【おひとりさま高齢者】孤独死を防ぐための対策やサービスをご紹介

おひとりさま高齢者とは、配偶者がいないまたは既に先立たれた、同居の子どもや兄弟姉妹がいない一人暮らしの高齢者を指します。

おひとりさま高齢者の深刻なリスクとしてあげられるのが「孤独死」です。家族がいないので、高齢者の異変に周囲がなかなか気付かず、自宅で亡くなってしまうケースが数多く存在します。

そのため、高齢者本人がなるべく元気で判断能力のあるうちに、孤独死に関しての対策を講じていく必要があるでしょう。

そこで今回は、おひとりさま高齢者の現状や孤独死の発生しやすいケース、孤独死を防ぐ対策や利用できるサービスについて解説します。

おひとりさま高齢者でも健康な方々はたくさんおられます。しかし、歳を重ねるにつれ判断能力や体力、身体機能は次第に衰えていきます。

「自分は健康だから孤独死などしない。」という油断は禁物です。

そもそも孤独死は高齢者だけのリスクでないものの、孤独死に占める高齢者の割合は6割近くとなっています。

日本少額短期保険協会「孤独死対策委員会」の報告によれば、孤独死の全体数6,727人のうち3,982人（約59%）が60歳以上です（調査対象期間：2015年4月～2022年3月までの孤独死のデータ）。

男女に分けて詳しい割合をみてみましょう（年齢不明者除く）。

(1)男性の孤独死の人数・割合

男性と女性とでは孤独死の割合は5倍近く差があり、孤独死の高齢者の割合は男性60～69歳・女性70〜79歳で最も多くを占めています。

おひとりさま高齢者の場合、60〜69歳と比較的若い方々の孤独死率が高い点に注目し、早期に孤独死対策を進める必要があるでしょう。

おひとりさま高齢者は80歳以上の方々よりも、60〜69歳と比較的若い方々の孤独死率が高くなっています。孤独死の原因を把握し、早めの対策を行う必要があります。

こちらでは孤独死が発生しやすいケース、そして孤独死で困る事態について解説しましょう。

孤独死の発生しやすい状況として次の4つがあげられます。

• 万一の事態や日ごろの健康管理に不安がある
• 経済的な困窮
• 社会的孤立
• 高齢男性である

それぞれのケースについて取り上げます。

おひとりさま高齢者は1人で生活しているため、健康な状態ならば、誰にも気を遣わず自分のペースで生活が送れます。

しかし、体調の急変があれば基本的に自分で対応しなければいけません。

不幸にも自宅で転倒したり、階段から転落したりして大ケガを負ってしまった場合、他の方々に助けを求められず、そのまま亡くなってしまうというケースがあります。

一方、自宅のバリアフリー化でケガのリスクを抑えたとしても、持病や日頃の健康管理ができていないときは要注意です。

持病の悪化や予期せぬ病気の発症で、衰弱死または突然死する可能性があります。

高齢者になると年金収入しか得られない方々が多いかもしれません。預金があれば介護サービスや、健康的な食生活を送れるものの、経済的に余裕がない人は要注意です。

住居に冷暖房機器がない、食生活が偏ってしまう、介護サービスが受けられないという場合、健康に影響が出て身体機能も低下し、寝たきりの生活になるリスクが想定されます。

そうなると、離れて暮らす親族や近所の方々に助けを求められなくなり、孤独死するおそれが増加します。

他人とあまり接しない生活ならば、誰にも気兼ねせず、自分の趣味に没頭できるはずです。

しかし、離れた親族と電話連絡をとっていない、頻繁に会う友人や知人がいないと、自宅にひきこもる生活が常態化してしまうかもしれません。

ひきこもる生活が長引けば、生きがいを無くすばかりか、生活環境や健康状態の悪化を自力で改善できないリスクがあります。

他人とあまり接しない生活を好んでも、定期的に外出し気分転換や身体を動かさないと、寝たきりになる事態が考えられます。

おひとりさまの高齢男性でも、健康や食生活に気を付けている方々は多いです。

しかし、孤独死対策委員会の報告では、男性の孤独死の割合は女性の場合と比較し5倍となっています。

明確な理由は判明していないものの、身の回りのことを妻に任せていた男性がおひとりさまになった場合、食事のバランスや生活のリズムが乱れがちになってしまう可能性はあります。

