【保存版】生前契約を丸っと解説！葬儀・費用・よくあるトラブルと対策まで1記事で理解

自分に適切な判断力が無くなったときや自分の死後、身元の引き取りや財産の管理等を、誰か信用できる人に任せられると安心です。

特に身寄りのない人は、高齢になり体力や判断能力の衰えで、自分にとって大切な手続きや取り決めが困難となる場合もあります。

なるべく元気で判断能力があるうちに、例えば入院や介護が必要となったときの備え、財産の管理をどうするか、葬儀・埋葬の希望等について、色々と決めておきたいものです。

そこで今回は、生前契約とはどんな制度か、生前契約の大まかな流れやトラブルが起きた場合の対策等を解説します。

生前契約とは、自分の身体が衰えてきた、または適切な判断力が無くなる前に生活のための支援内容を決めたり、自身の死後に行う手続きを取り決めたりする制度です。

生前契約に該当する制度は、主に次の3つがあります。

• 生前事務委任契約：自分の生活支援の他、生存中に必要な事務手続きを行ってもらう契約
• 任意後見契約：自分の判断能力が著しく低下した後、任意後見人から身上監護・財産管理を行ってもらう契約
• 死後事務委任契約：自分の死後の事務手続きの他、遺品整理等を行ってもらう契約

いずれも自分（委任者）と任せる相手（受任者）の合意により、契約を締結します。

なお、任意後見契約だけは、委任者の判断能力が著しく低下したと判断された場合、「家庭裁判所」に申立て、手続きを進める必要があります。

生前契約とよく似ている制度が存在します。例えば次のような制度です。

• 法定後見制度
• 遺言

こちらでは、それぞれの制度と生前契約との違いを取り上げましょう。

実は生前契約の一つである任意後見契約（制度）も、法定後見制度も、成年後見制度に該当します。

任意後見または法定後見で後見人等になった人は、本人に代わり介護施設や病院等の契約手続き「身上監護」の他、預金等を管理する 「財産管理」も可能です。

ただし、任意後見と法定後見には次のような違いがあります。

つまり、制度を利用する場合、法定後見は事前に契約締結を行わず、家庭裁判所に申立手続きを進める形となります。後見人等を誰にするかや、身上監護・財産管理の内容は基本的に裁判所が決めます。

任意後見は任意後見契約後、任意後見監督人選任申立を行うので手間はかかりますが、任意後見人を誰にするかや、契約の内容は自由に決められます。

死後事務委任契約も遺言書の作成も、「終活」の際に行われる点は共通しています。

しかし、それぞれ目的・作成の方法等が異なります。

死後事務委任契約は委任者と受任者との合意で契約が成立します。しかし、遺言は自分（被相続人）の一方的な意思表示なので、契約ではありません。

また、死後事務委任契約に相続内容を記載しても法的効果は認められず、逆に遺言書へ死後事務委任契約を記載しても相続人への「お願い」にとどまります。

生前契約を行っておけば次のようなメリットがあります。

• 家族がいなくても安心
• 契約内容を柔軟に決められる

それぞれのメリットについて解説しましょう。

身寄りのない人でも、自分が受任者となってもらいたい人と契約できれば、いろいろなサポートを任せられるので安心です。

• 判断能力はあるが日常生活、諸手続きをサポートしてもらいたい→生前事務委任契約
• 判断能力がなくなったらサポートしてもらいたい→任意後見契約
• 自分の死亡後に諸手続きをしてもらいたい→死後事務委任契約

様々な事情の変化に対応した契約が用意されています。

なお、家族や親族がいたとしても、次のようなケースではサポートが難しいはずです。

• 家族や親族はいるが、自分よりも高齢であったり、病弱であったりする場合
• 家族や親族はいるが、遠方に住んでいる、海外に住んでいる場合

このような事情がある場合、生前契約を締結しておいた方が良いでしょう。

生前契約には、生前事務委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約の3種類があります。そのすべてを利用する必要はなく、自分のニーズに応じて契約を締結できます。

例えば、足腰は衰えていても判断能力がしっかりしているので、生前事務委任契約だけを契約し、任意後見契約は行わない、と決めても構いません。

更に生前事務委任契約の内容も、柔軟に委任範囲を設定できます。

インターネットバンクやオンラインによる料金支払も可能なので財産管理は不要だが、病院の入退院時の手続きは窓口で対応する必要があるので任せたい（身上監護）、と契約で委任内容を細かく限定できます。

生前契約ではそれぞれ委任できる内容や範囲が異なります。

• 生前事務委任契約の場合
• 任意後見契約の場合
• 死後事務委任契約の場合

こちらでは設定できる委任内容・範囲を取り上げます。

判断能力があっても委任可能な契約です。任意後見契約よりも幅広い委任の範囲を設定できます。

ただし、受任者が金融機関、医療機関、介護施設や行政窓口で手続きを行う場合、委任状を提出するように求められる可能性があります。

生前契約は基本的に誰でも行えますが、特に次のような方々が検討するべきでしょう。

• 身寄りがなく、家族・親族のサポートを期待できない人
• 家族・親族はいるが疎遠となっている人
• 家族・親族が遠隔地に住んでいる人
• 同居家族がいるものの、自分より高齢であったり病弱であったりする場合

