老人ホームの引越しは慎重に！事前に確認すべきポイントや失敗を防ぐ方法を解説

老人ホームに入れたものの、何らかの理由で別の老人ホームへ引越しをしたい、または引越しを余儀なくされた、という方々もおられるはずです。

別の老人ホームへ引越しを行う際に、その原因となった問題が解決できるのか、引越しの際に注意すべき点はあるのか、いろいろと不安に感じてしまうかもしれません。

引越しをする場合、なるべくトラブルなく手続きが進むように、事前にしっかりと準備を行っておく必要があります。

そこで今回は、老人ホームへ引越しをする理由、引越し前に確認するべき点、引越しで失敗しないためのポイント等について解説します。

引越しの理由は高齢者ごとに違いがあるものの、概ね以下の理由があげられます。

• 身体症状の悪化
• 金銭的な理由
• 人間関係への不満
• 立地・設備への不満

こちらでは、それぞれの理由について解説していきましょう。

入居後に要介護度が進行してしまった、深刻な病気を発症してしまった、等の理由で現在の介護施設では対応できなくなり、更に設備の整った施設へ引っ越すケースがあげられます。

例えば、身体機能の低下で自立生活に不安を感じケアハウスへ入居したものの、その後に要介護認定を受け、より手厚い介護を必要とする場合があげられます。

ケアハウスは軽費老人ホームとも呼ばれ、生活支援を目的とする施設なので、要介護非認定の高齢者でも入居可能です。

しかし、要介護度が進行していくと対応は難しくなり、要介護度の高い高齢者でも安心して過ごせる「有料老人ホーム」、または「特別養護老人ホーム」への引越しを検討する必要が出てきます。

公的介護保険の自己負担や、公的介護保険外サービスの費用負担が重いという場合、引越しを余儀なくされる可能性があります。

特に民間企業が運営している有料老人ホームへ入居している場合、費用が高い点はデメリットといえます。高齢者の年金だけで賄えずに、家族からの出費を必要とするかもしれません。

介護に関する費用が重い負担となる場合、「特別養護老人ホーム」への引越しを検討する必要があるでしょう。特別養護老人ホームは公的に運営されている施設で、他の施設よりも安い費用で利用できます。

身体症状の悪化がみられず金銭的な面も問題ないものの、同じ施設に入居している高齢者と仲が良くない、介護スタッフと性格が合わない、といった理由があげられます。

このような人間関係のトラブルは、どの老人ホームへ入居する場合でも、あり得るケースと言えます。人間関係への不満は単に引越ししたからといって、解決できる問題ではない点に留意しておきましょう。

現在入居している老人ホームは、内装が綺麗だったので選んだ、毎月の施設利用料金が自分の年金収入で賄えるので選んだ、という人も多いはずです。

しかし、ある程度その老人ホームで生活してみると、部屋が狭かった、自宅から遠く離れていて家族が訪問し難い、という欠点がわかるかもしれません。

また、入居後に身体機能が衰えていき、利用中の設備では不便に感じてしまうケースもあります。

現在利用している老人ホームから引越したい、という場合は自分に合った老人ホームを探す必要があります。

その他にも次の点を確認しておきましょう。

• 返還金
• 原状回復費用
• 転居時期
• 自宅で生活できないかの再検討

こちらでは、それぞれの確認すべき点を解説していきます。

有料老人ホームやグループホームなどへ入居した際、「入居一時金」を支払っている場合が多いです。入居一時金がどのくらい返還されるか、施設職員へ確認しておきましょう。

入居一時金とは、入居金や前払金とも呼ばれ、有料老人ホーム等への入居にかかる初期費用です。家賃の前払いに相当し、施設によって数百万・数千万円、中には億単位で設定されている施設もあります。

