高齢の親を持つ人必見！ 一人暮らしの高齢者を支援する方法を一挙ご紹介

高齢者の親と離れて暮らしていると、きちんと食事をしているか、不便な生活をしていないかと、心配事は尽きないと思います。

ましてや、一人暮らしともなると、「認知症になったらどうしよう」「もし突然倒れたら…」と、健康への不安も大きいでしょう。

しかし、きちんと対策をして、便利な支援制度や支援サービスを利用すれば、一人暮らしの高齢者でも不自由なく生活でき、家族も安心です。

そこで本記事では、一人暮らしの高齢者のための対策と支援方法について、余すことなく一挙ご紹介します。

日本の少子高齢化は数値として顕著に表れ、総人口に占める高齢者は、1950年には5％にも満たなかったものの、2022年になると29.0％を占めるようになりました。

出典：令和5年版高齢社会白書（内閣府）

さらに、核家族化も大きく進み、65歳以上の高齢者のいる世帯構造では、51.6%もの人たちが一人暮らしをしています。

出典：2022（令和4）年 国民生活基礎調査の概況（厚生労働省）

老後の自立意識が高まり、一人暮らしの高齢者が増えているのは、次のような理由です。

• 家族に迷惑をかけたくない
• 何らかの事情で子供を頼れない
• 今の暮らしに満足している
• 生活環境を変えたくない
• 経済的に問題なく暮らしてゆける
• 周囲に気兼ねすることなく暮らしたい

出典：令和4年簡易生命表の概況（厚生労働省）

健康寿命とは、継続的な医療や介護に依存せず、自立した生活ができる期間のことをいいます。

つまり、健康寿命を越えると、日常的な通院や入院、介護施設への入所など、医療機関や人手を頼らざるを得ません。

※（カッコ）内の数字は前回の数値

【男女別死亡年齢の構成比】

出典：第7回孤独死現状レポート（日本少額短期保険協会）

さらに、孤独死の平均年齢は「男性62歳・女性61歳」と、平均寿命より約20年も短命で、60代の孤独死は全体の29.1%を占めています。

そのため、一人暮らしの高齢者は、早い段階から孤独死のリスクを回避しなければならないといえるでしょう。

高齢者が一人暮らしで困ることは、思わぬトラブルや心身に関する問題など、主に8つあります。

• 詐欺・犯罪に巻き込まれる心配がある
• 地震や洪水などの自然災害発生時の対応
• 急な入院時などの「身元保証人」問題
• 経済面での不安
• 日常生活の中での健康面への不安
• 認知症の発症や進行
• 掃除や食事の準備などの生活面の不安
• ご近所付き合いが減る、生きがいが減る、孤独感などへの不安

お金・健康・孤独の3つの要素に不安がある高齢者は、判断力の低下から、詐欺や犯罪に巻き込まれやすい傾向にあります。

高齢者をターゲットとする詐欺や犯罪は後を絶たず、 2022年の特殊詐欺の認知件数は17,570件と、前年より21.2％も増加し、被害額は370.8億円にも上っています。

出典：お知らせ（警察庁）

犯行の手口として次のような詐欺や犯罪が挙げられていますが、身近に相談できる人のいない一人暮らしの場合は、特に気を付けなければなりません。

• 電話勧誘販売
• 家庭訪販
• 訪問購入
• かたり商法（身分詐称）
• 劇場型勧誘
• 無料商法
• 還付金詐欺
• ワンクリック請求

出典：高齢者の消費者被害（国民生活センター）

高齢者は身体的な衰えから、地震や洪水などの自然災害発生時に、素早く的確な避難ができない可能性があります。

特に、助け合える相手のいない一人暮らしの場合は危険度が高く、気力や体力のなさから諦めてしまうケースもあるでしょう。

一人暮らしの高齢者でも安全に避難できるようにするには、次のような対策と支援制度の活用が必要です。

• 家具の転倒対策や避難路の確保など、自宅内の安全対策を行う。
• 氏名・住所・生年月日などの基本情報や、緊急連絡先、かかりつけ病院の連絡先、持病や服用している薬などを記入した緊急時連絡カードを用意して、常に所有することを習慣にする。
• 地域のハザードマップにより、避難場所と避難ルートの危険箇所を確認しておく。
• 災害対策基本法によって各自治体に作成が義務付けられている「避難行動要支援者名簿」へ登録して、安否確認や避難支援を受けられるようにしておく。

