【深刻】老後の一人暮らしが「寂しい」理由と対策方法をご紹介

一人暮らしをする高齢者は増加しています。現在、健康的な食生活やライフスタイルを維持し、元気な一人暮らしの高齢者も非常に多いです。

しかし、一人暮らしの高齢者であれば、「寂しい」と感じてしまう時があるかもしれません。長いセカンドライフを、孤独を抱えたまま生活していくのは、精神的に苦しいものがあるでしょう。

何らかの方法で寂しさを解消し、ゆとりと生きがいを持てるならば、穏やかな老後が送れるはずです。

そこで今回は、老後の一人暮らしが「寂しい」と感じる理由、老後の寂しさや不安を解消する様々な制度等を解説します。

一人暮らしをする高齢者は着実に増加しています。

厚生労働省の報告によれば、2021年で高齢者（65歳以上）がいる2,580万9,000世帯のうち、実に3割近く（742万7,000世帯）が単独世帯という状況です（出典：厚生労働省「2021年　国民生活基礎調査の概況」）。

一人暮らしとなった理由としては、主に次の事情があげられるでしょう。

• もともと家族を持たず単身者だった
• パートナーと死別または離婚した
• 子供が既に独立、または子供がいなかった

望んで一人暮らしをしていた人の他、結果的に一人暮らしとなってしまったケースもあります。

一人暮らしの高齢者が寂しさを感じる理由は、主に次の4つが考えられます。

• 話す相手がいないから
• 金銭面で不安があるから
• 打ち込めることが無いから
• 病気やケガをした際に不安があるから

それぞれの理由について解説しましょう。

まず話し相手となる人がいない、という理由があげられます。

一人暮らしの人でも若いうちは、仕事やレジャーのため頻繁に外出したり、仕事先の同僚や友人とのコミュニケーションがとれていたりして、話し相手がいないという事態はあまりなかったはずです。

しかし、仕事をリタイヤして年金暮らしとなれば、自宅にいる時間が長くなり、友人・知人との交流も減っていく可能性があります。

貯蓄や公的年金だけでは金銭的に不安、という理由があげられます。

基本的に65歳以上になれば公的年金（老齢基礎年金・老齢厚生年金）は受け取れますが、貯蓄と合わせても生活費を賄えるのか不安な人も多いはずです。

総務省統計局の報告によれば、一人暮らしの高齢者の家計収支は平均月額で次の通りとなります（総務省統計局「家計調査報告（家計収支編）2021年（令和3年）Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支」）。

