生前整理とは？やることリスト＆進め方を徹底解説！賢く断捨離して老後も快適

自分が亡くなっても、残された家族が自分の遺品の処分に困らないよう、何とかしたいと考えている人は多いはずです。

その場合、自分が生きている間に、自分の判断で財産をどうするか決定し、進めていく作業を「生前整理」と呼びます。

ただし、無計画に生前整理を進めていくと、処分してはならないものを処分してしまったり、整理すべき物が残ってしまったりと、いろいろなトラブルが想定されます。

そこで今回は、生前整理のメリットや注意点、生前整理で行うべき作業等を解説します。

生前整理とは、自分が生きている間に自分の判断で財産をどうするか決定し、進めていく作業を指します。

生前整理は単なる不用品の処分だけでなく、自分の死後、財産をどのように遺族へ引き継ぎたいか等も決める大切な作業と言えます。

生前整理に関する作業は、主に次のようなものがあげられます。

• 自分の不用品の処分
• 遺言書の作成
• エンディングノートの作成
• 自分の財産の把握　等

特に遺言書の作成は、遺産相続に関して法律上の効力が発生する重要な作業です。

そのため、前もって自分の財産を把握し、誰に財産を引き継がせるのか慎重に決めなければいけません。

生前整理と老前整理は、作業内容自体は全く同じです。いずれも自分が生きている間に実行します。ただし、老前整理は高齢となる前に行う作業なので、概ね50代くらいから開始します。

不用品の処分等であれば、自分・家族とで協力して行っても構いません。ただし、遺言書の作成は自分自身の財産分与の意思を反映させる文書なので、基本的に自分の力で作成します。

なお、遺品整理は本人が既に死亡しているため、遺族が協力して行います。遺言書または相続人で決めた遺産分割に従い、相続手続きを進めていきましょう。

生前整理は本人が自主的に行う作業であり、強制ではありません。しかし、生前整理を行うと次のようなメリットがあります。

• 遺族の負担を軽くできる
• 財産の把握ができる
• 大切な財産を引き継げる
• 自分自身がすっきりする
• 相続トラブルを事前に防げる

それぞれのメリットについて解説していきましょう。

故人の残した遺品が多いと、遺族は処分するのにひと苦労です。

また、処分しようとした物が実は高価な品物かもしれない、捨てたら故人が怒るのではないかと考えてしまい、なかなか処分できない場合もあるはずです。

そんな遺族の負担を軽くするため、自分が不要と感じた物から処分していきましょう。

捨てるのがもったいないなら、友人・知人に譲っても、インターネットでフリマサービスを利用する等して売却するのも良い方法です。

自分の所有する財産にどのような物があるのか確認できます。自分が元気なうちに不動産資産（建物・土地）、金融資産（預金・現金・株券等）を把握でき、遺言書を作成する際の参考にできます。

自分の財産をまとめておけば、遺族が相続開始後に慌てて調査する必要もありません。遺族は安心して相続手続きを進められるはずです。

遺言書を作成すれば、誰にどのような財産を作成させるのか指定が可能です。

例えば、自分に妻と子供の（長男・次男）の3人がいた場合は以下のように遺言書で引き継ぐ人を指定できます。

• 妻：現在の住居・土地を譲渡
• 長男：預金1/2を譲渡
• 次男：預金1/2を譲渡

住居・土地を妻に引き継がせれば、夫婦の住み慣れた住居・土地を、これからも守ってもらえます。

また、それぞれ家庭を持っている子供たちには、孫の養育費や家族の生活費として預金を分け与えれば、遺言者に感謝するはずです。

生前整理は残された家族のためだけでなく、自分自身が安心するためにも有効な作業です。

被相続人となる本人が何も生前整理をしていないと、自分の残した財産を相続人がどのように分割するのか、守ってもらいたい財産（例えば先祖代々の土地等）がどうなるのか、気になるはずです。

不要な物を処分し、引き継いでもらいたい財産を明らかにしておけば、不安は残らないはずです。

遺言書を作成し、相続人へなるべく均等に財産分与を行えば、相続人の間でトラブルが起きるリスクは回避できます。

その他、前もって所有する財産価額を把握すれば、相続税が発生するかどうかも予測できるはずです。

課税遺産総額が相続税の基礎控除額（3,000万円 +600万円× 法定相続人の数）を超えてしまうと、相続人は相続税を納付しなければいけません。

あくまで相続税が発生するかどうかは、相続開始時に財産を評価してみる必要があります。ただし、基礎控除額を超える遺産が残ると予想されるなら、早めの相続税対策が可能です。