病院への入院や介護施設への入居では、身元保証人が必要になるケースが多くあり、入院生活におけるサポート支援は不可欠です。

2022年に発表された関東エリアの2,022ヶ所の病院・施設を対象とした調査によると、9割以上で身元保証人を求めていることが判明しました。

出典：高齢者の身元保証に関する調査（行政相談契機）（総務省）

なお、一般的に身元保証人へ求められる役割は、次のような内容となっています。

• 入退院の手続き
• 緊急連絡先
• 本人の代わりの意思決定
• 支払費用の連帯保証
• 必要品の買い出し
• 身柄や荷物の引き取り

身近に頼れる人がいない一人暮らしの高齢者にとっては、入院中のみならず、退院後の療養中や通院も不安があるでしょう。

年金暮らしなどで収入が少ない高齢者にとって、経済的な不安は大きな悩みやストレスにもなるでしょう。

その予兆を表すように、2022年の調査では、82.2％の人が老後生活へ「不安感あり」と回答し、さらに79.4％が「公的年金だけでは不十分」と回答しています。

出典：生活保障に関する調査（生命保険文化センター）

出典：令和5年4月分からの年金額等について（日本年金機構）

直近2023年度の年金額は上記のとおりで、貯蓄の少ない高齢者にとって、年金だけで生活してゆくのは厳しいのが実態です。

人は加齢とともに体力が低下し、身体的な問題から不安を感じやすくなり、高齢になると、高血圧や糖尿病のほか、腰や膝などの関節痛や白内障を患います。

介護が必要になる主な原因は次のとおりで、若い世代にはない転倒による骨折がランキングするように、高齢者は日常生活でも注意が必要です。

1位 認知症 18.1％
2位 脳血管疾患（脳卒中） 
3位 高齢による衰弱 13.3％
4位 骨折・転倒 13.0％
出典：第1章 高齢化の状況（第2節 2）

なお、高齢者における死因は、癌・心疾患・脳血管疾患・肺炎が上位を占め、90代からは老衰が増える傾向にあります。

出典：死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率（厚生労働省）

認知症の高齢者数と有病率の将来推計によると、2012年は認知症高齢者数が高齢者の約7人に1人でしたが、2025年には約5人に1人になると推計されています。

出典：第1章 高齢化の状況（第2節 3）

物忘れなどの記憶障害が起こると、ガスコンロやストーブの火気の消し忘れによる火災など、大きな問題にもなりかねません。

また、時間や場所が分からなくなる見当識障害や、理解力・判断力の低下のほか、うつ病や幻覚を引き起こす可能性もあります。

さらに進行すると、運動機能障害によって寝たきりになったり、飲食時の誤嚥（ごえん）を引き起こしたりするため、介護支援が不可欠です。

認知症には平均51.3歳という若さで発症する若年性認知症もあるため、早期発見によって重篤化を防ぐことと、家族の理解と支援が大切といえるでしょう。

出典：若年性認知症 （厚生労働省）

高齢者は次のような理由から、掃除や食事の準備といった日常に必要な作業が負担になり、生活の質を維持しにくくなります。

• 気力や体力や判断能力の低下
• 環境や健康に無頓着・無関心なセルフネグレクト
• 人に頼むと迷惑になると思う気持ち

ゴミ屋敷や栄養不足などの問題が起きやすい一方で、物への執着心が芽生えたり、ギャンブルやアルコールに依存する場合もあるため、注意しなければなりません。

叱責や助言をしても、高齢者は認知症や心理的な要因で対処できずに、家族などの支援が必要となるケースも多くあります。

現役を引退したり、体調不良などの要因があると、高齢者は人付き合いの機会が減って生きがいを失うため、孤独になりがちです。

