【カンタン理解】生前贈与とは？初心者向けに分かりやすく解説！

「相続税対策に生前贈与が有効と聞いたけれど、いまいち内容がわからない。」「いろいろな減税制度との併用は可能なのだろうか？」、と疑問を感じる方々は多いはずです。

自分が所有している不動産や、預金等の資産が多いと、死後に相続が開始された後、法定相続人が多額の相続税を納めなければいけない可能性もあります。

しかし、生前贈与をうまく利用すれば、相続税の負担軽減に役立てられます。

そこで今回は、生前贈与の特徴とメリットや注意点、贈与税を軽減できる控除制度等について解説します。

この記事を読み終えたら、自分や家族に合った生前贈与の方法や贈与税の控除制度が、よくおわかりになるはずです。

生前贈与とは、被相続人が生きている内に、所有する財産を相続人等へ贈与する方法です。

被相続人が金融資産（現金・株券等）や土地・建物を多く所有していると、相続開始後、相続財産を引き継いだ相続人に、多額の相続税が課せられるおそれもあります。

しかし、被相続人が生前贈与により財産を減らしていけば、相続税の負担軽減が期待できます。

生前贈与は贈与者と受贈者（贈与を受け取る人）が合意して契約を結び、契約内容に従い贈与します。そのため、受贈者の承諾なしに贈与は行えません。

相続でも被相続人が遺言書を作成する場合、財産を譲る人を選定できます。ただし、遺言は被相続人の一方的な意思表示であり、財産を譲る相手の承諾は不要です。

なお、被相続人が遺言書を作成しなかった場合、法定相続人が民法の相続割合に従い財産を相続するか、法定相続人が話し合い遺産分割について協議します。

将来被相続人となる贈与者が生前贈与を利用すれば、相続税負担の軽減等が図れます。

生前贈与には4つのメリットがあります。

• 節税効果が望める
• 贈与する相手を自由に選べる
• 好きなタイミングで贈与できる
• 相続人同士のトラブル対策になる

こちらでは、それぞれのメリットについて解説しましょう。

生前贈与をどんどん行っていけば、その分、自分が所有する財産は減っていくので相続税の軽減に役立ちます。

被相続人の相続財産がどれくらいあるかで、相続税の負担は大きく変化します。

生前贈与を進め相続開始時に相続財産がわずかならば、財産価額が相続税の基礎控除（3,000万円+600万円×法定相続人の数）の範囲内に収まり、相続税の申告・納付が不要になるかもしれません。

贈与者は将来に法定相続人となる家族の他、知人や友人、更に法人を受贈者として、双方の合意の下で生前贈与契約を締結できます。

例えば、法定相続人に自分の子供がいた場合、その子供の子供（自分からみて孫）は法定相続人になれません。

しかし、生前贈与ならば可愛がっている自分の孫（ひ孫）に、問題なく財産の贈与が可能です。

生前贈与は自分が贈与したいと思った時から手続きを進められます。

例えば孫ができたタイミングでその親（自分にとっては子供）と贈与契約を結び、養育のための資金を分割して贈与していくのも良い方法です。

家族のライフステージに変化があった際、「自分の生前贈与が家族のために活かされる。」と感じたならば、生前贈与を申し出てみましょう。

将来、法定相続人となる家族へ、生前贈与で公平に財産を贈与していけば、相続トラブルを回避できる可能性があります。

例えば相続人間で遺産分割をする際、相続財産の中には各相続人へ配分しやすい現金の他、分割しにくい不動産もあるでしょう。

とりわけ不便な場所にある不動産は、分割しにくい上に誰も引き継がず、相続人間で押し付け合いとなり、いつまで経っても相続手続きが進まない事態も考えられます。

そこで、不要な不動産は自分の生きている内に売却し、得たお金を家族へ平等に贈与すればトラブルは起きないはずです。

なお、生前贈与で家族に財産を分け与え、相続時に相続財産がわずかならば、遺産分割で揉めるリスクも軽減できます。

生前贈与を行う際に贈与税が発生する可能性もあります。

しかし、贈与税の課税制度ごとに非課税枠（控除額）が用意されており、その範囲内で贈与をすれば受贈者が納税する必要はありません。

こちらでは、「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」の特徴について解説します。

暦年課税とは、受贈者が1年間（1月1日〜12月31日まで）に受け取った贈与額が110万円を超えた場合、110万円を超えた分に対し贈与税が課税される制度です。

暦年課税を利用する場合、取り立てて税務署に届出を行う必要はなく、受贈者は1年間の贈与額が110万円を超えたときに、贈与税の申告・納付をすれば良いだけです。

ただし、受贈者は複数の贈与者から贈与を受けると、非課税枠110万円を超過してしまう可能性があるので注意しましょう。

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫に贈与が行われる際、受贈者である子や孫の選択で利用できる制度です。

