの症状をチェックするようにしましょう。

高齢者には家事が大きな負担で、食事の用意や洗濯・掃除・ゴミ出しのほか、電球交換などの高所作業や階段の上り下りなど、日常生活では難しいことも多々あります。

特に妻を亡くした夫など、死別による一人暮らしでは、不慣れな家事に戸惑う方が少なくありません。

民間の家事代行サービスも増えていますが、相場料金は1回あたり2時間として約4,000〜8,000円。別途交通費が必要な場合もあります。

週1回依頼すると、月16,000〜32,000円もの費用負担となり、一般的な年金暮らしでは決して安価とはいえません。

少しでも家事の負担を軽減するためには、『断捨離（だんしゃり）』によって不用品を片付けて、質素な生活を送る習慣を身につけるとよいでしょう。

断捨離では、洋服・着物・骨董品・本・家具などの売却で収入を得られるほか、日用品の整理整頓で無駄遣いや散らかしを回避するメリットがあります。

不動産の賃貸契約や、介護施設への入居にあたっては、保証人や連帯保証人が必要なことが多くあります。

2022年4月の調査によると、公営住宅では、1,668の自治体うち『76.6%』もの自治体が保証人を求めている結果となりました。※出典：公営住宅への入居に際しての保証人の取扱い等に関する調査（国土交通省）

身元保証人や連帯保証人には、家賃の滞納や万一の過失による保証責任を果たす役割があるため、個人間では家族や身内に依頼することが一般的です。

中には『保証人不要』とする物件もありますが、基本的に家賃や入居費用が割高のため、身寄りのない高齢者にとっては費用負担がリスクとなります。

なお、身元保証人や連帯保証人は病院へ入院する際にも必要となるケースがたいへん多いです。

仕事や趣味や地域のコミュニティなどから遠ざかると、一人暮らしの高齢者は生き甲斐や自信を喪失したり、話し相手がいなくなり、孤独になりやすくなります。

外出する機会が減って自宅に引きこもると、完全に孤立して安否確認ができなくなるため、いざという時のリスクが高くなります。

2022年の調査結果によると、一人暮らしの高齢者の50%以上が孤立死を身近な問題と感じており、実際に東京23区では高齢者の自宅での死亡者数が増加しています。※出典：令和4年版高齢社会白書（内閣府）

近年は安否確認してもらえるような近所付き合いが少なく、セキュリティ対策としては安心な一方、異変に気づきにくい住まいの環境が増えているのが実態です。

高齢者は思考能力や判断能力の低下に伴って、お金の管理をすることが難しくなるため、注意しなければなりません。

年金が支給されると欲しい物を購入したり、やりたいことにお金を使ってしまったりと、目先のことに流されやすい傾向があると言われています。

もし認知症を患って進行してしまうと、家賃や光熱費などの支払うべき費用の認識が衰えたり、万引きをしたりと大事になる可能性もあるため、注意が必要です。

また、逆に高齢者を狙った窃盗事件や詐欺被害などの犯罪はもちろん、勧誘や通信販売などの消費者トラブルにも気を付けなければなりません。

お金に関する高齢者の悩みは、国民生活センターのサイトで具体例を紹介しているため、ぜひ目を通しておきましょう。※参考：高齢者の消費者被害(テーマ別特集)（国民生活センター）

自宅で倒れたり、病院で意識不明になったり、不慮の事故など、一人暮らしの高齢者は「もしもの時」の緊急対策が不可欠です。

前述のように、孤独死の増加は社会問題となっていますが、亡くなられた方々にとっては、「決して自ら望んだ最期の姿ではなかった」でしょう。

また、身寄りがない方こそ、火葬や遺骨の行方について生前に準備しておくのは、命ある人としての大切なマナーであり、人生に対する責任です。

そのため、最近は生前に万一に備える『終活』を行う方がたいへん増えています。

2023年1月の調査によると、20〜30代の若い人を含めて、終活をする意向がある人は『71.8％』と非常に多い結果でした。※出典：終活に関する調査（楽天インサイト）

具体的な取り組みは、「自宅の荷物の整理」「財産の整理」「パソコンやスマートフォンなどのデジタル遺品整理」などが上位を占めています。

つまり、終活は高齢になるほど難しい課題が増えるため、少しでも早く取り組むことが得策といえるでしょう。

高齢者の一人暮らし向けの支援サービスはさまざまありますが、専門家として厳選した『4つの支援サービス』をご紹介します。

1.  成年後見制度を利用する
2.  自治体のサービスを利用する
3.  身元保証サービスを利用する
4.  終活サービスを利用する

成年後見人制度とは、高齢者が困りやすい契約や手続き、お金の管理などを裁判所が定めた成年後見人によって法律的に支援する制度です。※出典：成年後見制度とは（厚生労働省）

