賃貸借契約の連帯保証人とは？必要書類や頼れる人がいない場合の対応策まで1記事で解説

賃貸借契約を結ぶ際には連帯保証人が必要になります。連帯保証人とは、借主と同等に支払い義務を持つ人のことで、いかなる請求も拒否することができません。

「借主の家賃滞納」「原状回復費の不払い」などのリスクを回避するためにも、連帯保証人は貸主にとって非常に重要な存在と言えます。

この記事では、これから賃貸借契約を結ぶ人に向けて「賃貸借契約における連帯保証人とは何か」について詳しくお伝えします。

賃貸借契約の保証人について全く知識がない人でも、この1記事で、連帯保証人の役割・条件・必要書類・審査基準までまとめて理解できるはずです。

また、保証人なしで賃貸借契約をする方法についても解説しているので、様々な事情から「保証人を頼める人がいない」という人のお悩みにもお答えしています。

賃貸借契約を結ぶ際は、ほとんどの場合連帯保証人が必要になります。連帯保証人とは、賃貸借契約を結ぶ主債務者本人と同様の返済義務を負う人のことを指します。

賃貸借契約で連帯保証人が必要な理由は、契約者である借主の家賃滞納や不払いなどのリスクを貸主が回避するためです。

したがって、賃貸借契約における連帯保証人は、貸主にとって非常に重要な存在なのです。

何らかのトラブルが発生して、連帯保証人が責任を負うことになってしまった場合、以下のような流れで連帯保証人へ連絡が行きます。

1. 借主に連絡が入る

まず貸主は借主に連絡を入れます。この時点で問題を解決できれば、連帯保証人に連絡が行くことはありません。

2. 不払い内容の証明書が通知される

借主と連絡が取れない場合には請求の内容証明を借主に通知します。請求内容や支払期日、警告などが記載されている場合があります。

3. 連帯保証人に連絡が入る

内容証明にも応答しない場合に、貸主は連帯保証人へ連絡を入れます。連帯保証人は借主と同等の義務を負っているため、支払いを拒否することはできません。

貸主や状況によっても流れは変わりますが、何度か借主本人へ連絡があった上で、それでも応答が無い場合に連帯保証人へ連絡が入るのが一般的でしょう。

賃貸借契約において「保証人」「連帯保証人」はしばしば混同されますが、両者には明確な違いがあるので注意しましょう。

賃貸借契約における保証人と連帯保証人の違いは、その者が負う「責任の重さ」です。具体的には次のような違いがあります。

• 保証人

借主が金銭の支払いを行えなくなった際、代わりに支払いを約束した人。借主に支払い能力がある場合などに支払いを拒否できるケースがある。

• 連帯保証人

債務者とともに債務返済の責任を負う人。支払い請求を拒否することはできない。

つまり、保証人は場合によって支払い請求を拒否できるが、連帯保証人はいかなる場合でも請求を拒否できないということです。

よって、貸主は確実に家賃を回収できる「連帯保証人」を要求するケースが多いのです。

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賃貸借契約における借主が単身の高齢者である場合、「身元引受人」も併せて必要になるケースがあります。

