一人っ子が遠方にいる親の介護で頼れる場所やサービスを紹介

一人っ子が高齢となった親を介護する場合、他の親戚と協力し合いながら対応できれば負担は軽減できるはずです。

しかし、他に家族がおらず親戚とも疎遠の場合、親の介護をするのは基本的に一人っ子本人となります。

そうなると重い介護負担になるおそれもあり、日常生活に支障が出るかもしれません。早めに何らかの対策を行い、充実した介護ができるよう準備しておきましょう。

そこで今回は、一人っ子が介護をする際に想定される負担、介護のポイントや相談先、利用するべき介護サービス等を解説します。

一人っ子でも両親が存命しているならば、たとえ親の一人が要介護状態の場合でも、2人で協力して介護が可能です。

しかし、片親が既に亡くなり、介護に協力してくれる親戚もいない場合、要介護状態となった親の面倒をみるのは一人っ子自身です。

介護で抱える負担は大きく分けて以下の3つです。

• 身体的な負担
• 精神的な負担
• 経済的な負担

ここでは介護する際に想定されるそれぞれの負担について解説します。

基本的に親の食事・お風呂の準備、掃除は一人っ子が行います。

一方、親が介護を必要としても、常時寝たきり状態となっているケースばかりではなく、ある程度の歩行は可能な状態かもしれません。

しかし、介護する人が支えてあげないと食事や排泄・入浴の際、歩行が不安定となり転倒するリスクもあります。このように様々な家事の他、親のサポートが必要です。

更に一人っ子が仕事をしている状況ならば、親の健康や衛生状態を維持するためとはいえ、かなりの重労働になる可能性があります。

一人だけの介護は身体的な負担の他、「親の介護はいつまで続くのだろう」、「自分が病気やケガで入院したら親をどうすれば良いのか」という悩みが大きくなる場合もあるはずです。

不安が解消されないままだと、介護をする側（介護者）が精神的に追い詰められ、うつ状態になってしまうかもしれません。

厚生労働省の報告によれば、介護をする側がうつになる割合は高く、下表の通りとなっています。

足腰の弱った親のために車いすや介護ベッドの購入、自宅をバリアフリーに改修、介護施設の利用を検討する場合、それにかかる費用も考慮しなければいけません。

介護サービスを利用すれば、介護をする側・される側も身体的負担や精神的負担が軽減され、暮らしやすくなるはずです。しかし、それに必要な費用も無視できない負担です。

公益財団法人生命保険文化センターの報告によれば、1人を介護する際に要した費用の平均（公的介護保険サービスの自己負担費用を含む）は下表の通りです。

将来、介護が必要になるという前提で、親の元気なうちから準備を開始しましょう。主に次のような準備が考えられます。

• 自宅のバリアフリー化を徐々に進める
• 介護サービスにはどのようなものがあるかを確認する
• 公的介護保険制度について知る

以上の3点を説明します。

親が健康なうちから自宅の段差を無くし歩きやすくする、風呂場やトイレに手すりを付ける等、バリアフリー化を徐々に進めていけば、お金の負担を抑えつつ介護に備えられます。

一気にバリアフリー化を行おうとすると多額の費用がかかる場合もあるので、生活へ支障が出ない程度に、給与・収入の何割かをバリアフリーの費用へ回していきましょう。

介護サービスには、介護が必要な人を介護施設に入居させケアする入居サービス、1週間に何回か施設でケアしてもらう通所サービス、訪問介護員等が自宅に訪問しケアをする訪問サービス等があります。

事前にどんな介護内容となっているのか、利用条件は何か、費用はどの位になるのかを確認しておけば、親が介護を必要としたとき、どんなサービスを受けるべきか慌てずに検討できるはずです。

公的介護保険制度を利用すれば、介護サービスに介護保険給付が適用でき費用負担の軽減を図れます。本制度は要支援・要介護の7つの区分に分かれており、それぞれの要介護度に応じたサービスが利用可能です。

しかし、事前に要介護認定申請が必要で、手続きを経なければ公的介護保険制度は利用できません。親が介護を必要とする前に介護保険給付の内容、手続き方法を知っておけば安心です。