例えば、配偶者や子供たちへ贈与額を1人110万円に抑え、生前贈与する方法があります（暦年贈与）。

110万円以内の暦年贈与なら、基本的に受贈者（贈与を受け取った人）は贈与税を課せられません。

この方法を継続すれば、着実に自分の資産を減少させ、相続の際に相続人の相続税負担を軽減できます。

生前整理でやるべき作業は法定されていません。しかし、次の作業を進めれば被相続人となる自分も、相続人となる遺族も安心できます。

1. 財産目録を作成する
2. エンディングノートを書く
3. 遺言書を書く
4. デジタル製品を整理する
5. 不用品の整理を行う

それぞれの作業を解説していきます。

財産を一覧表にすれば、エンディングノート・遺言書を作成し易くなります。

財産目録とは被相続人の所有する土地・建物のような不動産資産、預貯金・株券のような金融資産を一覧にした書類です。なお、財産目録の書式や記載内容は特に法定されていません。

エンディングノート・遺言書を作成しない場合でも、財産目録を作成していれば、相続人がどんな財産があるかを確認でき、遺産分割協議をする際にも役立つはずです。

なお、裁判所では財産目録（遺産目録）のサンプルが提供されています。このようなサンプルをそのまま利用して作成しても構いません。

エンディングノートを作成すれば、遺族に財産の種類やお葬式の希望、友人・知人の連絡先を伝えられるので便利です。エンディングノートとは、終活を進める際に作成する記録帳です。

エンディングノートへの記載する内容は主に次の通りです。

• 自分（被相続人）が所有する土地・家屋の所在地
• 保有している金融資産（預金通帳の保管場所等）
• 介護や葬儀・埋葬についての希望
• 親交のある友人知人の氏名・所在
• 家族に伝えたい想い　等

財産目録に記載した財産をエンディングノートに転記してまとめても構いません。ただし、相続に関する内容を明記しても、遺言書のように法律上の効力は得られないので注意しましょう。

