認知症の方の自宅介護を徹底解説！心得や介護疲れを軽減する方法もご紹介

家族が認知症になっても、なるべく自宅で介護をしたいと考える方々は多いかもしれません。

しかし、認知症となった家族の介護は忍耐と肉体労働を伴います。介護をする側が、心労や肉体疲労で倒れてしまう事態にも気を付ける必要があるでしょう。

認知症となった家族の在宅介護を望む場合、事前に認知症特有の症状や対応方法を把握しておいた方が無難です。

そこで今回は、認知症となった家族の在宅介護を行う注意点、介護をする側のストレスの軽減方法等について解説します。

認知症等になった家族を自宅で介護する「在宅介護」が該当します。

認知症となった家族（高齢者）の食事や排泄の介助（オムツ換え）、入浴の介助等を自宅で行います。

介護者（介護する側）がすべての介護を行うご家庭はあるものの、訪問・通所型の介護サービスと組み合わせる介護方法が一般的です。

在宅介護のメリットは要介護者（介護を受ける側）が、これまで通り住み慣れた自宅・地域で生活できる点があげられます。

認知症となった家族は単に判断能力が低下したという症状だけでなく、次のような問題行動を起こす可能性があります。

• 暴言・暴力
• 徘徊
• 被害妄想

それぞれの症状への対応方法について説明しましょう。

認知症になった本人が感情をコントロールできなくなる可能性もあります。

認知症となった人に必ずあらわれる症状とはいえませんが、軽度な刺激に対し激高したり号泣したり、逆に大笑いするような症状が出るかもしれません。

感情のコントロールができなくなった本人から、暴言・暴力を受けるリスクもあります。

原因としては、認知症が進行して前頭葉部分が大きく萎縮したケースや、治療薬の副作用のケース等があげられます。

対応方法は主に以下の通りです。

• 通所介護等を利用し、物理的・感情的な距離を置く
• 力で対抗しない
• うまく注意をそらす

感情のコントロールのきかない本人に力で対応しては、ますます暴言・暴力が激しくなるおそれもあります。

激高している本人の気をそらす（例：テレビをつける、食べ物で気を引く等）、冷静な対応が必要です。

また、自宅だけで介護を行わず、通所介護（デイサービス）を利用し、本人と物理的・感情的な距離を置くのも良い方法です。

通所介護（デイサービス）を利用している間に、本人も介護者も冷静さを取り戻す効果が期待できます。

徘徊とは認知症となった本人が屋内・屋外を歩き回る症状です。主に認知症の中核症状（脳の働きの低下で直接的に起こる記憶障害）の影響で現れる、行動・心理症状の一つといわれています。

外に出て徘徊すると交通事故や踏切事故を起こす可能性があり、本人の行動に気を遣う必要があります。

徘徊を無理にやめさせるのは逆効果となる場合があるので、以下のような対応方法を取りましょう。

• 徘徊のタイミングを把握
• GPSの活用
• 衣服・持ち物に名前・住所等をつける
• 生活のリズムを整える
• 地域包括センター等に相談する

本人が徘徊する時間帯を早期に把握できれば、それに合わせて見守る事が可能です。

家族が気付かないうちに外で徘徊しても、本人の衣服や所持品にGPSを取り付ければ居場所がすぐに確認できます。

また、衣服・持ち物に名前・住所をつければ、警察官が保護した際、どこの誰かがすぐにわかります。

なお、毎日同時刻に起床・就寝・食事をさせ、生活のリズムを整えると徘徊の抑制も可能です。

その他、地域の見守り総合相談窓口である地域包括センターに相談すれば、「徘徊SOSネットワーク」の利用登録を行えます。

徘徊SOSネットワークとは、市区町村役場が主体となり、地域の人々や団体、介護保険事業所等と協力し、行方不明となった高齢者を早期に発見し保護する仕組みです。

被害妄想とは、認知症となった本人が「誰かから物を盗られた」「みんな私を邪魔な存在と思っているんだろう！」と言い出す症状を指します。

原因としては認知機能の低下の他、自分の無力感や症状に対する苦しみ、周囲への不満の蓄積があげられます。

対応方法は主に以下の通りです。

• 本人の主張を否定しないで聞き、共感する
• 距離をとり、本人に気分転換してもらう

認知症となった本人の被害妄想を否定してしまうと、更に本人を追いつめる結果となります。そのため、本人の主張に共感し耳を傾ける姿勢が求められます。

また、介護者が本人と適度に距離をとれば、本人の良い気分転換になるでしょう。

通所介護（デイサービス）を利用すれば、認知症となった本人の症状に応じた介護サービスを受けられ、介護施設では本人が夢中になれるイベント等を見つけられるかもしれません。

