【要注意】死後事務委任契約でよくあるトラブルと対策方法！おひとりさま高齢者必見

自分が亡くなった後、残された家族が葬儀や埋葬、遺品の整理、生前にかかった医療費、公共料金の支払い、年金受給の停止等、様々な手続きを行います。

おひとりさま高齢者の場合は家族がいないので、「死後事務委任契約」を利用し、死亡に関する手続きを第三者へ委任できます。しかし、この契約を利用する場合、受任者がしっかりと手続きを果たしてくれるのか、不安になるかもしれません。

そこで今回は死後事務委任契約でよくあるトラブル、そのトラブルを未然に防ぐための方法を紹介します。

この記事を読めば死後事務委任契約の注意点を把握しつつ、安心して契約を締結できるはずです。

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に葬儀や納骨、遺品整理等を第三者へ委任する契約です。主に次のようなケースでは死後事務委任契約を検討しましょう。

• おひとりさま・身寄りがない場合
• 家族や親族も高齢である場合
• 家族や親族が遠方にいるので負担をかけたくない場合

死後事務を行ってくれる人（受任者）と、前もって契約を締結すれば、葬儀・埋葬の手配や死亡に関する届出等が円滑に進むはずです。

受任者は信頼できる友人・知人の他、士業専門家（弁護士・司法書士・行政書士等）、民間団体にも依頼できます。

死後事務委任契約で取り決めた内容は、自分（委任者）の死後に進められます。そのため、適切に契約した内容を実行しているのか、委任者本人は確認できません。

また、民間団体を受任者に選び契約は可能ですが、次の4つのトラブルが問題化しています。

• 契約内容をめぐるトラブル
• 運営会社の破産や倒産
• 預託金の返還トラブル
• 親族とのトラブル

それぞれのトラブルについて説明していきます。

死後事務委任契約をサービスとして提供する民間団体は非常に多く、サービス内容も多岐にわたります。主契約では葬儀や埋葬の手配、遺品の整理、死亡に関する諸手続き等が可能です。

また、民間団体の中には「遺言者の作成サポート」「エンディングノートの指南」等、様々なオプションを用意しているところもあります。

死後事務委任契約を相談した際、担当者に勧められるがまま、主契約にどんどんオプションを追加すると、高額な費用負担となる可能性もあるでしょう。

独立行政法人国民生活センター「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」では、次のような契約トラブルの事例をとりあげています。

• 死後事務支援等のサポートを行う事業者と契約、140万円を支払った。しかし、サポートの一つである定期的な安否確認がなく、緊急対応のため必要な書類が一向に作成されない。
• 事業者の身元保証サービスを勧められ契約し、100万円を支払った。後になって調べたら、身元保証以外の生活支援サービスや葬儀サービスなどが含まれていた。

事例をみると委任者が生きているうちから、受任者（民間団体）が締結した契約を履行していない、不要なサービスが含まれトラブルになった、というケースがあります。

死後事務委任契約をサービスとして提供する民間団体は、ある程度の収益をあげないと経営が維持できなくなります。これはサービスの事業主体が会社であっても、士業事務所（弁護士事務所・司法書士事務所・行政書士事務所等）であっても同じです。

委任者が生きているうち、会社が倒産したり廃業したりする可能性はあります。

過去には、死後事務・身元保証サービスを行っていた「公益財団法人日本ライフ協会」が、経営困難に陥り、利用者から集めた預託金の一部を他社への融資などに流用、是正勧告を受けました。その後、事業継続に支障をきたし破産しています。

預託金とは一定の期間にわたり預けるためのお金です。預けるお金なのでいずれは返還されます。

しかし、受任者に預けるといっても、100万円以上のお金が動く場合はあるでしょう。サービスを提供する民間団体から預託金の説明が十分に無く、トラブルに発展しているケースもあります。

独立行政法人国民生活センターでは「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」にて、次のような預託金トラブルの事例をとりあげています。

• 亡くなった後の事務手続き等を代行する事業者と契約した。預託金として100万円を支払うように求められたが、預託金に関する詳細な説明はない。担当者からは早く支払うよう急かされ、とても困惑している。
• 預託金を支払った後、事業者に不信感が募り解約した。解約は承諾されたものの、返金額について何らの説明もないまま、支払ったお金の一部しか戻らなかった。

事例をみると、預託金の詳細な説明がないまま支払いだけを急かされている、解約したら預託金額の全額が戻らなかった、と困惑しているケースがあります。

死後事務委任契約は身寄りの無い高齢者の他に、親族がいても疎遠になっている場合、親族と離れて暮らしている場合でも利用できます。

しかし、委任者本人が死後事務委任契約の利用を、親族に告げないまま亡くなったら、親族と受任者（契約を結んでいた個人・サービス提供団体）との間で、トラブルが発生するかもしれません。

次のようなトラブルが想定されます。

• 離れて暮らす親族が故人の葬儀を手配していたら、既に受任者が葬儀の段取りを決めていた
• 親族が故人の遺品整理をしようと自宅に向かったら、受任者が遺品整理をはじめていた

ただし、受任者側も委任者の親族の住所がわかっていれば、契約内容を実行する前に、親族へ連絡する可能性が高いです。

死後事務委任契約でトラブルが発生した場合は、なるべく早く最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。

困ったときは一人で悩まずに、消費者庁「消費者ホットライン（188番）」に電話すれば、各地方公共団体が設置している消費生活センター、消費生活相談窓口を紹介してくれます。