受贈者が贈与税の申告期限（贈与の翌年の2月1日〜3月15日）に、贈与税の申告書および相続時精算課税選択届出書等の書類を、納税地の税務署へ提出します。

本制度を利用すれば2,500万円の特別控除が用意されているので、高額な贈与を受けても、特別控除額に達するまで非課税となる点は大きなメリットです。

ただし、特別控除額を超えれば超過分に一律20％の贈与税が課税されてしまいます。 

また、本制度は2,500万円分の課税を、相続発生まで「猶予」される仕組みなので、相続財産の価額に贈与分も加算されてしまいます。

その他、2023年現在では相続時精算課税と暦年課税の併用も認められません。

なお、2024年1月からは相続時精算課税制度と暦年課税の併用が可能となり、特別控除2500万円分に加え、年間110万円までの基礎控除が認められます（令和5年度税制改正）。

暦年課税制度や相続時精算課税制度の非課税枠（控除額）を利用するだけではなく、様々な贈与税の軽減措置が用意されています。

• 贈与税の配偶者控除
• 子や孫への住宅購入資金贈与
• 教育資金の一括贈与
• 子や孫への結婚・子育て資金贈与

そのうち、子や孫への住宅購入資金贈与と教育資金の一括贈与、子や孫への結婚・子育て資金贈与に関する控除制度は併用が可能です。

それぞれの特例制度について解説しましょう。

「贈与税の配偶者控除制度」が利用できます。

本制度は、居住用の不動産を購入する際、夫婦間での贈与が行われたケースで利用できる控除制度です。

暦年課税の110万円の非課税枠とも併用が可能なので、最高2,110万円まで非課税となります。

ただし、本制度には次のような条件があります。

• 婚姻期間20年以上
• 受贈する配偶者が住む不動産かその資金
• 受贈配偶者は受贈した翌年の3月15日までに居住、継続して居住する見込みである

また、同一の配偶者間で、一生に一度のみ適用が可能な点に注意しましょう。

「住宅取得資金贈与の控除制度」が利用できます。

本制度は、親・祖父母から、子や孫の住宅の新築等のため資金贈与を受けたときに利用できる控除制度です。

なお、暦年課税や相続時精算課税制度の非課税枠（控除額）とも併用が可能です。

ただし、質の高い住宅と認定されるには次のような条件があります。

• 断熱性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
• 耐震等級2以上もしくは免震建築物
• 高齢者等配慮対策等級3以上

「教育資金の一括贈与の控除制度」が利用できます。

本制度は、親・祖父母が30歳未満の子・孫の教育資金に充てる目的で、教育資金口座開設をした場合に適用される控除制度です。

なお、暦年課税や相続時精算課税制度の非課税枠（控除額）とも併用が可能です。

ただし、本制度を利用する際は次のいずれかに該当する必要があります。

• 贈与者から信託受益権を取得した
• 贈与者から書面による贈与で取得した金銭を銀行等へ預入した
• 贈与者から書面による贈与で取得した金銭等で証券会社等から有価証券を購入した

「結婚・子育て資金の一括贈与の控除制度」が利用できます。

本制度は、親・祖父母が20歳〜50歳未満の子や孫の結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等で結婚・子育て資金口座開設をした場合に適用される控除制度です。

なお、暦年課税や相続時精算課税制度の非課税枠（控除額）とも併用が可能です。

ただし、本制度を利用する際は次のいずれかに該当する必要があります。

• 贈与者から信託受益権を取得した
• 贈与者から書面による贈与で取得した金銭を銀行等へ預入した
• 贈与者から書面による贈与で取得した金銭等で証券会社等から有価証券を購入した

生前贈与を利用する場合は、事前に確認するべき点が3つあります。

• 場合によっては節税効果が薄い場合あり
• 亡くなる前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象になる
• 税務署に認められないケースもある

