遺品整理とは？手順・代行業者依頼にかかる費用・注意点を丸っと解説！

故人の葬儀や埋葬が終わったら「ようやくひと安心。」、というわけにはいきません。

なぜなら、個人の遺品を整理したり、遺産分割をどうするか相続人の間で決めたりする等、まだまだ行うべき作業は残っているからです。

故人の遺品を片付けるときや、相続財産を分割する際はいろいろと注意すべき点があります。

そこで今回は、遺品整理の流れや相続財産の手続き、専門業者に頼む場合の費用相場、注意点等を解説します。

遺品整理とは、故人が所有していた品を整理し、故人の住居や部屋をきれいにする作業です。遺品整理を開始する時期は特に決まっていません。

一般的には、故人の四十九日法要や新盆、一周忌、三周忌等のタイミングで、遺品整理をする方々が多いです。

ただし、故人の残した遺品によっては、一周忌、三周忌より前に整理しなければいけない場合もあります。

それは、遺品に相続税が課せられる可能性もあるからです。故人の不動産や預貯金・株券はもちろん、所有していた宝石・美術品・骨董品も現金化できる以上は課税対象です。

遺産総額が基礎控除額（3,000万円 +600万円× 法定相続人の数）を超えてしまうと、基本的に相続人は相続税を納付しなければいけません。

相続税の申告期限は、被相続人の亡くなった事実を知った日の翌日から10カ月以内となります。そのため、遺品整理しながら価値のある物を仕分けした方が良いでしょう。

遺品を整理しつつ、相続財産を調査する流れは基本的に次の通りです。

• ①遺言書の有無を確認
• ②相続人を調査
• ③相続財産を調査
• ④協議の上、遺産分割協議書を作成
• ⑤各種名義変更の手続き
• ⑥相続税を申告

それぞれのステップについて解説していきます。

遺言書は遺品を整理している際に発見される場合が多いです。

故人の自室で発見される遺言書は、自筆証書遺言（基本的に自筆で作成する遺言）または秘密証書遺言（遺言の内容を秘密にできる遺言）です。

いずれの遺言も、発見したら遅滞なく家庭裁判所に「検認」の申立てをしなければいけません。検認の手続きを行うのは、遺言書の偽造・変造を防止するためです。

なお、公正証書遺言をみつけても、原本は公証役場が保管しているため、検認は不要です。

相続人は原則として遺言内容に従い、それぞれ遺産を引き継ぎます。

被相続人が遺言書を作成しておらず、相続人達が遺産分割を行う場合は、まず相続人が誰かを調査します。

調査方法は、被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本（除籍謄本）を取得し、記載事項を確認します。なお、戸籍謄本（除籍謄本）は被相続人の本籍地の市区町村役場で取得可能です。

戸籍謄本（除籍謄本）をみれば、配偶者や子供の存在はもちろん、被相続人の離婚歴等もわかります。

たとえ相続人が配偶者と子供の2人だけだと思っていても、被相続人に離婚歴があり、前の配偶者との間に子供がいれば、その子供も相続人に該当します。

調査後に予想外の相続人が判明しても、その人物と連絡を取り、遺産分割協議を行う必要があるのです。

被相続人が遺言書を作成しておらず、遺産がどれくらいあるかわからないときは、相続財産調査を行います。

主に被相続人の財産を調べる方法は次の通りです。

• 土地・建物に関して→不動産全部事項証明書（法務局で取得）
• 金融資産→預金通帳等
• 投資信託→取引残高報告書等（証券会社が交付）
• 株式投資→取引報告書（証券会社が交付）

なお、遺品整理の過程で高価な宝石や美術品等が見つかったら、評価額を鑑定士から鑑定してもらいましょう。

調査した被相続人の財産を一覧表にしておけば、遺産分割の際にとても便利です。一覧表は「財産目録（遺産目録）」と呼ばれています。書式や記載内容は特に法定されていません。

