入院には連帯保証人が必要？頼れる家族がいない場合の対応策3つを解説

入院で求められる連帯保証人に関して、「なぜ連帯保証人が必要なの？」「頼れる家族がいない場合はどうすればいいの？」と、お悩みの方もいらっしゃるでしょう。

実は、入院時の保証人は一般的に身元保証人と呼ばれていますが、実際には連帯保証人や身元引受人など、異なるケースもあるため、注意しなければなりません。

そこで本記事では、入院時の連帯保証人・身元保証人・身元引受人の違いや、これらの役割を引き受けられる人の条件について、詳しく解説いたします。

さらに、連帯保証人として頼れる家族がいない方のため、3つの対処方法についてもご紹介しますので、お困りの方はお役立てください。

入院時に必要なのは、一般的に『身元保証人』と呼ばれていますが、実際には「連帯保証人と身元引受人」など、異なる名称や複数名を求められるケースがあります。

そのため、まずは求められる役割と追及される責任に関して、契約内容をしっかりと把握しましょう。

※対象地域：埼玉県・東京都・神奈川県
※出典：高齢者の身元保証に関する調査（行政相談契機）（総務省）

なお、身元保証人という名称については、次のような補足事項が記載されています。
保証人、身元保証人、身元引受人、連帯保証人など名称のいかんを問わず、病院・施設で慣習的に用いられている「身元保証人」を指す。

連帯保証人には、入院費の支払いが滞った場合の支払いや、入院先で患者本人が発生させた損害における賠償責任といった、金銭的な保証を負う役割があります。

身元保証人との大きな違いは、患者本人とともに連帯して責任を果たさなければならない責任の重さです。

身元保証人は連帯保証人と同様、未払金の支払いや損害賠償を行います。しかし、患者本人へ請求するよう求める権利を有するため、連帯保証人よりリスクは低いです。

一方で、容体の急変などにおける緊急対応や、医師による治療説明への同席、入退院の手続きや患者のサポートなど、入院に必要な保護者としての役割を求められます。

また、身元引受人が設定されていない場合は、亡くなった時の遺体の引き受け取りや荷物の引き取りを求められるケースが通例です。

身元引受人には、退院時や亡くなった場合の身柄の引き受けと荷物の引き取りを行う役割と責任があります。

ただし、身元保証人が設定されていない場合は、身元保証人と同じ役割を求められることが一般的のため、事前に契約内容を確認するようご注意ください。

入院時に連帯保証人が必要となる理由は、入院費や損害賠償に対する責任追及が目的で、病院にとって身元保証人よりも優位なためです。

病院が安定した経営状態になければ、私たちは緊急時に医療技術に助けられることもなく、健康を保つことができません。

つまり、患者の立場では、病院へ万全な支払い約束を交わすことを証明するために、連帯保証人の存在を示す必要があることを知っておきましょう。

病院では入院時の連帯保証人や身元保証人において、同居する家族など、同一世帯の人が不適とみなされるケースがあるためご注意ください。

なぜなら、同一世帯にあたる人は同一生計の場合が多いという理由があり、患者本人が対応できない支払いを家族が対応するのは困難とみなされる傾向にあります。

たとえば、夫が入院する場合、無職で扶養されている妻が連帯保証人になることは不可能です。

しかし、夫と異なる職場で働き、安定した収入のある妻や子供なら、同一世帯や同居している場合でも、連帯保証人として認められるケースがあります。

つまり、たとえ同居していても、自活力のある人なら保証人として認められる可能性があるため、判断に迷う場合は入院先へ相談してみましょう。

連帯保証人や身元保証人にお困りの身寄りのない方は、まずお住まいの市町村役所や地域包括支援センターへ相談しましょう。

役所や地域包括支援センターは、公的機関のため安心して無料で相談できることが最大のメリットです。

連帯保証人にお困りの場合、連帯保証人が不要な入院先の紹介や対処方法など、適切なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。

【全国各地の地域包括支援センター検索】
リンク先：介護事業所・生活関連情報検索（厚生労働省）

上記の検索システムでは、最寄りの地域包括支援センターを調べることが可能です。スムーズに相談ができるよう、事前にご連絡のうえ、日時について面談予約をしてからお出かけください。

なお、地域包括支援センターでは、65歳以上の高齢者やそのご家族が、健康や福祉や生活に関して、総合的に相談できる窓口が設置されています。

保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの有資格者が在席しているため、入院のみならず、介護や退院後の生活に関するご相談などもおすすめです。