それぞれの注意点について解説しましょう。

非課税枠に配慮しつつ、受贈者1人に生前贈与（暦年課税）を行うだけでは毎年110万円以内しか贈与できません。

自分の所有する資産が多い場合は、効率良く財産を減らしていけない可能性があります。

そのため、他の家族や友人・知人も受贈者にして、贈与を行った方が相続税の節税効果は高くなるはずです。

贈与税が課せられるのは基本的に受贈者のみであり、贈与者の1年間の贈与金額に上限はないので、複数の相手と贈与契約を締結できます。

なお、相続時精算課税制度や他の控除制度も利用できるので、所定の条件に合うか内容をよく確認し、申請を検討してみましょう。

基本的に相続開始前3年以内の贈与額分は、生前贈与加算として相続税課税価格へ加えられてしまう点に注意しましょう。

つまり、生前贈与加算に該当すれば相続税の負担が増えてしまうおそれもあります。

生前贈与加算に該当する人は次の通りです。

• 相続や遺贈（遺言による贈与）で財産を取得した人
• みなし相続財産（例：生命保険金等）の受取人
• 相続時精算課税制度の適用した人

ただし、それ以外の人達は相続開始前3年以内の贈与を受けても、その贈与額分は加算されません。

なお、相続開始前3年以内に次の控除制度を利用しても、生前贈与加算対象外となります。

• 贈与税の配偶者控除制度
• 住宅取得資金贈与の控除制度
• 教育資金の一括贈与の控除制度
• 結婚・子育て資金の一括贈与の控除制度

税務署から次の疑いを持たれた場合、贈与者の証言や受贈者が証拠を提示しない限り、贈与税の控除制度が認められなかったり、相続財産として相続税の課税対象になったりします。

• 現金手渡し： 履歴が残らず税務署に贈与税の発生を疑われた場合、110万円以内に贈与額が収まったという証拠の提示は困難。
• 名義預金：受贈者の名義で口座が作成されているものの、贈与者自身が管理している口座。相続財産と判断され相続税の課税対象となる。
• へそくり：自分が渡した生活費等をこっそり家族が積み立てているケース。双方の合意がないため、生前贈与と認められない。

税務署から指摘されるリスクを想定し、生前贈与の際は「贈与契約書」の作成や、履歴等を大切に保管しましょう。そうすれば証拠物として、税務署に提示しやすくなります。

生前贈与・相続の仕組みがいまいちよくわからないという人は、相談窓口を利用し、疑問点や不明点の解消ができます。

こちらでは相談先として

• 市区町村に設置されている相談窓口
• 弁護士や税理士
• 終活サービス会社

をとりあげます。

各市区町村では、生前贈与・相続に関する無料相談窓口を解説しているところが多いです。

窓口の相談員は、基本的に士業専門家（弁護士、司法書士、行政書士等）が、当番制で担当しています。生前贈与・相続の専門知識を有する方々に相談できるので安心です。

各市区町村によって予約が必要な場合もあるので、まずは窓口（担当：生活課等）に問い合わせてみましょう。

士業専門家の事務所へ直接相談も可能です。土日や祝日も相談に応じてくれる事務所があります。相談料は基本的に有料（30分5,000円程度）です。

例えば弁護士には生前贈与・相続でトラブルが起きた場合の対処法や、裁判での紛争解決等の相談が可能です。

その他、司法書士なら相続登記の申請等の相談、行政書士なら相続人や相続財産の調査等の相談ができます。

贈与税・相続税の計算方法や申請方法がわからなければ税理士に相談しましょう。

終活サービス会社は、終活に関するトータル・サービスを提供する事業者です。

サービス内容は、死後の事務手続きや遺品整理の代行等の他に、生前贈与・相続の相談も含まれている場合があります。

なお、こちらの相談サービスを利用する場合も、提携している士業専門家が相談に対応するはずです。

生前贈与には様々なメリットや控除制度が用意されていますが、いろいろと注意しなければいけない点もあります。

本記事でご紹介した、生前贈与の特徴をまとめると以下の通りです。

• 生前贈与を行えば、相続税の節税や相続人同士のトラブル対策にもなる
• 生前贈与の課税制度によって非課税枠（控除額）や利用条件が異なる
• 贈与税の配偶者控除制度、住宅取得資金贈与の控除制度等の様々な控除制度もある
• 生前贈与には、節税効果が薄くなるケース、亡くなる前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象になる等、注意点もある

生前贈与や相続の方法がよくわからないなら、士業専門家等からのアドバイスを受けながら、慎重に贈与手続きを進めていきましょう。