本人の夢中になれるもの（例：手芸等）があれば、達成感や自尊心を得られ、症状の軽減にも役立ちます。

在宅介護を行う場合、認知症となった本人だけではなく介護者も、負担や不安を感じやすくなるかもしれません。

介護者は次のような限界や支障が出てしまう可能性に注意しましょう。

• 肉体的な限界
• 精神的な限界
• 仕事をやめなくてはいけない

それぞれのケースについて説明します。

認知症となった本人が歩行障害や寝たきりの場合、徘徊のようなリスクはまずありませんが、介護者は食事や排せつ・入浴の介助等で膝や腰を痛めるリスクに注意しましょう。

介護者は次のような疲労や限界を感じるかもしれません。

• 腰や膝が痛くて、介護者本人も風呂やトイレ移動に苦労する
• 夜間の対応で睡眠不足
• 疲労困憊し疲れ果てて寝込む

介護者一人だけでは在宅介護が難しい点を考慮し、介護事業者による訪問介護の利用を検討してみましょう。

介護サービスを利用しないと、介護者は常に認知症となった本人へ気を配る必要があります。

そのため、介護者は次のような疲労や限界を感じるかもしれません。

• きつい介護生活をいつまで続ければ良いのか悩み、絶望を感じる
• 常に介護の不安が頭から離れない
• 自分の時間が全くなく、趣味やレジャーを楽しめなくなった

このような場合は、通所介護（デイサービス）を利用したり、介護施設への短期入所生活介護（ショートステイ）を利用し、介護負担の軽減や気分転換を行いましょう。

在宅介護で仕事をする時間がなくなり、離職しなければいけないケースもあるでしょう。

ただし、介護に専念するため離職すると次のような事態が懸念されます。

• 経済的に困窮してしまう
• 公的介護保険のサービス費用が払えず、介護者の介護負担が更に増す
• 復職したくても、就職先がなかなかみつからない

離職前に、まず介護と自分の仕事の両立をよく検討してみる必要があります。

認知症となった家族を在宅介護する場合、次の点に十分配慮しましょう。

• 自尊心を傷つけない
• 認知症の方を理解する
• 介護者自身の健康を大事にする

それぞれのポイントを説明します。

認知症となった本人は判断能力の低下の他、感情のコントロールもうまくできない可能性があります。

在宅介護する場合は本人の状況を踏まえ、自尊心を損なうような言動は避けましょう。

例えば認知症となった親が発症前は潔癖でしっかりとした性格だった場合、子ども達は現在の認知症となった親とのギャップに苦しみ、思わず「なんでこんなことすらできないの！」「言うことを聞いて！」と、親を責めてしまうかもしれません。

これでは、本人の症状が悪化するおそれもあります。本人の心の安定を図るため、介護者には冷静な対応が求められます。

認知症となった本人の状況をきちんと把握しましょう。

例えば、被害妄想が目立つのか、深夜徘徊の危険があるのか、本人の症状を理解すれば最善の対応について検討しやすくなります。

また、ケアマネジャーに相談する際も、どんな点に不安を感じるのか正確に伝えられ、的確なアドバイスが期待できます。

在宅介護を継続すると、認知症となった本人のケアばかりを優先し、介護者自身の健康は後回しにしがちです。

しかし、介護者が疲労で倒れてしまうと、在宅介護の継続は難しくなります。

介護者自身も身体を休め、気分転換しなければいけません。そのため、通所介護や短期入所生活介護を利用し、自分の時間を持てるように心がけましょう。

在宅介護は長期化する可能性があります。認知症となった本人を全て介護者自身が介護するのは困難です。

次のように介護負担を軽減する心がけも必要です。

• 溜め込まずに自分も大切にする
• 周りと比較しない
• 周りを頼る

それぞれの心得について説明します。

介護者にも気分転換が必要です。

介護者の中には認知症となった本人（要介護者）を、通所介護や短期入所生活介護で介護施設に預けてしまうと、「介護を放棄してしまった。」と後ろめたさを感じる人がいるかもしれません。