介護に関する相談先を前もってチェックしておきましょう。

一人っ子が高齢となった親を介護する場合、誰も相談者がおらず一人で悩みや不安を抱え込む事態になるかもしれません。

そんな時、相談にのってくれる機関・団体を確認しておきます。相談先は非常に多く、親のかかりつけの医師の他、市区町村役場の介護保険を担当する部署、地域包括センター等があります。

身近に親戚がいた場合は、親の介護に協力してくれないか頼んでみても良いでしょう。親戚の中に介護経験のある人がいるならば、いろいろなアドバイスも期待できます。

実際に介護の役割を分担する取り決めも考えられますが、自分や親と疎遠となっている親戚から協力の約束を得るのは難しいかもしれません。

そんな時は無理に頼み込まず、介護サービスの利用を検討した方が良いでしょう。

介護保険サービスが利用できるならば、介護の専門家の適切なケアが期待でき、介護をする人の負担軽減にもつながります。

また、介護を受ける側のニーズに応じて、次のような介護保険サービスの利用が可能です。

介護をする人は、「自分だけで親を介護できるか不安」「介護サービスを利用したいがどこに申し込んだら良いかわからない」といった悩みや問題を抱えているかもしれません。

そんな時に適切な助言をしてくれる方々も存在します。こちらでは、いろいろな相談先を紹介しましょう。

地域包括支援センターは、高齢者やその家族を対象に保健、医療、介護、福祉等の総合的な無料相談窓口となっています。

各市区町村に1カ所または複数の関連施設が設置され、基本的に平日（月曜〜金曜日）・受付時間（午前9時〜午後5時くらい）まで対応可能です。

介護に関する相談の場合、概ね介護福祉士の資格を持つ担当者が相談にのってくれます。

親の診断・治療を担当している主治医は、親の退院後の暮らし方・社会復帰についてアドバイスをしてくれます。親・家族と強い信頼関係のある医師ならば、親身にアドバイスしてくれるはずです。

また、利用している病院には、社会福祉士資格または精神保健福祉士資格を有する相談員（医療ソーシャルワーカー）がいて、この相談員が相談にのってくれる場合もあります。

民生委員は厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員です。ボランティアとして活動し、高齢者・家族の相談にのってくれます。

行政等の依頼で担当区域内の高齢者世帯の状況調査や、高齢者の安否確認・見守りのための訪問活動も担うので、地域の介護ネットワークを熟知していて、的確なアドバイスが期待できます。

公的介護保険制度の利用や介護保険料等に関する相談は、お住いの市区町村役場の窓口で対応しています。

担当部署として「高齢福祉課」「社会福祉課」またはそれに近い名称の部署が設置され、担当職員がアドバイスをしてくれます。各市区町村役場の受付時間に合わせて来庁しましょう。

一人っ子が既に独立し親元を離れて暮らしている場合、親の介護は難しい場合もあります。親の介護はもちろん、財産の管理、病院への入院や介護施設へ入所する事務手続きを代わりに行ってくれる存在が必要です。

こちらでは親と離れて暮らしていても、いろいろなサポートが期待できるサービスを紹介します。

本人や家族は契約した事業者から、適正な財産管理や年金収入等の受け取り、生活に関する費用の支払いを代わりに行ってもらえるので、銀行や公的機関に自ら訪問し対応する手間が省けます。

介護施設の入所や医療機関の入院が必要となる場合、契約締結や契約の変更、解除等をサポートしてくれて便利です。

親本人が亡くなった場合、離れて暮らす一人っ子がお葬式や死後の手続きを行うのは困難です。

しかし、事業者と契約を締結しておけば、葬儀社の手配や駆けつけ、親族への連絡・葬儀社への支払い、納骨と埋葬の他、市区町村役場に死亡届・埋火葬許可証の提出等も行ってくれます。一人っ子にとって、頼もしいサポート役となってくれるはずです。

たとえ一人っ子であっても、判断能力が低下した人をサポートする制度や、いろいろな介護サービスを利用すれば、安心して親の介護ができるはずです。

本記事でご紹介した、一人っ子が親の介護の際に頼れる場所やサービスをまとめると、以下の通りです。

• 自宅や介護施設等で利用できるいろいろな介護保険サービスがある
• 介護の不安を感じたら、地域包括支援センターや市区町村役場等で相談してみる
• 親を介護する際に便利な生前契約等のサポート・サービスがある

親の介護が必要となってから慌てないよう、十分な備えを行っていれば、余裕をもった対応がとれることでしょう。