知っておくべき生前贈与5つの注意点！困った時の相談先もご紹介

自分の死後、残された家族に相続税がかかりそうだ、と不安を抱く方々は多いはずです。

所有している土地や建物、預金等の資産が多いと、相続が開始されたとき、相続人の支払う相続税が多額になる可能性もあります。

相続税の負担を軽減するには、自分が生きているうちに、所有する資産を減らしていく必要があります。

相続税を節税する方法として「生前贈与」があげられます。ただし、自分が生前贈与を進める際、気を付けなければいけない点はいくつかあります。

そこで今回は、生前贈与とはどんな方法なのか、生前贈与の注意点や困ったときの相談先等について解説します。

この記事を読み終えたら、生前贈与の最適な贈与方法や贈与契約書を作成する必要性も、よくおわかりになるはずです。

生前贈与とは、被相続人が生きている間に財産を相続人等へ贈与する方法です。

被相続人が現金・株券のような金融資産、土地・建物を多く所有していると、相続が開始された際、多額の相続税が相続人に課せられるおそれもあります。

しかし、被相続人が生きている内に財産を分け与えていけば、相続税の負担軽減が図れます。また、贈与する時に基礎控除をうまく使えば、贈与税もかかりません。

生前贈与は基本的に「暦年贈与」という形で、贈与者（被相続人）が受贈者（贈与を受ける人）に贈与していきます。

暦年贈与とは、自分が保有する財産を、年単位での時間をかけて少しずつ贈与する方法です。受贈者は誰でも良く、将来相続人なる人、友人・知人等でも構いません。

暦年贈与には基礎控除があり、受贈者1人につき1年間（1月1日〜12月31日）の贈与額が110万円に収まるなら、受贈者に贈与税はかかりません（基礎控除）。

例えば、今年中に贈与者が受贈者へ贈与する場合、次のように贈与すれば、基本的に贈与税はかかりません。

• 贈与者（父親）：贈与額200万円→受贈者（子A・B）：子A100万円・子B100万円、それぞれ110万円以下なので非課税
• 贈与者（両親）：父親60万円・母親50万円→受贈者（子1人）：子110万円、両親の贈与額が110万円以下なので非課税

生前贈与（暦年贈与）を行う場合、税務署のような公的機関で手続きは不要です。自分が相続税対策をしようと思ったら、贈与を開始して構いません。

ただし、生前贈与（暦年贈与）には5つの注意点があります。

• 名義預金は贈与にはならない？
• 連年贈与について
• 亡くなる前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象になる
• 現金手渡しは贈与にならない？
• へそくりは生前贈与にならない？

それぞれの注意点について解説しましょう。

贈与者の現金・預金を受贈者の口座に振り込めば、振込金額・日付が通帳に記載されるので、生前贈与した事実を証拠として残せます。

ただし、その振込をした口座は、受贈者によってしっかり管理されている必要があります。

例えば、贈与者（親や祖父母）から受贈者（子や孫）の口座に振り込んだ場合、税務署から「名義預金ではないか？」と疑われると、その預金が相続税の課税対象となるおそれもあるのです。

名義預金とは、被相続人となる贈与者が生前に、自分の配偶者や子供・孫名義で作成し、財産を遺している預金口座です。

贈与者である親や祖父母が口座に現金を振り込んでも、その口座の贈与者自身が管理していて、受贈者である子供・孫が自由にお金を使えない状態ならば、「名義預金」とみなされてしまいます。

生前贈与には暦年贈与という方法だけではなく、よく似た「連年贈与」と呼ばれる方法もあります。

連年贈与は暦年贈与と同様、年単位で時間をかけて少しずつ贈与する方法です。しかし、毎年計画的に贈与する方法をとり、贈与額は毎年同額、贈与時期も毎年同じです。

連年贈与も基本的に、受贈者の受け取った金額が1年あたり110万円を超えなければ、贈与税は課税されません。

ただし、税務署が「贈与者には、当初からまとまった金額（例：1,000万円の現金等）を、受贈者に贈与する意図があった。」と判断した場合、贈与額の全額が課税対象となります。