頼れる家族がいない方は、家庭裁判所が公認した後見人によって、財産管理や身上監護をしてもらえる成年後見人制度の利用を検討するのも一つの方法です。※出典：成年後見人制度とは（厚生労働省）

成年後見人制度には2つの種類があり、身寄りのない方にとっては認知症対策にもなるほか、既に認知症を患っている方の支援制度でもあります。

• 任意後見：判断能力があるうちに、誰に後見人になってもらい、何を代行してもらうのかを契約しておく。
• 法廷後見：すでに判断能力がない方のために、周囲の方が家庭裁判所に申し立てて代行を認めてもらう。

ただし、成年後見人は保証人になることはできません。債務の保証や緊急時の対応などは対象外となるため、成年後見人で良いかどうかは入院先の判断となります。

また、後見人選任の審判が下りて登記簿へ登録されるまでに1〜3ヶ月程度の期間を要します。

入院予定日までの日数が足りない方は注意しなければならず、将来のための入院対策として捉えておくとよいでしょう。

成年後見人制度の初期費用は、自分で行うと13〜23万円程度ですが、一般的には司法書士や弁護士へ依頼するため、別途10〜25万円程度の料金が必要です。

そのほか、月額2〜6万円の基本報酬と、訴訟や不動産売却などの事情があった場合には、別途50%の報酬の支払いが発生します。※出典：申立てにかかる費用・後見人等の報酬について 東京家庭裁判所後見センター（裁判所）

できるだけ早く、万全に連帯保証人を用意したい方は、身元保証サービスを利用することが確実です。

というのも、実は地域包括支援センターや病院、介護施設、賃貸住宅などでは、家族のいない方へ身元保証サービスを紹介するケースが多くあります。

身元保証サービスとは、個人ではなく企業が連帯保証人になる仕組みのことをいい、個人同士では頼みにくい便利な関連サービスが盛り込まれたプランもあります。

身寄りのない方は、入退院時の付き添いや必要品の買い出しなど、入院生活をサポートする付帯サービスが含まれた身元保証プランを選ぶと安心できるでしょう。

費用は企業やプランによっても異なりますが、一般的に入会金や登録料として1〜5万円程度、月額料金5,000〜1万円程度、利用料金が30〜50万円程度です。

入院の連帯保証人を目的とする場合には、保証面や事務手続きにおける期間のみならず、料金の面においても成年後見人制度よりメリットが大きいといえるでしょう。

一方で、身元保証サービスの中には悪徳な企業も見受けられるため、契約内容の確認を怠らず、もし問題が生じたらすぐに最寄りの消費生活センターへご相談ください。

出典：身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意（国民生活センター）

入院時に連帯保証人が必要になる理由や、身元保証人・身元引受人との違いをご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。

• 入院時に連帯保証人が必要となる理由は、万一の入院費の未納や損害賠償に対する保証のため。
• 連帯保証人と身元保証人との債務における違いは責任の大きさにあり、連帯保証人は患者本人とともに返済や賠償をしなければならない義務がある。
• 連帯保証人の役割は金銭面に特化しているのに対して、身元保証人・身元引受人は、緊急連絡先や入退院の準備、死亡時の身柄や荷物の引き取り等の役割を担う。

一方で、連帯保証人は頼れる家族や親族がいなくても特に問題はなく、次の3つの対応策によって対処可能です。

1. 地方自治体（市町村役所）や地域包括支援センターへ事前に連絡のうえ、面談予約をして相談しに行く。
2. 3ヶ月以上先の将来の入院に備えるなら、成年後見制度によって、入院費用の支払いなどを代行してもらえる。ただし、成年後見人は連帯保証人にはなれず債務保証は不可能。
3. なるべく早く、確実に連帯保証人を用意したい場合は、身元保証サービスを利用するとよい。

なお、連帯保証人に関する契約では、保証金の極度額を定めなければならないことなど、2020年に法改正が行われています。※出典：2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります（法務省）

法律に関する難しい知識に戸惑う方もお見受けしますが、入院にあたって一番大切なのは、心身の健康のための時間づくりです。

入院時はもちろん、退院後もトラブルを防いで安心して過ごせるよう、積極的に地域包括支援センターや身元保証会社へ相談して、いち早く不安を解消してください。