気力や自信の喪失から、新たな取り組みを始めることや、コミュニティに属する意欲がなく自宅へ引きこもると、孤独死の危険性が高まります。

特に都心部は近所付き合いが希薄で、セキュリティ対策では安全性が高まっている反面、近隣住人に万一のことがあっても、異変に気付きにくい環境です。

高齢者自身が楽しみや生きがいを見出だすことができれば幸いですが、難しい場合には、心身の健康のためにサポートする必要があるといえるでしょう。

一人暮らしの高齢者を支援する制度やサービスは、次のとおり6種類あります。

1. 自治体による支援サービス
2. デイサービスなどの介護サービス
3. 家事代行サービス
4. 高齢者世帯向け食事配達サービス
5. 見守り・安否確認サービス
6. 身元保証会社によるサービス

地域の自治体では、高齢者を対象に公共福祉サービスとして、次のような支援を提供しています。

• 高齢者住宅改造費の助成金制度
• 紙おむつ費用の助成金制度
• 認知症高齢者等事前登録制度
• 特定健康検診や後期高齢者医療制度
• 徘徊高齢者家族支援サービス
• 見守りサービスや緊急通報システム
• 高齢者日常生活用具の給付及び貸与制度
• 高齢者食事サービス
• 福祉タクシー利用券の交付
• ゴミ収集の補助
• 高齢者向けのサークル活動やイベント開催

助成金の給付や無料の支援制度やサービスは大きなメリットのため、ぜひご本人がお住まいの地域の情報を調べて活用しましょう。

また、健康や生活について気になることやお悩みがあれば、以下のサイトでお近くの地域包括支援センターを確認のうえ、相談するのもおすすめです。

参考：介護事業所・生活関連情報検索（厚生労働省）

要介護・要支援の認定を受ければ、公的な介護保険を利用して、次のような介護サービスの支援を受けられます。

• 居宅介護サービス：自宅訪問・デイサービス（通所介護）・短期宿泊による支援
• 施設サービス：介護施設への入居のよる支援
• 地域密着型サービス：地域の施設による支援
• 居宅介護住宅改修費用の支給：手すり設置などの補助金
• 福祉用具の貸与及び購入費の支給：車いすや介護ベッドの貸与や腰掛け便座・入浴用具などの補助金

介護保険は、事前に作成した介護（介護予防）サービス計画書（ケアプラン）に基づき、要介護や要支援の度合いに応じて適用されます。

利用者負担額は、介護サービスにかかった費用の1割（一定以上所得者の場合は2割または3割）で、要支援1･2から要介護1～5の7段階によって、次のとおりです。

出典：介護事業所検索 介護サービス情報公表システム（厚生労働省）

ただし、介護サービスの利用には、次のいずれかの条件を満たさなければならないため、あらかじめ適用するかどうかを確認しましょう。

1. 介護保険料を支払っている65歳以上の第1号被保険者で、要支援・要介護の認定を受けている人。
2. 介護保険料を支払っている40〜64歳の第2号被保者で、居住する市区町村から次の16種類の特定疾病により要支援・要介護の認定を受けている人。

• 筋萎縮性側索硬化症
• 脳血管疾患
• 後縦靭帯骨化症
• 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
• 骨折を伴う骨粗しょう症
• 閉塞性動脈硬化症
• 多系統萎縮症
• 慢性関節リウマチ
• 初老期における認知症
• 慢性閉塞性肺疾患
• 脊髄小脳変性症
• 脊柱管狭窄症
• 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
• 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
• 早老症
• 末期がん