孤独死が発生すると、孤独死した本人だけではなく関係者に重大な影響を及ぼします。

こちらでは孤独死した本人による影響、親族・関係者への影響に分けて説明しましょう。

変わり果てた遺体で発見されるリスクが高くなります。

親族と疎遠である、地域の住民との交流がない、介護スタッフ等の定期訪問もない、という状況で孤独死した場合、その発見がかなり遅れる可能性はあるでしょう。

夏場に孤独死すれば遺体の腐敗は進行し、異臭の発生や無残な姿となり果てるおそれがあります。

また、身寄りがなく、ご遺体の引き取り手がいないならば、地方自治体が火葬をして、遺骨を一時的に保管後、合祀・合葬されます。

自分の望む葬儀や埋葬方法では供養してもらえない場合があるので注意しましょう。

孤独死した遺体の発見者が日ごろから死体を見慣れていない親族・関係者ならば、凄まじい腐臭や本人の変わり果てた姿に驚愕し、深刻な精神的ショックを受けるかもしれません。

また、賃貸住宅でおひとりさま高齢者が亡くなった場合、身寄りがなければ、大家さんに大きな経済的負担となる可能性があります。

遺体から流れ出た体液等の清掃、室内の脱臭・消臭、害虫駆除等、数十万円を超える多額の費用がかかってしまいます。

周囲の方々に多大な影響を及ぼす点も十分考慮しましょう。

孤独死をすれば高齢者本人の尊厳が守られず、自身の望む葬儀や埋葬を行えない可能性があります。また、周囲の方々にも多大な迷惑をかけてしまいます。

そのため、孤独死を防ぐ次のような対策について検討してみましょう。

• 民間の見守りサービスを利用する
• 見守り機能のついた家電を利用する
• 各市町村の制度・サービスを利用する
• 近所の人と交流をもつ
• 何らかのコミュニティに属する
• 介護施設に入所する

こちらでは、それぞれの対策を解説していきます。

有料となりますが、民間会社の見守りサービスを活用してみましょう。

介護関連の事業者だけではなく、幅広い業種で次のような見守りサービスを実施しています。

• 警備会社と自宅のセキュリティに関する契約をすれば、高齢者の緊急通報を付け24時間体制で駆けつけるサービスがある
• 定期に自宅訪問を行う配置薬の会社が、薬の補充の際に安否確認をする
• 配食サービス（例：高齢者・要介護者用の宅配弁当）の際、スタッフが見守りをする
• 電気、水道、ガス事業者がメーターの使用量の変化で高齢者を見守る

なお、賃貸住宅を扱うUR都市機構では、「高齢者向け優良賃貸住宅」を提供しています。

こちらでは高齢者が利用しやすいよう室内のバリアフリー化をしているほか、万一の場合（事故、急病、負傷）、提携警備会社に通報できる「緊急時対応サービス」が24時間利用可能です。

このように他業種で連携したり、地方自治体とも協力したりしながら、孤独死を防ぐ取り組みが行われています。

全く身寄りがないわけでなく、離れた家族や親戚がいれば、見守りツールを活用する方法もあります。

自宅にカメラやセンサー等を設置する方法の他、家電の見守り機能（炊飯器や湯沸し器の利用の頻度、冷蔵庫の開閉等による確認）、スマートフォンのアプリ等で見守りを行えます。