不利益になる契約を回避できるうえ、もし本人が契約を結んでしまっても、成年後見人なら解約できる強い権利を有しているため、認知症対策としてオススメです。

さらに、大切な財産を詐欺や家族の使い込みからも守ってもらえるため、資産をめぐるトラブルが心配な方にとっても安心できるでしょう。

また、成年後見制度では事前契約によって、高齢者の一人暮らしにおける日常生活・医療・介護など、あらゆる面で支援が可能となります。

将来に備えたい人はもちろん、成年後見制度は既に認知症を患った親のために検討する方も多く、認知症により凍結した預金口座の対処法としても有効です。

成年後見制度は上記のように2種類あり、もし本人が契約を行えない状況の場合は『法定後見』のみが対象となり、『任意後見』は契約できません。

親のためにとお考えの方は、『家族信託』という似たような制度もあるため、どちらを選ぶか比較検討することがオススメです。

地域によっても異なりますが、市区町村の各自治体では以下のような高齢者のための支援サービスを提供しています。

• 役所や包括支援センター（相談窓口）
• 介護保険制度
• 高齢者向け健康診断や診査割引
• 緊急通報システム
• 老人クラブやシルバーセンターなど趣味や活動のコミュニティの場
• 家事代行や粗大ゴミの廃棄
• おむつなど介護用品の支給
• その他の高齢者向け支援制度（バスや施設利用料金の割引など）

一人暮らしの高齢者は健康管理に気を付けて、孤独にならぬよう自主的にコミュニティへの参加を行うことが、安心かつ安全に長生きをする秘訣です。

無料で受けられるサービスも多いため、ぜひ役所や地域の包括センターへ確認して、便利でお得な自治体の支援サービスを積極的に利用しましょう。

一方で、自治体・税務署・年金事務所などの公共機関の職員を偽った『還付金詐欺』には気を付けましょう。※出典：還付金詐欺（警察庁）

独居老人を狙った犯罪に巻き込まれないよう、身に覚えのない費用の請求や、振り込みを促す電話やメールの着信にはくれぐれもご注意ください。

高齢者が『身元保証人』や『連帯保証人』を求められるのは、主に次の3つのケースです。

• 介護施設への入居時
• 病院への入院時
• 不動産の賃貸契約時

この際、一人暮らしで身寄りのない高齢者であっても、『身元保証会社』へ依頼することによって企業が保証人になってくれるため、冷静に対処しましょう。

もちろん、「家族や身内に頼みにくい」「断られてしまった」という場合にも、身元保証会社は利用可能です。

身元保証会社の相場費用は、身元保証人で約30〜50万円、連帯保証で保証額の約50%（上限金額の設定あり）が一般的となっています。

ご利用の際は費用のみならず、『入院や施設入所時の付き添い』『引っ越し時の支援』など、サービス内容までしっかりと確認のうえ、検討なさってください。

一人暮らしの高齢者で重視すべき支援サービスは『見守りサービス』で、いざという緊急時に寄り添ってもらえるという安心できる環境づくりです。

終活にあたっては、「具体的に何から始めたらいいのか分からない」という方がたいへん多くいらっしゃいます。

葬儀やお墓の準備と考える方も多く見受けられますが、すでに葬儀の生前予約や、埋葬や納骨先を申し込んだ方も、決して油断してはいけません。

一人暮らしの高齢者では、「誰が火葬や納骨を執り行うか」という祭祀者の決定が重要で、場合によっては『死後事務委任契約』や『遺言書』が必要です。

きちんと手続きを済ませれば、「手元にある妻や夫の遺骨と一緒に埋葬してほしい」「財産は甥や姪に譲りたい」など、亡くなった後の希望まで叶えられます。

終活サービスを提供している会社の多くは無料相談が可能なため、疑問や不明点があれば積極的に相談し、信頼のできる会社を選びを行いましょう。

一人暮らしの高齢者が安心できるようにするため、やるべき対策と支援サービスについてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。

【一人暮らしの高齢者向け支援サービス】

お気づきの方も多いと思いますが、一人暮らしの高齢者がやるべき『7つの対策』は、実は『4つの支援サービス』によって完全網羅することが可能です。

しかも、①〜④の順序で着手することで、健康な方ほど身近な対策から課題をクリアできるため、ぜひ参考になさってください。