入居一時金は一定期間にわたる家賃の前払金であり、居住期間が長ければどんどん償却されていきいずれ無くなります。

ただし、償却期間前に退去するならば未償却分は返還されます。この未償却分が残っていないか、退去前に施設側へ問い合わせてみましょう。

なお、公的施設の特別養護老人ホームの場合、入居一時金の支払は不要です。

施設側から、原状回復費用を請求される場合もあります。

この費用は施設に居住していた人が、わざとまたは不注意で通常の使用を超えて、設備等を破損させた場合に支払います。

入居当時と同じ状態に戻すわけではないので、通常の使い方をしている場合、原状回復費用は支払う必要がありません。

ただし、次のようなケースが確認されたら、老人ホームの施設側から原状回復費用を請求される可能性もあります。

• 日常の不適切な手入れ、用法違反で施設の設備等が毀損してしまった
• 引っ越し作業で生じたひっかき傷や壁等のへこみ　等

施設利用者が別の老人ホームへの引越しを決めた場合、現在の入居施設へおよそ1ヶ月前から退去の意思を告げなければいけません。

ただし、問題なのは入居している高齢者に医療ケアが必要となったとき、または認知症の症状がひどくなったときに、施設側から一定の期間内に退去してほしいと告げられた場合です。

施設から要請された期間内に適切な施設を探す必要がある他、新しく入居する施設を見つけても、実際に入居できるまで面談や書類の手続きが必要となるでしょう。

施設側から退去を告げられたならば、退去日から逆算しある程度余裕を持ったスケジュールで、施設探しを進めるべきです。

なお、家族側で医療ケアの程度、認知症の進行状態を把握し、現在の老人ホームでの継続入居が困難になると予想したなら、自主的に新たな施設探しを行っておきましょう。

そうすれば施設側から退去を告げられる前に、慌てずに引越しが可能です。

要介護度が進行している方々は、施設で介護サービスを受けた方が、介護を受ける高齢者本人や家族も安心です。

しかし、要支援等のような軽度の要介護度にあたる高齢者ならば、自宅で対応できないか検討してみるのも良いでしょう。

特に人間関係のトラブルで施設を出たい場合、自宅に戻りたいと思う高齢者もいるはずです。

訪問介護サービスや福祉用具貸与・住宅改修で、介護が十分果たせるなら、高齢者を自宅に戻した方が本人も落ち着くことでしょう。

自宅に戻したい場合は、家族だけで判断せずに、ケアマネージャーともよく話し合って決めた方が無難です。

速やかに新たな引越し先での生活が送れるよう、円滑に手続きを進めていきたいものです。

主に次のようなステップで手続きを行っていきましょう。

• 現在入居中の施設、ケアマネージャーに相談
• 新たな老人ホームを探す
• 新たな老人ホームの入居申込をする
• 現在入居中の施設に退去手続きを行い退去へ
• 引越し先の老人ホームへ入居する

こちらでは、それぞれのステップについて解説しましょう。

老人ホームの引越しは、入居者本人・その家族に大きな負担となります。まず入居中の施設やケアマネージャーへ相談してみましょう。

入居中の老人ホームの運営会社では、相談窓口を開設しているところもあります。人間関係のトラブルで退去をしたいのなら、トラブルの相手となるべく顔を合わせないよう、配慮してもらえるかもしれません。

施設側の配慮で問題が解決できるなら、現在の施設から引越しする必要もないでしょう。

なお、やはり退去を希望するなら、概ね退去希望日の1ヶ月前までに退去希望の申し出を行います。

老人ホームの引越しが必要である場合、新たな引越し先を探します。老人ホームを選ぶ際は次の点に注目しましょう。

• 入居する本人の要介護度や健康状態に適した施設かどうか
• 希望する目的が実現できる設備・サービスを有しているか
• かかる費用は家庭で無理なく負担できる金額か

介護サービスが充実し費用は良心的でも、例えば入居する本人に医療ケアが必要ならば、そのニーズも満たせる施設選びを行わなければいけません。

理想的な施設選びに困ったら、ケアマネージャーから条件に合った施設を紹介してもらいましょう。

実際に老人ホームを見学する等して理想的な施設が見つかった場合、入居申込を行います。

申込む施設に必要書類・健康診断書等を提出後、面談の上、入居審査を受けます。審査で問題ないと判断されたら、入居契約を行い入居日を決めます。また、老人ホームの中には体験入居も可能なところがあります。 