身元引受人とは、法律で明確に定められているわけではありませんが、一般的には「責任をもって身柄を引き受ける」役割を持つ人のことを指します。

例えば、貸主の緊急連絡先となったり、借主に万が一のことがあった際に身柄を引き取るなどの役割があります。

貸主によっては、単身の高齢者との賃貸借契約はリスクになると考える場合があるため、身元引受人が必要になることがあるのです。

賃貸借契約における連帯保証人の役割は、主に借主の家賃やトラブル時の費用について保証することです。

具体的には、以下のような役割が発生する場合があります。

• 借主が家賃を滞納した場合の支払い
• 物件の原状回復費の支払い
• トラブル発生時の損害賠償費用の支払い

連帯保証人は借主が家賃を滞納した場合に、滞納した分の支払いを請求されることがあります。

2020年4月1日以前は、連帯保証人が負担する金額の限度額は設けられていなかったため、連帯保証人が負う責任が非常に重くなってしまうケースがありました。

民法改正により、賃貸借契約書には「保証する金額の限度額を設けること」と「限度額についての内容を契約書に示すこと」が必要になりました。

よって、現在では連帯保証人が不当に高額な金額を支払わされることは少なくなっています。

借主が、貸主から原状回復費を請求されたにも関わらず支払わない場合には、連帯保証人が支払い責任を負います。

原状回復費とは、経年劣化等の正当な理由を除き、借主の故意・過失などによって発生した傷や破損を修復するための費用です。

通常、退去後に請求が発生するため、借主が支払いを忘れたり無視したりしやすいです。こういった場合にも連帯保証人に請求がいくことになります。

家賃や原状回復費の他、借主がトラブルを起こした際に発生した損害賠償費用についても連帯保証人は支払い義務を負います。

例えば、隣人とのトラブルや器物損壊などによって金銭の支払いが必要になるケースなどが挙げられます。

賃貸借契約は、あくまでも貸主と借主との間で結ばれる契約のため、連帯保証人の意思では賃貸借契約を解約することはできません。

また、通常、連帯保証人が死亡した場合は、連帯保証人は相続人が引き継ぐことになるため、子どもや親族にも影響する可能性があることを覚えておきましょう。

※相続を放棄すれば連帯保証人からは外れることができますが、預貯金や不動産などの他の財産も放棄することになってしまいます。

一般的に、賃貸借契約で連帯保証人を立てる際は、以下の条件によって審査されます。

せっかく連帯保証人を立てても審査が通らなければ賃貸借契約はできないので、連帯保証人の条件はしっかり確認しておきましょう。

1. 原則的には親族が望ましい
2. 支払い能力があるか
3. 反社会的勢力と関係はないか
4. 居住地が遠方すぎないか
5. 高齢すぎないか

原則的には親族が望ましいとされていることが多いです。具体的には2親等あるいは3親等の親族であることを条件としていることがあります。

親族以外の知人や友人でも連帯保証人として認められるケースもありますが、金銭が絡むことから親族の方が適任であると判断されることが多いのです。

連帯保証人に支払い能力があるかどうかは、連帯保証人の審査時に特に重要視される条件の一つです。

なぜなら、連帯保証人は借主に代わって家賃やその他の金銭の支払いに責任を負っているからです。

明確な年収基準があるわけではありませんが、多くの場合、連帯保証人としての義務を果たす能力があるかどうかを証明する書類を求められます。

反社会的勢力と関係を持つ人物でないことも、連帯保証人としての条件の一つです。

貸主は思わぬトラブルに巻き込まれないように、借主の連帯保証人が反社会的勢力と繋がりを持っていないか審査します。

連帯保証人が借主の居住地から極端に離れた場所に住んでいる場合、賃貸借契約の審査に通らない可能性があります。

借主の家賃滞納やその他不払いが発生した際は、貸主は連帯保証人へ連絡を入れます。連帯保証人が海外などの遠方に住んでいると、連絡が取りづらくなり、対応に不便が生じるリスクがあるからです。