生前贈与で毎年、贈与税が課されないよう少しずつ家族等へ贈与してきたとしても、注意しなければいけない場合があります。

それは贈与者が死亡（相続開始）すると、相続財産の価額に贈与額が上乗せされてしまうケースもある点です。

基本的に相続開始前3年以内の贈与額分は、生前贈与加算として相続税課税価格に加えられます。

ただし、生前贈与も含めた課税価格の合計額が、相続税の基礎控除額（3,000万円+600万円×法定相続人の数）以内であれば、相続税の申告・納税は不要です。

贈与者が受贈者に現金を手渡す方法なら、面倒な手続きは不要なので楽な贈与方法といえます。

しかし、手渡しの場合は「受贈者に現金を手渡した。」という履歴が残らない点に注意しましょう。 

 履歴がなければ税務署に贈与税の発生を疑われた場合、受贈者が1年間に受け取った贈与額は110万円以内だった、という証拠が提示できなくなります。

なるべく贈与者は現金手渡しではなく、履歴が残る銀行振込にした方が無難です。

ご家庭によっては、夫が家族の生活費を負担しているものの、実際は妻名義の口座で管理しているというケースもあるでしょう。

このケースでは、もとは夫のお金なのですが、残った生活費は妻の「へそくり」として積みあがっていく場合があります。

生前贈与は贈与者と受贈者の合意で成立するので、双方の合意がないへそくりは生前贈与とはいえません。

へそくりの場合も税務署から名義預金とみなされ、相続税の課税対象となるおそれがあります。

生前贈与を行うには、贈与者と受贈者が合意し、契約を締結する必要があります。

その際に、取り決めた契約内容（どんな財産を贈与するのか、その数量や金額等）を明記した書面があれば安心です。

こちらでは贈与契約書とは何か、作成する際のポイントについて解説しましょう。

贈与契約は贈与者と受贈者との口約束でも成立します。しかし、口約束では当事者が契約内容を忘れてしまい、取り決めに基づいた契約が履行されない可能性もあります。

そのため、贈与契約書として契約内容を書面化しておけば、契約通りの贈与が可能です。

また、贈与契約書を作成するのは、税務署等の調査があった際、他の書類と共に、贈与があった事実を客観的に示す証拠ともなるからです。

贈与契約書は次の流れで作成していきます。

1. 贈与者が誰にどんな財産を贈与するのか良く検討する
2. 贈与者が受贈者に同意を得る
3. 贈与契約書を作成する
4. 契約内容を双方が確認し、問題なければ契約成立
5. 贈与契約書に双方が署名・押印する
6. 贈与者は契約書に従い贈与をする

贈与契約書の作成方法は法律で厳格に決められておらず、書式は自由なので手書きやパソコンで作成できます。

契約書は贈与者と受贈者が一緒に話し合って作成しても良いです。また、贈与者が作成した契約内容に受贈者が納得すれば、署名・押印に進んでも構いません。

贈与契約書に記載する内容は自由ですが、最低限押さえておくべきポイントはあります。贈与契約書の作成では主に5つのポイントがあります。

• 契約書に記載が必要な事項
• 数字は正確に記載する
• 2通作成し署名・押印する
• 贈与財産の内容によって収入印紙が必要
• 贈与の度に作成し、贈与額や贈与する日も工夫する

それぞれのポイントについて解説しましょう。

贈与契約書には後日当事者間でトラブルとならないよう、取り決めた契約内容を明記しておきましょう。

• 誰が誰に贈与を行うか：贈与者・受贈者の住所と氏名を明記する
• どんな物を贈与するのか：贈与する財産の情報を明記する
• いつ贈与するのか：贈与契約締結日および贈与の履行日を明記する
• どのように贈与するのか：贈与方法について明記する

上記の他、契約当事者間で特に盛り込んでおくべき事項があるなら、忘れずに明記しておきましょう。

贈与契約書に明記する数字は、贈与物が現金の場合「約100万円」ではなく「100万5,000円」、不動産なら「約150㎡」ではなく「150・35㎡」と正確に記載しましょう。

税務署の調査がある場合は、契約書に従い実際に贈与されたかどうかがチェックされます。数字が曖昧だと証明力に欠けてしまうので注意しましょう。

なお、贈与契約書を手書きで作成した場合は、改ざんのリスクもあります。改ざんされないようにするため、現金・数字は大字（だいじ）で記載しましょう。

例えば100万円を贈与するならば、「金壱百萬円也」と記載します。

贈与契約書は2通作成し、契約内容を双方が確認したうえで、署名・押印をします。

押印の際は認印でも契約自体に影響が無いものの、契約書に信憑性を持たせるという意味で「実印」を使用した方が良いでしょう。

更に、2通の贈与契約書が「対（つい）」であると証明するため、割印も行いましょう。作成後は1通ずつ契約当事者が大切に保管します。

土地や建物の贈与契約書には、収入印紙を契約書に貼付する必要があります。ただし、贈与は無償で行われ、取引金額の記載が不要なので収入印紙の額は200円だけで済みます。