遺言書を作成すれば、相続人の誰に・どんな財産を引き継がせたいかを指定できます。遺言書があれば、基本的に相続人は記載されている遺言内容に従う必要があります。

もちろん、遺言書がなくても相続人の間で遺産分割を話し合い、遺産分割協議書を作成すれば問題なく相続手続きは進みます。

しかし、自分の財産の分与に関して明確な希望があるなら、遺言書を作成しましょう。遺言には次のような種類があります。

• 自筆証書遺言：遺言者本人が自筆して作成する遺言
• 秘密証書遺言：記載内容を秘密にできる遺言
• 公正証書遺言：公証人から作成してもらう遺言

自筆・秘密証書遺言の場合は遺言者の死後、基本的に家庭裁判所の検認（遺言書の証拠保全）が必要です。

しかし、公正証書遺言で作成したなら検認不要です。また、公証役場に原本が保存されるので、相続人や第三者から遺言書の破棄、隠匿、改ざんされるリスクはありません。

不要なパソコンやスマートフォンを今のうちに整理しておいた方が、情報漏洩等の防止にも役立ちます。

パソコンやスマートフォンへ保管されたデジタルデータは、自分が亡くなっても消滅するわけではありません。

パソコンやスマートフォンが何台もあれば、どこにどんなデータを保管していたかわからなくなってしまいます。

そのため、古いパソコン・スマートフォンからデータを新しいパソコン・スマートフォンへ移し替え、いらなくなった機種から処分していきましょう。

同時に保管しているデジタルデータが必要かどうかも判断し、整理していきます。

自分が元気なうちに、生活に不要な家財道具を整理・処分しておきましょう。

使えそうな物品は譲渡し、フリマサービスやリサイクル店を利用し売却する等して、どんどん減らしていくのが良い方法です。

ただし、宝石や絵画等は相続税の課税対象となります。宝石や美術品の価値がわからない場合、事前に鑑定士へ鑑定を依頼しましょう。

生前整理はいつから始めても構いません。自分に時間の余裕ができたら、できる作業から開始した方が良いでしょう。

例えば会社を65歳で退職する予定の人は、リタイアしてから生前整理をした方が良いです。

リタイア後の十分な余暇を利用し、財産の調査や不用品の処分、遺言書の作成等に集中できるはずです。

ただし、80歳以降で生前整理を始めると、認知症の発症や要介護状態となる可能性があります。なるべく判断能力が十分あり、元気なうちに作業を開始しましょう。

最近では、不動産や現金・株券のような財産の他、ネットバンクやデジタル資産を保有する方々が多くなりました。

次のデジタルデータや財産を忘れずに整理する必要があります

• 暗証番号・パスワードの管理
• SNSやデジタル資産の管理

こちらでは、それぞれの注意点を解説していきます。

パソコンやスマートフォンを利用する際、暗証番号・パスワードを入力する場合がほとんどです。

家族に暗証番号やパスワードを教えていないと、自分の死後にデジタル遺品の整理が困難となります。

そのため、エンディングノートに暗証番号やパスワードを明記しておいた方が良いでしょう。ただし、生前にうっかり家族や第三者へ教えてしまうと、知られたくないデータが漏洩するおそれもあります。

暗証番号やパスワードを明記したエンディングノートは、自分が死亡するまで誰にも見つからないよう、厳重に保管しておきましょう。

もしも、厳重な保管が難しいならば、弁護士や司法書士等の士業事務所がエンディングノートを預かり、保管するサービスを行っている場合があるので相談してみましょう。

SNSやデジタル資産も生前整理を行っておきましょう。

パソコンやスマートフォンで自分のブログやSNS、有料サイトや課金アプリ、デジタル資産（ネットバンク、ネット証券で行う投資信託・株取引、FX、NFT、仮想通貨等）を保有・管理している人は多いはずです。

SNS・デジタル資産等の存在を家族が知らなければ、そのまま放置される可能性が高いです。

有料サイトや課金アプリをそのままにすれば、自分の死後も口座から料金が引き落とされます。

そのため、生前にブログやSNS、有料サイト・課金アプリは解約し、デジタル資産は現金化したうえで契約を終了した方が良いでしょう。

特に不用品の整理は気力・体力が必要となります。いっきに片付けようとすると、ケガや腰を痛める等のアクシデントも想定されます。

不用品を整理する際は、次の点を心がけましょう。

• 家族や周りを巻き込む
• ポジティブに取り組む
• 一気にやろうとせずに少しずつ行う
• 使わないものは処分する
• 元気なうちに始める

こちらでは、それぞれのポイントについて解説していきます。

自分の力だけではなく、家族・友人・知人のサポートも受けて不用品の整理をしましょう。そうすれば、一人で対応するよりも迅速に不用品の整理が可能です。

その場合、「気に入った不用品があれば、自由に持ち帰って良い。」と伝えれば、積極的に対応してくれるかもしれません。

特に趣味が同じ人達（例：ラジコン、アニメキャラクターのフィギュア、飛行機や船の模型等）と、趣味で集めた物も含め不用品を整理すると、作業がスムーズに進められるはずです。

不用品の整理は億劫になる場合があるかもしれません。そんな時は「整理のついでに、以前に無くした宝物を発見する。」と、別の目標も立てればモチベーションを保てるはずです。

また、不用品を全て整理したら、自分へのご褒美として旅行やレジャーを計画するのも良い方法です。

無理をしない程度に、長期的なスパンで不用品の整理をした方が良いでしょう。

自分の長い人生で貯めてきた衣類や本類等は、そう簡単に処分できるわけではありません。数日程度で全てを終わらせる場合は、とても自分ひとりでは無理です。

家族総出または専門業者のサポートが必要となるでしょう。ただし、家族が仕事や学業を行っている場合は迷惑をかけてしまうかもしれません。また、専門業者に依頼すれば、ある程度の費用がかかります。

家族には手の空いているとき手伝ってもらえば十分、なるべく費用をかけず数年かかっても構わないという姿勢で、徐々に整理した方が無難です。

遺族の負担を考えるなら、衣類や家財道具等に思い入れがあっても、使わない物は処分しましょう。

現在使用していない物も、結局自分の死後に遺族が処分しなければいけません。特に手間がかかるタンスや本棚のような家財道具等の処分は、自分が元気なうちに済ませておきましょう。

