身寄りのない高齢者の「保証人」はどうする？保証人の種類や頼める人がいない場合の対応策を徹底解説

身寄りのない高齢者であっても介護が必要となる可能性や、入院を余儀なくされる可能性はあります。

その場合に身寄りのない高齢者だけで、施設側と入所・入院に関する契約を結ぶのは困難なケースが想定されます。

なぜなら、契約の際は自分の代わりに責任を負ってくれる人もたてる必要があるからです。

そこで今回は、身寄りのない高齢者が保証人等をたてる方法、保証人等がいない場合の対処法等を解説します。

記事を読み終えた後は、身寄りのない高齢者でも慌てることなく、保証人等を選ぶ方法・対処法について、よくおわかりになるはずです。

高齢者が施設等を利用する場合、原則として自分の代わりに責任を負ってくれる人もたてる必要があります。この責任を負ってくれる人とは、次のような役割を担う方々です。

• 身元保証人
• 連帯保証人
• 身元引受人

こちらでは、それぞれの役割について解説しましょう。

身元保証人は高齢者にかかる介護サービスの費用、病院の医療費等、費用負担の範囲内で保証する役割を担う人です。高齢者が身元保証人をたてる場合、基本的に家族の誰かを選びます。

老人ホーム等の介護施設や、病院や医院のような医療機関で身元保証人を必要とする場合、身元引受人と別の人をたてるように要求されるケースが多いです。

ただし、身元保証人は法律や法令でどんな役割・責任があるのか、明記されていません。施設によっては、身元引受人との役割・責任の範囲が曖昧となっている場合もあります。

連帯保証人は法定された保証人制度であり、高齢者本人が引き起こした損害の賠償責任を負わなければいけません（民法第458条）。

連帯保証人は施設側から費用を請求された場合、素直に応じる必要があります。

例えば連帯保証人は、「本人に資力があるから賠償はまず本人へ請求してくれ」「財産は本人の方から差押えをしてくれ」という主張は認められません。

連帯保証人となる場合、特別な条件は定められていませんが、非常に責任の重い役割なので、安定した収入・貯蓄の潤沢にある人を選ぶのが一般的です。

身元引受人とは、高齢者本人が判断できない場合、本人に代わり意思表示や手続き等を行う人です。

高齢者が介護施設の入所・医療機関へ入院する場合の他、賃貸借契約を締結する場合に必要とされる傾向があります。

こちらも高齢者本人と密接にかかわる対応が要求されるため、家族の誰かに身元引受人となってもらうのが一般的です。

保証人等は主に次のような場面で必要となる可能性が高いです。

• 介護施設への入居時
• 入院時
• 賃貸の契約時

それぞれのケースについて解説しましょう。

介護施設に入居するため利用申込を行う際、身元保証人・連帯保証人・身元引受人を要求されるケースが多いです。

施設によってはそれぞれ別の人をたてるよう要求するところもありますが、身元保証人と身元引受人が別の人なら、連帯保証人は同一人物でも良い、または全部同じ人でも良い、と柔軟な対応を行うところもあります。

介護施設を利用する場合、次のようなケースで保証人等が必要です。

施設によっては、身元保証人・連帯保証人・身元引受人それぞれの役割・責任の範囲が重複している場合もあります。

そのため、保証人等になる人は契約締結前にどんな役割・責任を負うのか、しっかりと契約書でチェックしましょう。

病院や医院のような医療機関に入院する契約を行うときも、身元保証人・連帯保証人・身元引受人は必要とされます。

医療機関に入院する場合、次のようなケースで保証人等が必要です。

高齢者本人が賃貸物件を借りる場合、身元引受人・連帯保証人をたてる必要があります。一方、大家さんや不動産会社から身元保証人を要求されるケースはほとんどありません。

アパートやマンションの賃料の未払い、物件や物件の設備を破損させたり、住民にケガさせたりした等の賠償責任は連帯保証人が負います。

一方、緊急連絡先として、また高齢者本人の退去時の家財道具や衣類等の処分・移送の責任は身元引受人が負います。

高齢者本人が仮に身元引受人・連帯保証人をたてられなくても、「家賃保証会社」を利用すれば賃貸物件の入居が認められるので安心してください。

家賃保証会社は次のような保証や代行サポートを行ってくれます。

• 家賃費用
• 修繕費用
• 更新料
• 違約金・損害金の対応
• ハウスクリーニング費用
• 残置物（家財道具・衣類等）の除去

費用はかかりますが、事業者へ保証に関する様々な対応を任せられます。

また、賃貸借契約を締結する際は家賃保証会社ばかりでなく、「身元保証サービス」を活用できる場合があります。

契約締結時に身元保証サービス事業者が連帯保証人・身元引受人となったり、荷造りから引っ越しまで支援したりと、一貫した「高齢者向けサービスの利用」を提供するところもあります。