なお、現金や株式等を贈与する場合、収入印紙の貼付は不要です。

贈与契約書は、贈与する度に作成しましょう。また、贈与額や贈与日も昨年とは違う内容にすれば安心です。

これは税務署から「定期贈与」とみなされないようにするための工夫です。

定期贈与も契約書を作成する点は同じですが、一定期間にわたり、一定の財産を贈与する契約を取り交わします。

例えば「6年間にわたり毎年90万円を贈与する。」という定期贈与契約書を作成し、贈与を開始するケースが該当します。

つまり、定期贈与は総額540万円の贈与があらかじめ決まっていて、540万円を分割して毎年90万円ずつ贈与する契約です。

税務署から定期贈与を疑われると、贈与開始時にすべての金額（540万円）を贈与する意思があったと判断され、一括して贈与額の合計額に対し、贈与税が課せられてしまいます。

しかし、毎年贈与契約書を作成し、贈与額や贈与日もバラバラなら、定期贈与とはみなされないはずです。

生前贈与は将来相続人となる家族以外にも適用されます。例えば、被相続人に子供がいれば、子供が相続人となり孫は相続人になれません。

しかし、被相続人は生前に贈与者として、孫に財産をコツコツ贈与していけます。

また、孫は相続や遺贈で財産を取得しない等の事情があれば、贈与者の死亡する3年以内に孫への贈与があっても、相続財産の価額に加算されません。

孫に生前贈与をすれば、生前贈与加算の対象にならないケースがあるので、相続人へ重い相続税が課されるリスクも軽減できるはずです。

生前贈与・相続の悩み・気になる点があるとき、相談を受け付けてくれる窓口はいろいろと存在します。

こちらでは相談先として

• 市区町村に設置されている相談窓口
• 弁護士や税理士
• 終活サービス会社

をとりあげます。

各市区町村では、生前贈与・相続に関する無料相談サービスを実施しているところが多いです。

窓口の相談員は、概ね地域の士業専門家（弁護士、司法書士、行政書士等）が、当番制で担当しています。

各市区町村によって、相談可能日（例：平日のみ等）や相談時間（例：9時〜17時まで等）も決まっているので、まずは窓口（生活課が主に担当）へ問い合わせてみましょう。

士業専門家の事務所へ直接相談するのも良い方法です。士業専門家にはそれぞれ得意分野があります。

• 弁護士：生前贈与・相続でトラブルが起きた、裁判での紛争解決等の相談
• 司法書士：相続登記の申請等の相談
• 行政書士：相続人や相続財産の調査等の相談
• 税理士：贈与税・相続税制度等の相談

相談料は基本的に30分5,000円が目安となります（なお、初回相談無料の事務所あり）。

終活サービス会社とは、終活に関するトータル的なサービスを提供する事業者を指します。

サービス内容は、死後の事務手続きや遺品整理の代行、エンディングノート・遺言書作成のアドバイス等、多岐にわたります。

そのサービスの一つとして、生前贈与・相続の相談サービスを用意している場合があります。終活を進める際、生前贈与・相続に関しても担当者へいろいろと質問できるかもしれません。

生前贈与は相続税の負担を権限する方法として役立ちますが、いろいろと注意しなければいけない点もあります。

本記事でご紹介した、生前贈与の注意点をまとめると以下の通りです。

• 生前贈与の方法を誤ると名義預金とみなされ、相続税の課税対象となる場合がある
• 亡くなる前3年以内の生前贈与は、基本的に相続税の課税対象になる
• 現金の手渡しは履歴が残らず、へそくりは生前贈与にならないので注意が必要

生前贈与の際は、贈与契約書を作成し、贈与した履歴があれば、税務署の調査を受けても、証拠として提示が可能です。

生前贈与の方法がよくわからないなら、士業専門家等からのアドバイスを受けつつ、慎重に手続きを進めていきましょう。