なお、要介護・要支援認定には審査が必要となり、申請から30日以内に通知が行われます。認定後は有効期限があり、更新が必要なためご注意ください。

• 新規・変更：原則6ヶ月（状態に応じ3～12ヶ月）
• 更新：原則12ヶ月（状態に応じ3～24ヶ月）

介護サービスは本人の自立を支援する目的の介護要素が強い一方、民間の家事代行サービスなら、掃除・洗濯・買い物・炊事などの家事を委託できます。

たとえば、週1〜2回の定期プランで数日分の食事を用意してもらうことや、必要な時にお願いしたいだけを単発で依頼することなども可能です。

家事代行サービスの費用は1回あたり2時間で4,000〜8,000円程度が相場となり、別途交通費が必要なケースもあります。

通常料金より安価にお試しサービスを実施している会社もあるため、実際に体験してみるのも良いでしょう。

近年は高齢者向けの食事配達サービスが増え、料理ができないお年寄りでも安心して一人暮らしができるようになりました。

買い物や調理の手間がかからないお弁当には、豊富なメニューや品数があるため、毎日の食事が楽しみにもなるでしょう。

2019年に実施された調査結果によると、75歳以上の多くが「粗食が大切」と勘違いしていることが分かりました。

出典：後期高齢者（75歳以上）の食と健康に関する実態調査（ネスレ日本）

心身の健康のためには、食事の質と量が大切です。長生きの秘訣でもあるため、ご家族の立場では、栄養バランスを考慮してあげてください。

高齢者向け食事配達サービスには、常温以外に冷凍もあるため、ストックしておくのにも便利です。さらに、柔らかい物しか食べられない方のための食事もあります。

料金は1食あたり400円から1,000円未満が多いです。要介護・要支援認定者など、地域によっては補助金が支給されるケースもあるため、ぜひ確認してみましょう。

一人暮らしの高齢者が孤独死を防いで、認知症や病気による異変を早期発見するためには、見守りサービスの活用や安否確認が不可欠です。

2022年発表の『一般高齢者の日常生活における困りごと・ニーズランキング 東京23区』では、多くの高齢者が見守りや安否確認を求めていることが判明しました。

1位：見守り・安否確認・声掛け
2位：買い物・移動販売・薬の受け取り
3位：話し相手・友人関係・通いの場など交流の場の充実
出典：高齢者の生活ニーズのランキング首位は見守り（ニッセイ基礎研究所）

都心にお住まいの高齢者の立場では、不安や寂しさを感じている様子が窺え、同時に子供に迷惑をかけたくないという傾向も想定されます。

近年は自治体を介して、近隣住人やボランティアによる巡回などに取り組む傾向が増えていますが、決して万全とは言えません。

手軽で簡単に始められる見守りサービスや安否確認の方法は次のようにさまざまあるため、ぜひご検討ください。

住まいが離れていたり、仕事や家事で忙しいご家族は、予期せぬ緊急事態に備えて、高齢者向けの身元保証会社のサービスを利用すると便利です。

身元保証サービスでは、次のような万一の時に必要なサービスをプランとして提供しているケースが多く、ご家族の負担を大幅に軽減できます。

• 身元保証人や連帯保証人の代行
• 緊急連絡先の引き受け
• 入退院に必要な手続き
• 入退院時の付き添い
• 医師による治療説明時の同席
• 医薬品の受け取り
• 手術の立ち会い
• 必要品の買い物
• 荷物のお届け
• 転院のご相談
• 費用の立て替え払い

高齢者はケガや病気の発症リスクが高いため、もし急に病院へ入院しなければならない時に支援してもらえる環境を整えておけば、大きな安心に繋がるでしょう。

ただし、身元保証会社においては「預託金を求められたが詳細説明がない」などのトラブルも見受けられるため、業者選びと契約内容にはご注意ください。

出典：身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意（国民生活センター）

高齢者の一人暮らしを支援する方法についてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。

• 経済的に厳しいご家庭でも、地域の自治体による助成金や無料の支援サービスと地域包括支援センターを活用することで、健康や介護への相談や自然災害発生時の避難対策ができる。
• 要支援や要介護の認定を受けると、度合いに応じて公的なデイサービスなどの介護サービスによる身体的な援助がしやすくなる。
• 家事代行サービスや高齢者世帯向け食事配達サービスを利用すれば、掃除や食事の準備などの家事全般を支援でき、衛生的かつ健康的な生活を送ることができる。
• 見守り・安否確認サービスと身元保証会社のサービスを併用活用することで、孤独死を回避し、万一の緊急時にも速やかに対処でき、突然の病院への入院発生時もサポートできる。

このように、高齢者を支援するサービスはさまざまあるため、親が安心して暮らしてゆけるようにより良い方法を選択なさってください。

ただし、高齢者にとって、何より生きがいを感じるのは「家族との団らん」です。押し付けではなく、優しい気持ちで支えてあげましょう。