• 実収入（社会保障給付等）：135,345円
• 消費支出（食費・水道光熱費等）：132,476円
• 非消費支出（直接税等）：12,271円

実収入135,345円－（消費支出132,476円+非消費支出12,271円）＝－9,402円

社会保障給付（公的年金等）の収入だけに頼った場合、毎月9,402円が不足し、年間では112,824円の赤字です。

高齢になっても生活が窮乏しないよう、何らかの収入源の確保が求められます。

退職前は仕事に情熱を持ち、バリバリ職務をこなしてきた人ならば、老後のセカンドライフに移行した際、何をするべきか悩んでしまうかもしれません。

熱中できるものがないと、ずっと自宅に引きこもったままとなる等、身体的な健康や精神面にも悪影響が出るおそれがあります。

「仕事が生き甲斐」だった人ほど、なるべく早く新たに熱中できるものを見つけた方が良いでしょう。

ずっと一人暮らしをしてきて、生活が充実していた人も、高齢となれば次第に体力や身体機能、そして判断能力が衰えていきます。

病気やケガをするリスクも増し、病院に入院するかもしれません。また、認知症になり介護施設へ入所するかもしれません。

一人暮らしの高齢者がこれらの施設を利用する際、身元保証人や身元引受人になってくれる人がおらず、手続きが難航してしまう可能性もあります。

一人暮らしの高齢者全てが、孤独を感じているわけではありません。自分のニーズに合わせ、寂しさの解消方法を実践し、充実した生活を送る高齢者も多いはずです。

次の寂しさを解消する方法について、前もって検討しておきましょう。

• 外出する習慣をつける
• 人との関われる場に参加する
• 公的年金の他に収入源を持つ
• 没頭できるものを作る

こちらでは、それぞれの解消方法を説明します。

高齢になったからといって、自宅ばかりに引きこもらず、無理をしない範囲で公園の散歩や、小旅行を楽しむのも良いでしょう。

自宅の中だけでは得られない刺激を受けられ、良い気分転換になるはずです。

例えば健康面に問題がなければ、定期的にスポーツジムへ行って汗を流すと、体力・身体機能の維持も期待できます。

新たな友人を見つけたいならば、地域のイベントへ参加してみるのも良い方法です。

各市区町村では、頻繁に高齢者を対象としたイベントを開催しているところもあります。そこで参加者と会話しイベント活動を楽しみながら、友人を探してみましょう。

多くの人と関われる機会があれば、寂しさを感じないはずです。

公的年金以外にも、収入を得られる方法について検討しておきましょう。

高齢者でも健康なうちはパート・アルバイトで、生活費の不足分が賄えるはずです。

金融商品に深い知識を有しているなら、投資信託や株式投資で高い収益も目指せます。ただし、国内・海外経済市場の変動で大損失を出すリスクが想定されます。

健康面に左右されず、ハイリスクを回避できる収入源を持ちたいのなら、生命保険の活用を考えてみましょう。

とくに現在では死亡保障を抑えつつ、契約者（被保険者）の生存中の年金受取を充実させる「生活保障重視型個人年金保険」が販売されています。

終身年金（一生涯受け取れる年金のタイプ）で契約すれば、公的年金と共に亡くなるまで年金が支給されます。

生活保障重視型個人年金保険の商品の中には、50歳から契約するものもあるので、高齢になってからでも加入は十分可能です。

健康面や金銭面に不安がなくても、現在は「人生100年時代」と言われています。セカンドライフは予想外に長く継続するかもしれません。

そのセカンドライフを充実させる趣味があれば、寂しさは感じないはずです。

営農とまではいかなくても家庭菜園に挑戦してみる、模型を工作してみる等、余暇を利用した楽しみ方を検討してみましょう。

高齢者の一人暮らしは寂しいだけでなく、次のようなリスクも想定されます。

• 介護施設への入居や入院
• 知症の発症・進行に気づきにくい
• 自分が亡くなった後の対応

こちらでは、それぞれのリスクについて説明しましょう。

介護施設や病院を利用する際、高齢者本人による入所または入院の契約手続きの他、身元保証人・身元引受人等をたてなければいけない場合が多いです。

身元保証人・身元引受人等は、家族の誰かになってもらうのが一般的です。しかし、一人暮らしの人は頼める人がおらず、手続きに支障が出る可能性もあります。

どうしても身元保証人・身元引受人等が見つからないならば、何らかの方法で対応する必要があるでしょう。

本人が認知症の発症に気付くのはとても困難といえます。周囲が異常に気付き、医師の診断を受けて判明するケースがとても多いです。

一人暮らしの高齢者の場合、認知症の進行がかなり進んでからわかる場合もあるので、定期的に本人の状態を確認してくれる人がいれば安心です。

健康で判断能力があるうち、見守ってくれる存在を探しておいた方が良いでしょう。

一人暮らしの高齢者の場合、葬儀や埋葬、死後の諸手続きを行ってくれる人が誰もおらず、亡くなってからの対応が心配になるかもしれません。

自分の死後に関する事務を行う人がいないと、利用していた施設の方々や行政等、いろいろな方々に迷惑のかかる可能性があります。

何とか、自分が亡くなった後の対応を任せられる人もみつけておきましょう。

一人暮らしの高齢者にはいろいろなリスクが考えられます。しかし、そのリスクを軽減する制度、そして支援サービスがどんどん登場しています。

特に次のような制度・サービスの利用を検討してみましょう。

• 成年後見制度を利用する
• 自治体のサービスを利用する
• 身元保証サービスを利用する
• 終活サービスを利用する

こちらでは、それぞれの制度やサービスについて解説します。

成年後見制度とは、判断能力が著しく低下した本人の財産管理（預金の管理、必要費の支払い等）、身上監護（施設の入所・入院手続き等）を支援してくれる制度です。

「後見人等」と呼ばれる人が、本人に代わり管理・法律行為を行います。

成年後見制度は大きく次の2種類に分かれます。

• 任意後見：本人が判断能力のあるうちに、後見人となってくれる人と任意後見契約を締結する方法
• 法定後見：判断能力が著しく低下した後、家庭裁判所に申立て後見人等を選んでもらう方法