身寄りがない人はもちろん、何らかの理由で親族のサポートが期待できない人は、事前に生前契約で受任者のサポートを決めておいた方が安心です。

生前契約は自分（委任者）とお任せしたい人（受任者）との間で契約を締結します。基本的に相手の同意があれば、受任者に誰でもなれます。

次のような方々を受任者に選ぶのが一般的です。

• 個人：自分の親族や友人・知人
• 専門家：弁護士や行政書士のような士業専門家等
• 事業者：生前契約に関するサービスを提供する法人等

つまり、個人に限らずNPO法人や株式会社のような法人も受任者となれます。

生前・死後事務委任契約の場合は、公正証書の作成も家庭裁判所への申し立ても不要です。契約内容を忘れないように契約書は作成しておきましょう。

ただし、生前・死後事務委任契約を士業専門家や法人と取り交わす場合、公正証書にするよう要求されるケースがほとんどです。

なお、任意後見契約の場合は必ず「任意後見契約公正証書」を作成しなければいけません。

生前契約は3種類いずれも公正証書にするとき手数料がかかります。また、士業専門家や法人等を受任者とする場合、詳細な費用設定が行われているはずです。

費用の目安は下表の通りです。

生前契約に関するサービスを提供する事業者は、更に料金プランを複数用意したり、オプション（例：エンディングノートや遺言書の作成指南等）を追加できたりするところもあります。

特に死後事務委任契約は、委任者の死亡に関する届出や手続き、葬儀・埋葬等の手配も行うので高額な費用負担となるでしょう。

また、死後事務委任契約を行うときは委任者が既に亡くなっているので、生前に受任者へ預託金（お金を預け入れる）という形で支払う方法が一般的です。

生前契約を行えばあとは安心、といえない事態も想定されます。

特に死後事務委任契約をめぐってトラブルが発生するケースもあり、契約時は注意が必要です。

本章では生前契約のトラブルでよくあるケースと、生前契約のトラブルを防ぐための対策について解説しましょう。

生前契約を締結する場合は、事前に想定されるリスクを把握したうえで、慎重に手続きを進めるべきです。想定されるトラブルは次の通りです。

• 契約内容をめぐるトラブル
• 運営会社の破産や倒産
• 親族とのトラブル

それぞれのトラブルについて取り上げましょう。

法人や士業専門家と生前契約を結ぶ場合は、契約内容はあらかじめ受任者側が設定しています。委任者はそれに納得して契約を締結する必要があります。

しかし、特に死後事務委任契約のケースでは、契約に関する様々なトラブルが報告される事態となりました。

例えば、死後事務委任契約を事業者と契約し、後に解約したが預託金（預けたお金）の一部しか戻らなかった、というケースです。

契約トラブルを扱う独立行政法人国民生活センターでは、「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」にて、預託金トラブルの事例をホームページで掲載し、注意を喚起しています。

預託金トラブルを回避するには、必ず契約前に担当者から預託金等の返還の有無を確認しましょう。

• 内容をはぐらかす
• 明確な返答がない

という場合は、契約を拒否した方が良いでしょう。

事業者は民間会社である以上、経営が悪化し破産・倒産するリスクにも留意しておきましょう。

過去に生前契約を扱う「公益財団法人日本ライフ協会」が倒産したケースでは、契約者が契約内容通りのサービスを受けられず、預けたお金すら戻らない、という事態になりました。

委任者と遠く離れて住んでいた親族が、訃報を聞いて委任者宅へ向かった際、葬儀や死後事務手続きを全く知らない人（受任者）が進めていた、というケースが該当します。

この場合、親族と受任者との間でトラブルに発展する事態も考えられます。何らかの方法で親族へ事前に周知させる配慮が必要です。

生前契約を締結する場合、将来にトラブルが発生しないよう次の対策を検討しましょう。

• 契約内容は詳しく明確に記載する
• 生前契約について親族に伝える
• 生前契約に詳しい専門機関へ相談する

それぞれの対策を解説します。

契約書には委任したい内容および方法を、明確に記載しましょう。例えば年金受給停止の手続をしてもらいたいならば、次のような点を説明します。

• 行ってもらいたい手続き：年金受給停止
• いつ：死亡後速やかに（国民年金は14日以内）
• どこで：社会保険事務所または市区町村の国民年金課等の窓口
• 何を：年金受給権者死亡届、年金証書または除籍謄本を準備して提出する

いつ・どこで・何をするか契約書にわかりやすく明記しましょう。

たとえ委任者本人と疎遠になっている家族・親族がいても、生前契約を行う報告は前もって行いましょう。

委任者が納得して契約した事実を報告すれば、受任者とトラブルは回避できるはずです。

また、生前事務委任契約や死後事務委任契約を公正証書にする場合、公証人が代わりに作成します。そのため委任者・受任者の合意と確認が必要です。

この公正証書で作成した事実を根拠に、受任者は委任者が納得して契約した旨を親族へ主張できます。

生前契約を友人・知人に頼んだり、事業者に頼んだりする場合、それぞれ注意点が存在します。

トラブルを回避し円滑に委任した内容が進められるよう、生前契約に詳しい次のような専門家・専門機関へ相談しておきましょう。

• 士業専門家：弁護士・行政書士等
• 社会福祉協議会：社会福祉を目的とした民間団体

契約前に相談をすれば、生前契約のメリット・デメリットについて、有益なアドバイスが得られるはずです。

生前契約を締結すれば、様々な手続き等を任せられる反面、深刻なトラブルも想定されます。

本記事でご紹介した生前契約の特徴、メリット・デメリットをまとめると以下の通りです。

• 生前契約は生存中や死亡後の諸手続きを任せられる契約
• 生前契約を締結すれば、身寄りのない人でもいろいろな手続きをスムーズに進められる
• 生前契約を締結しても事業者等が受任者となる場合、倒産や預託金の返還トラブル等が発生するおそれもある

生前契約を円滑に進めるため、まずは専門家等へ相談し、不安な点や不明な点等を確認しましょう。

そして、専門家から有益なアドバイスを受けた後、契約の準備に取り掛かることをおすすめします。