高齢すぎる場合、連帯保証人として認められない場合があります。なぜなら、将来的に連帯保証人の役割を担うことができなくなるリスクが高いからです。

貸主によっては、連帯保証人の年齢制限を設けている場合もあるので必ず確認しておきましょう。

賃貸借契約の連帯保証人審査で求められる可能性がある書類は次の5つです。

ただし、場合によっては不要なものがあったり、別途書類が必要になることがあるので、不動産オーナーや仲介業者にしっかり確認するようにしましょう。

それでは、以下で挙げた必要書類について、それぞれ詳しく解説していきます。

1. 印鑑証明書原本
2. 身分証明書のコピー
3. 収入証明書のコピー
4. 住民票原本
5. 年金振込通知書のコピー

印鑑証明書原本はどの物件でも必ず必要になる書類です。印鑑証明書が必要な理由は、不正に契約を結ばれることがないようにするためです。

本人しか持っていない実印と、本人しか発行できない印鑑証明書をセットで提出することで信用度を証明することができます。

なお、印鑑証明書は実印と同じものでないと認められないため、実印とセットで用意しておくことをおすすめします。

ほとんどの場合に身分証明書のコピーの提出が求められます。身分証明書は、免許証やパスポートなど顔写真付きの身分証である必要があります。

ただし、印鑑証明書と顔写真だけで良い場合もあります。印鑑証明書と身分証両方を提出することに抵抗がある場合には、不動産会社に一度相談してみましょう。

連帯保証人の審査に収入証明書のコピーを求められるケースもあります。申請書に記載した年収と、実際の収入に相違が無いかを確認するためです。

会社員であれば「源泉徴収票」、会社経営者や自営業の場合には「確定申告書」「課税証明書」などの公的な書類を準備する必要があります。

連帯保証人は、借主の家賃不払い時に代わりに支払う義務があるため、収入証明書を確認することで、連帯保証人の役割を果たす能力が本当にあるかを審査しているのです。

支払い能力の有無を判断する基準は不動産会社などによっても変わりますが、一般的には「家賃が月収の3分の1に収まっているか」が基準の目安になります。

ただし、これはあくまでも目安のため、不安がある場合には不動産会社やオーナーに相談してみましょう。

借主本人は必ずですが、まれに連帯保証人についても住民票を求められることがあります。

ただし、非常に稀なケースなので、もしも連帯保証人分の住民票を求められた際には、その理由を確認してから提出するようにしましょう。

なお、連帯保証人の住民票を発行する際には、防犯などの理由からマイナンバーは記載しないよう注意しましょう。

連帯保証人になる人が年金受給者の場合は、年金振込通知書のコピーを求められることがあります。年金を受け取っていることを証明するためです。

年金振込通知書は年金受給者であれば必ず受け取るハガキなので、早めに確認しておきましょう。

ここまででは「賃貸借契約には連帯保証人が必要である」という前提でお話をしてきましたが、連帯保証人なしでも賃貸借契約をする方法はあります。

「賃貸借契約を結びたいものの、身近に連帯保証人を頼める人がいない」という場合には、次の5つの対応策を検討してみましょう。

• 保証人が不要な賃貸を探す
• クレジットカード決済を利用する
• 家賃等立替払い制度を利用する
• 家賃保証会社を利用する
• 身元保証サービスを利用する

多くの場合、賃貸には保証人が必要になりますが、中には保証人が不要な賃貸もあります。例えば、UR賃貸住宅であれば保証人なしで契約することができます。

UR賃貸住宅とは？
独立行政法人都市再生機構（UR都市機構）が管理・運営している賃貸住宅のこと

一般的な賃貸と比べると、UR賃貸住宅には次のようなメリットがあります。

• 保証人不要
• 礼金・仲介手数料不要
• 更新料不要
• 収入証明不要（UR内転居で同程度の家賃の場合）
• お得な家賃プラン（子育て割や近居割など）

一方で、入居は先着順で、保証人が要らない代わりに本人の収入や貯蓄額などの条件をクリアする必要がある点には注意しましょう。

クレジットカードで家賃を支払うことで、保証人の代わりとなる場合があります。クレジットカードを持っているということは、発行時の審査に通ったという証明になり、それが信用につながるからです。

ただし、どのクレジットカードでも適用されるわけではありませんし「クレジットカード払いで保証人不要」という物件自体も非常に少ないので、適用できるケースは少ないかもしれません。

神奈川県にお住まいの方に限られますが『神奈川県住宅供給公社』による「家賃等立替払い制度」を利用することで、保証人なしで賃貸借契約を結ぶことができます。

家賃等立替払い制度では、信販会社が借主に代わって家賃を立替払いし、借主は信販会社に家賃を支払うことになるため、公社と信販会社の両方を立替払い契約を結ぶことになります。

なお、本制度の利用には以下の条件を満たしていることが必要です。

• 神奈川県住宅供給公社が定める一般賃貸住宅の入居資格を満たすこと。
• 公的書類により現住所の確認ができる方。
• 年齢が18歳以上かつ成年者であること。
• アプラス（信販会社）所定の審査基準を満たすこと。
• 連絡のとれる固定電話または携帯電話を持っていること。