なお、裁判所のホームページでは財産目録（遺産目録）のサンプルが提供されています。こちらをダウンロードして利用しても構いません。

基本的に相続人全員が集まったら、遺産分割協議を行いましょう。

遺産分割を話し合い相続人全員が合意したら、「遺産分割協議書」を作成し、分割内容を明記します。

その後、相続人全員が署名・押印（実印が望ましい）し、それぞれが協議書を保管します。

つまり、遺産分割協議書は1通だけではなく、相続人全員分を用意しなければいけません。

遺言書または遺産分割協議書があれば、様々な相続財産の名義変更が行えます。遺言書または遺産分割協議書があれば、財産を引き継ぐ相続人が単独申請可能です

• 相続登記申請→不動産の名義変更が可能
• 口座解約→被相続人の口座を解約し、相続人の口座に現金が移せる

遺言内容・遺産分割協議内容に従い手続きを進めていきます。

財産調査で相続税の発生が確認できた場合、被相続人の亡くなった事実を知った日の翌日から10カ月以内に申告しなければいけません。

被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に、原則として全ての相続人が共同して作成した申告書を提出します。

ただし、特別な事情があり、共同して相続税申告できない理由があれば、相続人が別々に申告する方法も認められています。

なお、税金の専門家である「税理士」に相続税申告を依頼しても構いません。

遺品整理を迅速に済ませたい、遺品が多くて困っているという場合は次の事業者にサポートを依頼してみましょう。

• 遺品整理業者
• 信託銀行
• 士業専門家（司法書士・行政書士）
• 終活サポート会社

それぞれの依頼先について解説していきます。

相続に関する手続きは行えませんが、故人の遺品の処分に対応する業者です。遺品整理の他、生前整理や特殊清掃も請け負う業者が多いです

主に次のようなサービスが期待できます。

• 適正な遺品・不用品買取、収集運搬
• 遺品の供養
• お部屋の原状回復　等

なお、不用品の処分後、故人が所有していた自家用車の買取・廃車・抹消登録手続き等に対応しているところもあります。

遺品の処分に人手が足りそうもない場合、依頼を検討してみましょう。

故人の遺品は処分してもらえませんが、トータル的な遺産整理業務を行ってくれます。

主に次のような業務があげられます。

• 相続税申告・準確定申告：税務署
• 相続人の確認：市区町村役場
• 相続登記：法務局
• 年金手続き：年金事務所
• 死亡保険請求手続き：保険会社
• 預金の解約：銀行・信用金庫等
• 証券等の相続手続き：証券会社等

被相続人の財産が多い場合は、信託銀行に一括して遺産整理を任せた方が便利です。

司法書士には相続登記を、行政書士には相続人調査・財産調査を依頼できます。

その他、司法書士事務所・行政書士事務所の中には、遺品整理サービスを提供するところもあります。

遺品と不要物の分別や、一般廃棄物処理業者・リサイクル業者に不要物引渡しを任せられます。

身近に司法書士事務所・行政書士事務所があれば、遺品整理に関する業務を取り扱っているか相談してみましょう。

最近では終活サポートサービスを提供する法人や団体が増えています。そのサービスのオプションとして、遺品整理のサポートも含まれている提供会社が多いです。

基本サポートとして不動産・動産の相続のアドバイス、お葬式・埋葬の手配等、いろいろなサービスが受けられます。

ただし、遺品整理だけを個別に依頼できるのか、終活サービスの基本的なプランに追加する形で依頼できるのか、各提供会社によって対応は異なります。

自分が終活をする際、遺品整理の対応をしてくれるかどうか、まずは担当者に質問してみましょう。

遺品整理・遺産整理を事業者に依頼した場合、報酬・手数料を負担する必要があります。

こちらでは、

• 遺品整理業者の費用相場
• 信託銀行の費用相場
• 士業専門家（司法書士・行政書士）の費用相場
• 終活サポート会社の費用相場

それぞれの費用相場を解説していきます。

遺品整理業者の作業費用は、部屋の広さによって料金設定がなされています。

例えば、間取りが1R・1Kであれば作業人数1〜2名・作業時間1〜3時間で約3万〜8万円が相場です。一方、4LDK以上ならば作業人数4〜10名・作業時間6〜15時間で約22万〜66万円が相場です。

基本料金に含まれているサービスは、遺品整理業者ごとに若干異なるものの、不用品の回収・処分、不用品の仕分け、貴重品の捜索、買取品の査定、写真や人形の供養、作業後の清掃等です。