身寄りのない高齢者は家族がおらず、気軽に保証人等を頼める人はなかなか見つからないかもしれません。

そんな場合は次のような対処法があります。

• 成年後見制度を利用する
• 身元保証会社を利用する

それぞれの対処法についてみてみましょう。

保証人等の代わりに成年後見人がいる場合は、介護施設への入所・医療機関への入院が認められる場合があります。

成年後見制度には大きく「法定後見」「任意後見」の2種類に分かれます。

こちらは高齢者本人の判断能力が著しく低下したとき、家庭裁判所に申立て法定後見人等を選任してもらう制度です。

申し立ては、家族や親戚さらには判断能力が一時回復した高齢者本人、検察官や市町村長も行うことができます。

法定後見人等は主に親族や士業専門家（弁護士・司法書士）や社会福祉士が選任されます。ただし、裁判所から選任されるため、必ずしも高齢者本人の望んだ人物が任命されるとは限りません。

こちらは高齢者本人の判断能力が十分なうち、まず任意後見人となってくれる人と任意後見契約を結びます。そして本人の判断能力が著しく低下したとき、申立人が家庭裁判所へ申立て任意後見監督人を選任してもらいます。

任意後見契約は本人（委任者）と任意後見受任者との間で締結され、本人は相手方の同意があれば自由に受任者として選任できます。

ただし、任意後見契約は公正証書（公証人が作成する契約書）にしなければならず、裁判所から任意後見監督人を選んでもらわないと、任意後見契約の効力が発生しないので注意しましょう。

なお、任意後見人には家族や親戚はもちろん士業専門家、社会福祉士、更には法人も就任が可能です。

成年後見人は高齢者本人の判断能力が著しく低下した場合、本人に代わり財産管理（預貯金の管理、流出の抑制等）、身上監護（介護・入院契約の手続きの支援等）を行います。

施設利用の際、成年後見人のサポート対象となる具体的な手続き・対応は下表の通りです。

身元保証会社は、高齢者本人の身元保証をはじめとしたトータル的なサポート・サービスが受けられる事業者です。最近では、身元保証サービスの分野に様々な企業が参入しています。

身元保証会社が提供するサービスは保証人等としての役割の他、日常的な生活支援、死後の事務手続き等、幅広いサポートが期待できます。

介護施設・医療機関共に身元保証会社と提携しているケースがあり、高齢者本人が保証人等をたてられなくても、施設側から身元保証会社を紹介される場合があります。

身元保証会社は高齢者の保証人等となるだけではなく、生活支援を行ってくれたり、亡くなった後の対応・手続きを任せたりできる頼もしい事業者です。

身元保証会社へ利用を申し込む前に、次の事柄を確認しておきましょう。

• 身元保証会社はどのようなことをサポートしてくれる？
• 身元保証会社のメリット・デメリット
• 身元保証会社を利用する際にかかる費用の目安

こちらでは、それぞれのポイントについて解説しましょう。

身元保証会社を利用すれば、施設と契約する場合に保証人等となってくれる他、施設利用に関係する契約更新や退去に関しての手続きを任せられます。

高齢者本人に施設の利用中のトラブルが発生しても、身元保証会社が迅速に対応してくれるので、本人は安心して介護または医療サービスを受けられるはずです。

身元保証会社を利用する際、事前にまとまったお金を支払う必要があります。身元保証の他にどんなサービスを受けるかでも、かかる金額に大きな差が出ます。

身元保証会社に利用を申し込む場合は、百万円に上る預託金（預けるお金）を支払ったり、生命保険（死亡保険）に加入し受取人を身元保証会社にしたりする（例：死後事務委任も依頼する場合）等、いろいろな方法でお金を支払います。

いずれの方法にしても、大きな金額が動くはずです。

また、サービスが開始される前に何らかの事情で契約を解約したり、本人が死亡したりする可能性も考えられます。このような事態となった場合、預託金がどうなるか等、担当者へ忘れずに確認し、納得のうえで契約しましょう。

なお、身元保証会社は民間会社である以上、破産・倒産のリスクが否定できない点にも留意しておくべきです。

身元保証会社を利用する際にかかる費用の目安は次の通りです。

事業者がどんなサポートを提供するのかで差はあるものの、基本的に入会金・年会費、身元保証料・事務管理費等がかかります。

高齢者にとって、今後必要となってくるであろう介護施設の入所・医療機関への入院のため、保証人等をどうするかについて検討しておきましょう。

本記事でご紹介した、保証人等の役割や保証人等がいない場合の対処法をまとめると以下の通りです。

• 高齢者が施設を利用する場合は、基本的に身元保証人・連帯保証人・身元引受人をたてる必要がある
• 保証人等を選任できなくても、成年後見制度、身元保証会社と契約すれば施設の利用が認められる
• 身元保証会社を利用する場合、トータル的なサポートが受けられるものの、多額の費用がかかる点に注意するべき

身寄りのない高齢者で保証人等が見つからなくても、様々な制度やサービスの利用で介護施設や医療機関等と契約が可能です。

まず、どんな方法が自分の都合に合っているのか、良く検討してから準備を進めましょう。