一般賃貸住宅 連帯保証人に代わる制度｜公社の賃貸

神奈川にお住まいで、保証人なしでの賃貸借契約をお考えの場合には、家賃等立替払い制度の利用を一度検討してみても良いでしょう。

家賃保証会社を利用することで、保証人になってもらう人がいない場合でも賃貸借契約を結ぶことができます。

家賃保証会社とは？
連帯保証人としての役割を代行するサービスを運営する会社のこと
保証会社や賃貸保証会社などと呼ばれることもある

家賃保証会社は、入居者が何らかの事情により家賃が払えなくなった際、入居者に代わって家賃を立て替え払いしてくれます。

貸主にとってはメリットが大きいため、最近では、賃貸保証会社の利用を義務付けているケースが一般的になりつつあります。

家賃保証会社を利用して賃貸借契約をする場合、借主は「保証料」を支払う必要があります。

保証料は、家賃保証会社によって変わりますが、一般的に初年度は家賃の0.5〜1カ月分が目安、2年目以降は年間1〜2万円の保証料が発生します。

家賃保証会社を利用するメリットは以下の通りです。

• 連帯保証人を頼む人がいなくても部屋を借りることができる
• 収入が安定していなくても部屋を借りやすい
• 敷金が減る場合がある

一方で、家賃保証会社を利用するための保証料が発生するため、金銭的な負担がかかる点はデメリットと言えます。

• 金銭的な負担がかかる

おひとりさまの高齢者が部屋を借りたい場合には、身元保証サービスを利用する方法があります。

身元保証サービスとは、高齢者が賃貸住宅へ入居する際に求められる「連帯保証人」「身元引受人」を代行してくれるサービスです。

身元保証サービスを運営する団体は主に次の3種類です。

• 一般社団法人

一般社団法人は非営利団体ですが、ボランティアではありません。団体によってサービス内容・料金設定は様々です。

＼一般社団法人あんしんの輪では、身元保証サービスを行なっています！／

• NPO法人

社会貢献を目的とする法人です。サービス内容を限定的にするなどして他団体よりも低価格であることが多いため、費用を抑えやすいでしょう。

• 民間企業

サービス内容も多様である反面、営利目的であるため高額である場合も多くあります。信頼できる会社がどうかは慎重に見極めましょう。

最近では、シニア向けのプランが充実した身元保証サービスも多くなっています。

例えば、賃貸の保証人代行だけでなく、入院や通院、終活のサポートなど、高齢者のお悩みを総合的に支援してくれるサービスもあります。

高齢者で保証人に頼める人がいなくてお困りの場合は、身元保証サービスの利用を検討してみてもよいでしょう。

保証人なしでも賃貸借契約を結ぶ方法はありますが、以下の3点には注意しましょう。

1. 家賃保証会社を使う場合は保証料や更新料がかかる
2. 物件に問題がある可能性がある
3. 家賃保証会社は自分で選べないことが多い

家賃保証会社を利用して連帯保証人を代行してもらう場合には、その分の保証料が発生します。保証料は、敷金や礼金などの他の費用とともに支払うことになるため、初期費用がかさんでしまいます。

また、その後も毎年家賃保証会社の更新料が発生するため、金銭的な負担となります。

UR賃貸を除いて「保証人不要」となっている物件には、何らかの問題があるケースもあるので注意が必要です。

例えば、以下の理由からなかなか借り手が見つからず、借り手を見つけるために「保証人不要」としているケースがあります。

• 立地条件が極端に悪い
• 取り壊しが決まっていて居住期間が限られている
• 事故物件などの告知事項がある

ただし、家賃保証会社の利用を前提としている物件の場合にも「保証人不要」となっていることがあります。もしも気になる点がある場合には、不動産会社に確認してみることをおすすめします。

賃貸借契約には連帯保証人が必要です。

連帯保証人とは、借主と同等に支払い義務を持つ人のことで、いかなる請求も拒否することができません。貸主にとって連帯保証人は、借主の家賃滞納・原状回復費の不払いなどのリスクを回避するための非常に重要な存在です。

もしも、何らかの理由で賃貸借契約の保証人を頼むことができる人がいない場合には、以下の方法を検討してみましょう。

• UR賃貸などの保証人が不要な賃貸を探す
• 家賃保証会社を利用する
• 身元保証サービスを利用する

ただし、保証人なしで賃貸借契約を結ぶ際には、次のようなデメリットに注意しましょう。

• 「保証人不要」物件は悪徳物件である可能性がある（※UR賃貸は除く）
• 家賃保証会社を利用する場合は、金銭面の負担が増える

なお、おひとりさまの高齢者が賃貸を借りる際には、身元保証サービスの利用がおすすめです。

身元保証サービスでは、単身の高齢者の入居時に必要になる「連帯保証人」「身元引受人」を代行してくれます。