このようなサービスを利用し、入居の有無を判断しても良いでしょう。

現在の施設から退去する前に新たな引越し先と契約し、入居日を決めておけば、退去後すぐに引越し先へ移動し新たな生活を開始できます。

退去手続きは、老人ホームで設けている規定に基づき進められます。

そのため、どのような手続きが必要か、退去にかかる費用や返還金等について施設側へ確認しましょう。その後、施設側の指示に従い費用の清算や退去手続きを行います。

退去を終えたら、新たな引越し先の老人ホームへ移動します。退去日と入居日が同じならば、スムーズに引越しが進むはずです。

なお、退去日の数日後に入居する場合は、いったん自宅等へ戻って、入居日まで待つ必要があるでしょう。

老人ホームの引越しの際は、退去前よりも入居する高齢者が快適な生活を送れるよう、次のようなポイントを意識し、手続きを進めていきましょう。

• 転居の目的や求めるものを明確にする
• しっかり情報収集をする
• 施設への入所支援サービスを利用する

こちらでは、それぞれのポイントについて説明します。

引越しの目的や新たな老人ホームで求めるサービスや設備は、それぞれ異なるはずです。

希望するサービス・設備等をメモ書きする等して、老人ホーム選びを行ってきましょう。例えば次のような項目を書き出しておきます。

• 医師・看護師が24時間常駐する体制かどうか
• 認知症患者の受け入れが可能かどうか
• リハビリは無理なく行えるか
• 緊急事態への対応は万全か（ケガの処置、嘱託医や協力病院への連絡等）
• 部屋、食堂等の施設の清潔さ
• 食事のおいしさ
• 趣味、レクリエーションやイベントの種類
• プライバシーは尊重および利用者の尊厳に配慮した介護の有無
• 施設内の雰囲気は明るいか
• 施設の運営ルール・やり方に無理はないか
• 家族が訪問しやすい場所にあるのか　等

入居する本人の他に、家族とも話し合って求めるものを明確にしておきましょう。

新たな引越し先を探す場合は、候補となる施設を見学したり、体験入居をしたりして、理想的な老人ホームを選ぶ必要があります。

しかし、候補となる老人ホームを複数選ばなければ、比較検討はなかなか難しいはずです。

候補となる老人ホームを選定する際は、まず老人ホームの検索サイト等でチェックしていきましょう。

検索サイトで自分の望む設備、介護サービスの充実度、立地条件を入力していけば、効率的に理想の老人ホームを絞り込めるはずです。

もちろん、ケアマネージャーの紹介も参考にしながら、新たな老人ホーム選びを進めていきましょう。

理想的な施設が見つかっても、入居者本人に身寄りがなくて身元保証人等をたてられない、家族が忙しくて手続きを任せるのは困難、というケースが想定されます。

そんな時には、施設の入所を支援する事業者へ依頼してみましょう。主に次のようなサービスが受けられます。

• 身元保証・連帯保証：施設入居時には、緊急連絡先や身元保証人等の役割を担う
• 施設の入所支援：施設入所の契約等、入所に関わる様々な手続きをサポート
• 引っ越し支援：施設入所の準備のため荷造り～引っ越しまで一貫してサポート

契約のときの身元保証人等や手続きの代行、引越しの際の荷物の整理・管理まで、様々な作業を任せられるので便利です。

老人ホームの引越しは施設を利用する本人・家族にも大きな負担となります。引越し先の選定や事前の準備は余裕を持って、慎重に進めていきましょう。

本記事でご紹介した老人ホームの引越しの注意点、新たな老人ホーム選びのポイントをまとめると以下の通りです。

• 現在の施設から引越しを決めた場合は、返還金や原状回復費用等を施設側に確認する
• 老人ホームを選ぶ際は、希望する目的が実現できる設備・サービスを有しているか等についてチェックする
• 老人ホームの引越しの際、事業者のサポート・サービスを利用すればスムーズに引越し作業が進む

引越し手続きを円滑に進めたいものの、身寄りのない高齢者であったり、家族の手助けが難しかったりする場合はあります。

そんな時には、介護施設等への入所を支援する専門サービス会社に相談し、サポートを依頼するのも良い方法です。