成年後見制度のメリット・デメリットは次の通りです。

成年後見制度を利用し、後見人等をたてた場合は、判断能力が著しく低下した本人に代わり預金の管理や諸手続きを任せられるので安心です。

病院や介護施設の中には、成年後見人がいれば身元保証人等を不要とする施設も多いです。

任意後見ならば財産管理・身上監護の範囲内で、本人（委任者）と、任意後見人となってくれる人（受任者）が自由に契約内容を決定できます。

なお、受任者は個人に限らず法人を選んでも構いません。

任意後見・法定後見いずれも家庭裁判所に申立て、手続きを進める必要があります。

• 任意後見：契約締結後、委任者の判断能力の著しい低下を確認し、裁判所へ「任意後見監督人選任」の申立を行う
• 法定後見：委任者の判断能力の著しい低下を確認し、裁判所へ「後見開始等の審判」の申立を行う

手続きに手間がかかるので、すぐに後見人が就任できるわけではありません。また、法定後見に関しては、後見人等を誰にするか、サポート範囲をどうするかは基本的に裁判所側が決定します。

一人暮らしに不安があるなら、各自治体（市町村）が主体となって提供しているサービスを利用しても良いでしょう。

高齢者のための総合相談窓口として設置されているのが、「地域包括支援センター」です。

センターでは、豊富な経験を有する介護・保健・福祉の専門職員がチームとなり、高齢者の相談サービスを提供しています。

特に社会福祉士が、一人暮らしの高齢者の福祉・医療に関する相談、悩みへ対応してくれるはずです。

地域包括支援センターへ相談したいならば、まず厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索　介護サービス情報公表システム」を利用しましょう。

こちらで、自分の地域にあるセンターを好きな時間に検索できます。

身元保証サービスとは、一人暮らしの高齢者が施設等を利用する場合、身元保証人・身元引受人等になってくれる事業者のサービスです。

身元保証サービスを扱う事業者は最近とても多くなっています。例えば、弁護士や行政書士のような士業専門家をはじめとした事務所、一般社団法人・NPO法人・株式会社も参入しています。

事業者ごとに異なる場合はあるものの、概ね次のサービスが提供されています。

• 身元保証・身元引受：病院への入院、介護施設へ入所するときの保証・引受等
• 生前事務委任契約：高齢者の財産管理、各種支払い、生活支援等のサービス
• 死後事務委任契約：死亡後の葬式や埋葬の手配、死亡に関する諸手続き等のサービス

身元保証サービスを利用すれば、身元保証・身元引受はもちろん、生存中や死亡後のいろいろなサポートを依頼できます。

一人暮らしの高齢者は終活についても、なるべく早いうちから検討しておきましょう。

葬儀や埋葬、相続に関してトータル的な相談を受けたいならば、終活専門のサービス提供会社を利用しましょう。

サービス提供会社は、各地で終活セミナーや終活相談会を開催しています。セミナー等の参加や相談はほとんどの場合、無料で受けられます。

終活セミナー等の内容は概ね次の通りです。

• 高齢者各自の希望に沿った葬儀・埋葬の選び方
• 遺言書・エンディングノート作成のコツ
• 葬儀・埋葬の諸手続きの流れ　等

基本的な終活の知識が得られるはずです。

自分が元気で判断能力のあるうちに対策をとっていれば、老後の一人暮らしの寂しさを大幅に軽減できるはずです。

本記事でご紹介した一人暮らしの寂しさの理由、その解消法をまとめると以下の通りです。

• 一人暮らしが寂しい理由として、話す相手がいない、金銭面で不安がある、打ち込めることが無い、等があげられる
• 解消法としては、人との関われる場に参加する、公的年金の他に収入源を持つ、没頭できるものみつける、等があげられる
• 安心して一人暮らしを送るために、成年後見制度や身元保証サービス等を利用する

自分が一人暮らしを続ける中で、どんなことに不安を感じるのか、よく考慮しておきましょう。

その不安をどのように解消していけばよいのか、なるべく早い段階から対策を講じ、準備を進めていくことが大切です。