ただし、高齢者本人がプライバシーを守りたい、四六時中監視されるような見守りツールは嫌だと感じたら、見守り機能の付いた家電の利用を検討しましょう。

孤独死は地域の重大な問題と受け止め、各市区町村ではさまざまな取り組みを行っています。

各市区町村の相談対応だけではなく、警察や民生委員、ボランティア、NPOのような団体と協力し見守り活動等を実施しています。

具体的な活動は次の通りです。

• 市区町村職員の電話や訪問による安否確認
• 警察、民生委員等の協力による安否確認
• 高齢者に貸与した見守り機器で危険情報を確認
• 市区町村主催のコミュニティで、高齢者間ふれあい・交流の促進　等

なお、最近では市区町村の中で「孤独死防止通報制度」を設けているところもあります。

こちらは、ライフライン事業者や配達事業者と協定を結び、検針員や配達員が「新聞、郵便物等が貯まっている」「洗濯物が数日間干したままになっている」等の異変を発見したとき、市区町村に通報してもらう制度です。

高齢者が見守りサービスを望むなら、まず「地域包括支援センター」を訪問し、担当者と見守りに関する話し合いを行ってみましょう。

地域包括支援センターとは、地域の見守り総合相談窓口です。こちらで有益なアドバイスや、サービスを案内します。

地域包括支援センターの所在地については、厚生労働省ホームページ「介護事業所・生活関連情報検索（介護サービス情報公表システム）」で気軽に検索が可能です。

近所との交流を持てば、孤独死のリスクを軽減できる場合があります。

毎日定時に近所の方々と顔を合わせ、挨拶する程度でも孤独死対策に役立ちます。

例えば、毎日、朝になれば自宅前の掃除をしていた人が、いきなり数日間掃除をしなくなったら、不審に思い近所の方々の誰かが自宅を訪問してくれたり、市区町村窓口に相談してくれたりする場合もあるでしょう。

地域コミュニティに所属すれば友人や知人ができて、自宅を訪問してくれる人が多くなるかもしれません。

コミュニティとは、日常生活でのふれ合いや共同活動、共通の経験を通して、連帯感や信頼関係を築きつつ、友人や知人をつくったり、自分たちの力で自主的に住み良くしていったりする組織を指します。

地域コミュニティにはいろいろな組織が存在します。

• 町内会や自治会
• 老人クラブ
• 地区自治協議会
• 福祉推進協議会
• 青少年健全育成会　等

公益性が強いコミュニティもあれば、趣味を同じくする高齢者の憩いの場となるコミュニティもあります。どんなコミュニティに入会するかは、自分のニーズに合わせて選びましょう。

コミュニティへの参加は自らの生きがいとなる他、友人・知人とのつながりにより孤独死を軽減する効果が期待できます。

おひとりさま高齢者が介護施設に入所できれば、身体機能や判断能力が著しく衰えても、介護スタッフの手厚いサポートが受けられて安心です。

ただし、介護施設側と契約する際は、身元引受人や身元保証人等をたてる必要があります。

身元引受人等になってくれる親族が誰もいない場合、身元引受（保証）サービスを提供する事業者の利用について検討しましょう。

一方、高齢者本人が介護施設の入所まで必要ないと感じていたら、在宅サービスや通所サービスを利用しても構いません。

おひとりさま高齢者が元気で判断能力のあるうちに対策を講じていれば、孤独死のリスクを軽減できます。

本記事でご紹介した、孤独死に至るケースや予防策をまとめると以下の通りです。

• おひとりさま高齢者が健康管理を十分行っていない、経済的に困窮している、社会的に孤立している等のケースで孤独死が発生しやすい
• 孤独死が発生すると、孤独死した本人のみならず関係者にも重大な影響を及ぼす
• 民間の見守りサービスや各市町村の制度・サービスの利用、コミュニティへの参加等で孤独死のリスクを軽減できる

おひとりさま高齢者だけで孤独死の対策を行うより、お住まいの地域に設置されている地域包括支援センターへ相談し、アドバイスを受けましょう。

見守りに関する対応や、地域のコミュニティ参加等、いろいろな情報が収集できます。