その他に、未然にトラブルを回避するため、次のような対策をとっておきましょう。

死後事務委任契約を友人や知人と締結する場合は、契約内容を書面化して、どんな事務を委任するか明記する必要があります。

事務を委任したい場合、どこに届出や手続きをするか、支払いを行うかについて詳しく記載します。下表をご覧ください。

一方、士業専門家や民間団体が受任者となる場合、契約書は受任者の方で準備します。その場合は、よく時間をかけて契約内容を確認しましょう。

特にサービス内容や費用負担の内訳が不明確な場合、担当者に質問し、納得のいく回答を求めます。内容を明らかにせず契約の締結ばかりを急かす場合、いったん話し合いを打ち切った方が無難です。

自分が死後事務委任契約をする前に、親族と相談し了解を得ておいた方が無難です。

自分と親族が離れて暮らしているなら、亡くなった際には親族の負担が大きくなるので、死後事務委任契約を結びたいと告げれば、納得してくれる場合もあるでしょう。

その際には、契約内容とその費用を比較し、第三者に頼んでまで利用する価値のあるサービスなのか、親族と話し合っておくのも大切です。

死後事務委任契約で不明な点や疑問点があれば、士業専門家に相談してみるのも良い方法です。

士業専門家の方々の中には、死後事務の相談に応じている事務所があり、士業の有志で設立した一般社団法人も存在します。

死後事務委任契約に精通している士業専門家は、主に「弁護士」「司法書士」「行政書士」があげられます。

• 弁護士：相続全般の手続きや、相続でトラブルが起きた場合の調停・審判・裁判の申し立て、弁護を行う
• 司法書士：不動産登記に精通し、相続に代わり相続登記を申請できる
• 行政書士：相続全般の手続き代行が可能、相続財産・相続人の調査、遺産分割協議書の作成を行える

士業事務所・団体では定期的に無料相談会を開催している場合があり、気軽に死後事務委任契約の相談が可能です。

このような無料相談会で知識を深めたうえで、死後事務委任契約を利用するか否か、冷静に検討してみましょう。

死後事務委任契約の費用はどのくらいかかるのか、遺言書を作成する場合に死後事務委任契約も記載してよいのか、不明な点はいろいろあるはずです。

こちらでは、よくある質問について回答していきましょう。

おひとりさま高齢者が亡くなり、親族・親戚も見当たらない場合、市区町村が遺体を火葬してくれます。しかし、本人が生前に希望していた葬儀は行ってくれません。

一方、納骨の場合は遺骨等の管理をする人が見当たらないと、まず市区町村が一定期間（5年くらい）にわたり管理します。一定期間経過後、遺骨は合同で埋葬する「合葬墓」に納められます。

その他、基本的に遺品整理は市区町村で行ってくれません。例えば、故人が賃貸住宅に住んでいたら、最終的に大家さんが遺品を処分します。

死後事務委任契約を締結しておかないと、関係者に大変な迷惑をかけてしまう可能性があります。

死後事務委任契約を士業専門家や民間団体に依頼すれば有料となります。費用は法律で規定されていないので、サービスを提供する受任者側が自由に設定可能です。

そのため、預託金やサービス費用等を含め、100万円以上になるケースもあります。受けるサービスが費用負担に見合った内容なのか、良く判断してから契約を締結しましょう。

おひとりさま高齢者で手元にお金がない場合、死後事務委任契約は非常に難しくなります。

次のような方法で、死後事務委任契約に必要な費用を捻出しましょう。

• 住居以外の不動産資産があれば売却し現金化する
• 加入している終身保険（死亡保険）を解約し現金化する

ただし、売却を予定している土地や建物にすぐ買い手がつくかどうかはわかりません。売却に関しては不動産会社へ相談し、アドバイスを受けましょう。

また、終身保険を解約すると解約返戻金が受け取れます。しかし、保険金受取人に指定されていた親族の反発を招くかもしれません。

社会福祉協議会は、社会福祉活動を推進する営利を目的としない民間組織です。社会福祉協議会でも、死後事務を取り扱っている組織があります。

年会費は約15,000円〜20,000円、毎月の利用料は2,500円〜7,500円と低い金額に抑えられているケースが多いです。

ただし、主に葬儀や納骨の手配、家財道具の処分、市区町村役場等への届け出等へ限定され、利用条件は各協議会で設定しています。

お住まいの地域の社会福祉協議会で、死後事務に関するサービスを取り扱っているのか確認後、条件・サービス内容・費用について担当者と話し合いましょう。

銀行でも、死後事務委任契約に関するサービスを提供するところが多くなってきました。日ごろから取引をしている銀行が扱っているならば、安心して任せられるはずです。

ただし、最低預入金額が数百万円に及ぶ場合もあります。無理に契約を締結し家計が圧迫されないか、預貯金等をよく確認してから手続きに進みましょう。

遺言書を作成する場合、その中に死後事務を依頼する記載があっても、その遺言は有効です。

しかし、遺言書は遺言をした人の一方的な意思表示です。死後事務を依頼された人が必ず実行してくれるとは限りません。

また、遺言書の開封は葬儀後の場合が多く、死亡届や希望の葬儀内容を記載しても、間に合わない可能性があります。

死後事務に関しては遺言書へ記載せず、別に受任者と契約を締結した方が良いです。

死後事務委任契約を締結すれば自分の死後の手続きは安心ですが、トラブルが起きるリスクにも留意しておきましょう。

本記事でご紹介した内容をまとめると以下の通りです。

• 死後事務委任契約を締結しても受任者が契約を履行せず、解約後に預託金額が戻らないケースもある
• 死後事務委任契約を親族に黙って締結すると、亡くなった後に受任者と親族間でトラブルが起きる場合もある
• 死後事務委任契約を締結する前に、内容をよく確認し、親族にも知らせておく
• 死後事務委任契約前に、士業専門家へ相談しておくのも良い方法

死後事務委任契約の利点ばかりではなく、想定されるリスクも検討した上で、契約を締結すべきかどうかを判断しましょう。