遺産整理に関する費用は「一律〇〇万円」と設定されていない場合がほとんどです。

相続税評価額で算定した遺産整理業務対象財産額（遺産総額）に応じ、約0.3〜1.8%の手数料割合を乗じた金額が目安となります。

例えば、遺産整理業務対象財産額が1億円で、手数料割合が1.8%ならば費用は180万円です。

ただし、最低手数料額を100万円からとなっている等、費用は高額となる傾向があります。

遺品整理業者と同じように、部屋の広さによって料金を設定している場合が多いです。

間取りによって数万円～数十万円かかるとみて良いでしょう。

さらに、士業専門家の専門業務である相続登記（司法書士）、財産調査・相続人調査（行政書士）も依頼すれば、費用負担はもっと多くなります。

終活サポート会社の場合は、遺品整理を非公開としているところが多いです。

ただし、基本的に提携している遺品整理業者が作業を行うため、部屋の広さによって料金が設定されているはずです。

なお、終活プランを契約した際、遺品整理サービスを利用できるケースがほとんどなので、終活の基本サービスも含め数十万円以上が費用相場となります。

相続税の発生する可能性がある場合、相続税には申告期限が法定されているので、遺産整理は期限内に行う必要があります。

もちろん、それに伴い不用品か価値のある遺品かを分ける遺品整理も早めに進めましょう。

こちらでは

• 相続割合は法定相続分を目安にする
• 適切な相続方法を選ぶ
• 手続きの期限を守る

それぞれの注意点を解説していきます。

相続人が複数いると、相続割合で揉めてしまうケースが多いです。

相続人との間で、どのように遺産分割してよいかわからないなら、民法に明記されている法定相続分（民法第900条）を参考に、それぞれの相続割合を決めましょう。

法定相続分とは各相続人の取り分として法律上定められた割合です。

例えば、配偶者と子供が相続人ならば配偶者1/2・子供1/2、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人ならば配偶者3/4・子供1/4と、被相続人との関係により法定相続分は異なります。

もちろん、相続人全員の合意により、相続人全員が均等に分けると決めても構いません。遺産分割協議書を作成すれば、合意したという記録が残ります。

柔軟に相続方法を選べば、相続トラブルが起きるリスクも軽減できます。相続人の人数・事情を考慮し、全員が納得できる相続方法を選びましょう。

もちろん、遺言書があれば原則として遺言内容に従い、相続人が遺産を引き継ぎます。しかし、遺言内容に納得いかない相続人がいれば、相続人全員の合意で遺産分割協議で分けても構いません。

また、相続人が1人または2人のみなら、法定相続分で分ければ問題は起きないはずです。一方、相続人が多いなら遺産分割協議で話し合いをします。

相続税の申告期限を守らないと、税務署からペナルティを受ける可能性があります（無申告加算税：5%〜15%程度・延滞税：原則7.3%）。

相続税が発生する場合、被相続人の亡くなった事実を知った日の翌日から10カ月以内に、税務署へ申告・納税をしなければいけません。

遺産分割協議が整わないから等の理由で、申告期限の延長はできないので注意しましょう。

ただし、例えば次のようなケースの場合は延長が認められる可能性もあります。

• 一部の相続人が海外赴任中で、遺産分割協議が実施できていない
• 不在者財産管理人の選任申立をしている　等

なお、不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加する人です。

やむを得ない理由がある場合、申告期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署へ提出すれば、期限を延長してもらえます。

遺品整理は遺族がコツコツ作業をすすめても構いません。しかし、遺品が多いならば業者のサポートも検討してみましょう。

本記事でご紹介した、遺品整理に関する内容をまとめると以下の通りです。

• 遺品整理を行う期限は基本的にいつでもよいが、遺品に相続税の課税対象となる財産（宝石・美術品等）が多い場合、相続税申告期限までに不用品と仕分けをしておいた方が良い
• 遺品整理・遺産整理を行う場合、専門の事業者に任せると円滑な作業が期待できる
• 遺産分割の際は、相続人の間でトラブルにならないよう配慮する

年代物のレコードやブリキのおもちゃ等、不用品かどうか判断が難しい遺品も存在します。このような遺品は親戚や被相続人の友人・知人に、「形見分け」として譲るのも良い方法です。