しかし、介護者は介護から離れ身体の休養や、旅行やレジャーを楽しみ、精神的なゆとりを得る必要があります。

介護者である自分をときどき労われば、介護のストレスを軽減し、認知症となった本人の介護をポジティブに行えることでしょう。

自分の家庭とお隣さんを安易に比較するのは避けましょう。

「お隣さんはご両親を高級老人ホームへ入居させた。」「自分の家は訪問介護サービスの利用がやっとだ。」と嘆く方々がいるかもしれません。

しかし、介護サービスは各家庭の事情に合わせて、無理なく利用するべきです。

大切なのは認知症となった本人の身体機能や健康の維持です。そのため、在宅介護でできる限りの対応を、ケアマネジャーと相談しながら進めていきましょう。

認知症となった本人と同居の家族が何人もいるならば、家族の誰か一人に介護を任せるのではなく、時間に余裕のある人が介護を率先して行うべきです。

同居の家族が互いに協力し合えば、家族の誰か一人に過剰な負担とはなりません。

また、同じく介護を担う仲間がいれば、相談をしたり、情報交換をしたりして、悩みを聞いてもらうと気分が軽くなります。

介護者一人で介護を抱え込むのではなく、他の家族や周囲の友人・知人を頼ることも大切です。

認知症となった人を介護する人が過労で倒れては一大事です。そのため、次のストレス軽減方法を検討してみましょう。

• 悩みを相談してみる
• 施設入居を検討
• 高齢者支援サービスを利用する

それぞれのストレス軽減方法について説明します。

配偶者が認知症となってしまい、子ども達は仕事で忙しく介護は自分一人で行うという場合、これからの介護の不安が大きく気分も滅入ってしまうかもしれません。

そんな時は最寄りの地域包括支援センターの担当職員に相談してみましょう。

地域包括支援センターとは、地域の高齢者に関する総合相談窓口です。

在宅介護の相談ならば、主に社会福祉士（介護等に関する専門的知識・技術を有し、介護等の支援や助言を行う有資格者）が対応します。

社会福祉士は認知症となった人の状況をヒアリングし、最適な介護サービス等を紹介します。

自宅に近い地域包括支援センターを見つけたいならば、厚生労働省ホームページ「介護事業所・生活関連情報検索（介護サービス情報公表システム）」で検索しましょう。

「在宅介護を継続してきたが限界だ。」「在宅介護を考えたがとても自分には無理だ。」と感じたら、介護施設への入居を検討しましょう。

認知症となった家族を施設へ入居させるのは、決して悪い対応ではありません。

介護者が心身の限界を超えたまま在宅介護を続ければ、介護者も疲労で倒れてしまう可能性があります。

施設へ入居させれば、専門知識を有するたくさんの介護スタッフから、質の高い介護を24時間受けられるので安心です。

施設へ入居させるのではなく、別の方法で介護事業者の力を借りたいならば、主に次のような方法があります。

• 訪問介護：介護スタッフが訪問し、必要な身体介護・生活援助、リハビリを実施する
• 通所介護（デイサービス）：要介護者が施設に通い機能訓練・レクリエーションを実施する
• 短期入所生活介護（ショートステイ）：介護施設に短期間入所し、介護や機能訓練、日常生活上の世話等を提供する

介護者の希望の他、ケアマネジャーのアドバイスも受けたうえで、要介護者やご家庭のニーズに合った介護サービスを選びましょう。

在宅介護では認知症となった本人への配慮の他に、介護者の健康管理も大切になります。

本記事でご紹介した、在宅介護の注意点や対応方法をまとめると以下の通りです。

• 認知症となった人の 暴言・暴力、徘徊、被害妄想といった問題行動に注意する 
• 介護者は認知症となった人の自尊心を傷つけず冷静に対応し、介護者自身の健康も大事にする
• 家族や周囲の助け、介護サービスを上手く利用して、在宅介護を継続することが大切

自分一人だけで介護に当たるよりも、ケアマネジャーのアドバイスや、地方自治体や介護事業者のサポートを受けながら、認知症となった本人の症状に合わせた対応を行っていきましょう。