自分に十分な判断能力があり、足腰が動くうちに生前整理を行いましょう。

認知症を発症したり要介護認定を受けたりして、介護施設等へ入所することになれば、必ず自宅へ戻れるとは限りません。

入所してから後悔しないよう、早めに不用品の整理を開始した方が良いです。

生前整理では様々な作業をします。効率的に行わないと、思い通りに作業が進まない可能性もあるでしょう。

• まずは身の回りの整理から始める
• お金や財産に関わるものを整理する
• エンディングノート・遺言書を作成する
• 業者を利用する

こちらでは、それぞれの進め方のコツを解説していきます。

自分に不要となった衣類・本類から片づけた方が良いでしょう。タンスや本棚は衣類・本類を処分した後にリサイクルまたは廃棄します。

自分の死後、多くの衣類等が残ってしまい、遺族が処分に苦慮するケースも多いです。

高級そうな着物やドレス等は、家族や知人に贈与するか、リサイクル業者やフリマサービスで売却した方が良いです。

当然、破れた衣類や誰ももらってくれそうにない本類等は、早めに処分しておきましょう。

不動産や預金通帳・株券、デジタル資産をよく確認し、整理しましょう。

例えば、使用していない自己所有の建物・土地があるなら、更地にして売却する等、現金化した方が良いです。

相続財産として不動産が多いと、遺産分割が難しく、遺言書で引き継ぐ相続人を指定しても放置されるリスクがあります。

現金化すれば各相続人の割合に応じて、分割がし易く、相続人の間でトラブルが起きるリスクを軽減できます。

エンディングノートや遺言書を作成すれば、葬儀・埋葬の希望や財産の種類・保管場所を家族に伝えられ、財産を誰に引き継いでもらいたいか指定できます。

エンディングノートや遺言書を作成するか否かは本人の自由です。しかし、書類という形でまとめておいた方が、相続手続きを進めるうえで遺族はとても助かるはずです。

なお、エンディングノートや遺言書の作成の内容・方法がよくわからないなら、専門家である弁護士や行政書士等に作成を指南してもらった方が良いです。

弁護士事務所・行政書士事務所等では、セミナー・相談会を行っているところもあります。

自分や家族だけで生前整理するのが不安な人は、専門業者に頼んでサポートしてもらっても構いません。

こちらでは、不用品買取業者・終活サポート会社・生前整理業者について解説します。

不要な家財道具や衣類、電化製品等があれば不用品買取業者に買い取ってもらえます。

ただし、何でも買い取ってもらえるわけではなく、劣化や汚れが激しい物、製造から10年を超えた家電製品は、買い取りを拒否されてしまうので注意しましょう。

一方、買い取ってもらえなくとも、不用品の「回収」という形で費用を払い処分してもらえる場合があります。有料で処分しても良い場合は、担当者に相談してみましょう。

最近では終活サポートサービスを提供する株式会社やNPO法人等が増えています。

そのサービスの一つとして、生前整理のサポートも含まれています。

エンディングノートや遺言書の指南（実際には提携している士業専門家が対応）、お葬式・埋葬の手配を任せられる他、不用品の整理（遺品整理）もオプションとして依頼できる場合があります。

終活サポート会社を利用したい場合は、生前整理にどれくらいの費用がかかるのか担当者から見積もりを立ててもらいましょう。なお、相談自体は無料です。

終活サポート会社のように相続に関するサポートや、お葬式・埋葬等に関するサポートは扱っていないものの、生前の不用品の処分に対応する業者です。

主に次のようなサービスが期待できます。

• 貴重品・処分品の仕分け作業
• 貴重品の捜索
• 不用品の回収・処分

なお、不用品の処分後、ハウスクリーニングに対応しているところもあります。不用品の処分に人手が足りそうもない場合、依頼を検討してみましょう。

生前整理は単なる不用品の処分だけでなく、エンディングノートや遺言書の作成等、多くの作業が必要になります。

本記事でご紹介した、生前整理の内容をまとめると以下の通りです。

• 生前整理を行えば、不用品の処分はもちろん、正確な財産の把握にもつながる
• 身の回りの物品の他、パソコンやスマートフォンのデジタル遺産・資産をどうするかも忘れずに検討する
• 自分や家族だけで生前整理が難しそうなら、専門業者のサポートを得た方が良い

家族・親族があまりいない、いても遠方に住んでいる、身寄りがないといった方々は、無理に自分で生前整理を行わずに、専門業者の助けも借りて作業を行いましょう。